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世界的にも稀なRR駆動採用。荷室は少々狭いが前席は広々
ルノーの末っ子でもあるトゥインゴは、日欧コンパクトカーの中心であるBセグメントより、さらにひとまわり小さなスモールカーである。3.6m台半ばの全長は輸入車ではフィアット500に次いで小さい。そこに日本の5ナンバー枠よりナローな1650㎜という全幅と、対して日本の立駐フルサイズに近い1545㎜全高を合わせたスリーサイズは、500というより、同じフィアットのパンダに酷似する。
エクステリア
日本車でも、これに匹敵する小ささのクルマはトヨタ・パッソ/ダイハツ・ブーンしかなく、トゥインゴは存在自体が貴重でもある。同クラスの欧州車はほかにもあるのだが、もとの価格が安過ぎて現実的な価格で輸入販売するのは難しいらしい。この点だけでも、日本の好事家はルノー・ジャポンに感謝すべきだろう。現行トゥインゴはもともとスマートとの協業で生まれたこともあり、駆動レイアウトは世界的にも希少なRR(リヤエンジン・リヤドライブ)を採用する。エンジンが荷室床下に搭載されるため、荷室は正直狭い。また、設計時に電気自動車も想定した高床パッケージなので、見た目は背高のハイトワゴン的スタイルだが、室内は思ったほど広くない。
乗降性
しかし、フロント周辺のレイアウトに余裕があるRRのおかげもあって、少なくとも前席は広々としている。2ペダルであればドラポジも自然で、大柄な男性でもシートなどの調整幅に不足は感じない。室内もすべて光沢のある硬い樹脂で覆われるが、シートの剛性感がすこぶる高いこともあって、肌ざわりに安っぽさはほとんどない。ただし、先進運転支援システムが本格普及する直前(本国デビューは2014年)の設計なので、その種の機能が車線逸脱警告だけなのは、現代のクルマとして少しばかり心もとないのは事実だ。
インストルメントパネル
3気筒エンジンは変速機によって使い分けられる。売れ筋の6速DCTが0.9ℓターボ、5速MTが1.0ℓ自然吸気。最新のラインナップは充実装備の「INTENS」に統一されているが、ターボ+DCTにのみ、剛性感や実用性を大きく損ねることなく、格別の開放感が味わえるキャンバストップも用意されるのは注目すべき。考えてみれば、キャンバストップも今や貴重だからだ。走りは92㎰を発揮するターボなら掛け値なしに活発だが、65㎰の自然吸気で周囲の交通をリードしたいなら、MTを積極的に駆使する必要がある……が、好事家には、それこそがこのクルマの醍醐味でもある。
居住性
軽量で背高なRRという独特のレイアウトなので、乗り心地や操縦性もちょっとクセがある。フロントが軽くて上下しがちな味わいは好き嫌いが分かれるかもしれない。ただし、RRらしく驚くほどステアリングが切れる小回り性能だけは、一度味わうと病みつきになるだろう。4.3mという最小回転半径は、お世辞抜きに日本の軽自動車並み。高めの着座位置で見晴らしも良く、車両感覚もバツグンで「狭い路地に迷い込むほど運転が楽しくなる」という感覚はトゥインゴならではである。
うれしい装備
月間販売台数 NO DATA 現行型発表 16年7月「INTENS MT」追加 22年3月) WLTCモード燃費 20.7km/l ※「INTENS MT」
ラゲッジルーム
そんなトゥインゴは前記のとおり、すでに古参となりつつある。来年には生産終了との情報もあり、新車で欲しいなら急いだ方がいい。
※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.150「2023-2024 コンパクトカーのすべて」の再構成です。