心地よさを追求したベーシックコンパクト「ホンダ・フィット」【最新コンパクトカー 車種別解説 HONDA FIT】

思わず頬が緩むような優しげな表情のフロントフェイスに、滑らかなフォルムの「ホンダ・フィット」。万人が好感を持つ、まさにベーシックコンパクトと言えるだろう。内装はシンプルで視認性や車両感覚が掴みやすい点も年長者にもビギナードライバーにも安心の使い勝手と言える。コンパクトなボディからは意外とも言える荷室は、車中泊も可能な余裕の広さだ。ボディカラーも13色用意され、誰が乗っても違和感のないセレクトと言えるだろう。
REPORT:安藤 眞(本文)/山本晋也(写真解説) PHOTO:中野孝次 MODEL:佐々木萌香

使い勝手や荷室積載性は特筆 2022年10月に「RS」追加

現行型フィットの開発キーワードは「心地よさ」。数値性能にこだわるのをやめ、人の感覚を重視するというコンセプトだ。外観デザインも「一緒にいて心地よい」をテーマにしており、柴犬の愛らしさをイメージしている。ライバル他車がキリッとしたシャープさを表現しているのに対し、フィットがどことなくユーモラスなのはそのせいだ。

エクステリア

「HOME」(撮影車)と「BASIC」は15インチスチールホイール+樹脂キャップを標準装備。他グレードはそれぞれ個性的な16インチアルミホイールと専用バンパーからなるエクステリアに仕上げられる。最小回転半径は4.9m。

内装デザインはスッキリとシンプル。インパネ上面のラインを水平に通し、サイドウインドウ下端のラインも直線化して、それらを定規に見立てて車両感覚をつかみやすくしている。メーターパネルはフル液晶。ソフトウェア次第で表示は自由自在のはずだが、フィットはあえてシンプル化している。初見では「クルマっぽくないなぁ」と感じるが、慣れるとこれが非常に見やすい。

乗降性

特にライバルより優れているのが、使い勝手の多彩さだ。ラゲッジスペースを拡大するとき、ライバルは後席背もたれが前に倒れるだけ。なので大きな段差ができたり、天地寸法がそれほど取れなかったりするが、フィットは背もたれに連動してクッションが沈み込むから、ラゲッジフロアとの間にできる段差が小さいし、天地寸法も他車より50〜100㎜大きく取れる。前後長もたっぷりあり、公式ウェブサイトで車中泊の仕方を案内しているほどだ。しかも自転車も積みやすい。先日、ウェブ記事の企画でロードバイクを積んでみたのだが、前輪を外してサドルを下げたら、後輪は付けたままで縦向きに積めてしまった。僕は身長が181㎝あるのでバイクは大きいし、サドルもあまり下げられないホリゾンタルフレームなので、SUVでも前後輪を外さないと積めないことが多い。フィットの積載性能は、下手なSUVを凌ぐのだ。

インストルメントパネル

フル液晶メーターはシンプルで見やすい表示が美点。コネクティッドタイプのナビがオプション設定される。「BASIC」以外はインパネにソフトパッドが使われ、コンパクトカーとは思えない上質なムードを演出する。

しかも後席は座面が後ろ側に跳ね上げられ、できたスペースに背の高い荷物が載せられる。最大室内高は1260㎜。箱物を積む際にはフロアトンネルが邪魔になるが、それでも1100㎜ぐらいの高さは使え、ひとりで運べるサイズの家具や家電製品なら積めそうだ。そんなマルチプレイヤーなフィットは、パワートレインもマルチな設定。1.5ℓ直列4気筒ガソリンエンジン+CVTの組み合わせと、1.5ℓガソリンエンジン+2モーターを組み合わせたハイブリッド仕様〝e:HEV〞を用意する。

居住性

グレード展開は5種類。価格重視の「ベーシック」と、コネクティッド機能やUSBチャージャーなど今時の装備を加えた「ホーム」、16インチタイヤと専用サスをもつ「RS」、大径タイヤでSUVテイストを与えた「クロスター」、本革シートをはじめ充実装備の「リュクス」という布陣だ。「クロスター」は全高が30㎜高い1570㎜となり、「RS」ともども全長が4mを超える。立体駐車場やフェリーの利用頻度が高い人は要注意。駆動方式は「RS」がFFのみとなる以外、4WDも選べる。

うれしい装備

ラゲッジのフロアボードを開けると、幅480㎜/奥行き220㎜/深さ215㎜ほどのアンダースペースが用意されている。隠しておきたい荷物を入れておくのにぴったりの空間だ。
月間販売台数    6573台(22年11月〜23年4月平均値)
現行型発表     20年2月(マインーチェンジ22年10月)
WLTCモード燃費   30.2km/l ※「e:HEV BASIC」のFF車

ラゲッジルーム

乗り心地はどのグレードもしなやか系。操舵応答はマイルドながら、ハンドルを切った分だけきっちり曲がる。〝ロードセーリング〞の頭文字を取った「RS」は、引き締まり感があるがレーシーではなく、ほどよいスポーティさが好印象だ。

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.150「2023-2024 コンパクトカーのすべて」の再構成です。

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