ホンダの新安全運転支援システム『Honda SENSING 360』は2022年中国販売車から適用開始!!

ホンダの全方位安全運転支援システム『Honda SENSING 360(ホンダ センシング サンロクマル)』は、2022年中国発売から適用開始

ホンダは関係者向け『Honda 安全技術Online Workshop』において、従来のシステムよりさらに進化し、探知範囲を車両の前後のみならず、全方位に広げた全方位安全運転支援システム『Honda SENSING 360(ホンダ センシング サンロクマル)』を発表した。車両周辺の死角をカバーし、交通事故の回避やドライバーの運転負荷の軽減をサポートする新システムは、2022年に中国で発売する四輪車から適用を開始、2030年までに先進国で発売する全モデルへ展開することを目指す。

ホンダは関係者向け『Honda 安全技術Online Workshop』において、車両周辺の死角をカバーし、交通事故の回避やドライバーの運転負荷の軽減をサポートする全方位安全運転支援システム『Honda SENSING 360(ホンダ センシング サンロクマル)』を発表した。

「Safety for Everyone」をグローバルスローガンに、二輪車や四輪車だけでなく道を使うすべての人が安心して暮らせる「事故に遭わない社会」の実現を目指して生まれた安全運転支援システムがホンダの『Honda SENSING(ホンダ センシング)』だ。

フロントグリル内に設置したミリ波レーダーとフロントウインドウ内上部に設置した単眼カメラという特性の異なる2種類のセンサーによるシステムを基本構成とし、これまでの運転支援システムに歩行者への衝突回避を支援する世界初の歩行者事故低減ステアリングや車線維持支援システム、路外逸脱抑制機能などの新機能を加え、2015年発売(2014年11月発表)の5代目KC型『レジェンド』に搭載されてデビューし(実際の発売は5代目RC型『オデッセイ』が先行)、以後、都度に技術・機能向上を果たしつつ普及・拡大し、ホンダ車の安全を守る要石となっている。当初は8つの機能からスタートしたが、現在では12の機能へ拡大している。

ミリ波レーダーと単眼カメラという特性の異なる2種類のセンサーによるシステムが『Honda SENSING』の基本構成。
当初のシステムでは上記8種類の機能を実現した。
現在最新の『Honda SENSING』のシステムではワイドビューカメラとソナーを装備している。
現在は『Honda SENSING Elite』の「トラフィックジャムアシスト」も含めて13種類の機能を実現している。

他方、「心から安心して、あらゆる人がどこへも移動することができる社会を」という理想を叶えるため、運転の疲労やストレスを軽減し、事故につながるヒューマンエラーをなくしたいとの想いから、『Honda SENSING』を土台に生まれたさらなる先進安全技術が『Honda SENSING Elite(ホンダ センシング エリート)』だ。

その機能の中でも、特に「トラフィックジャムパイロット(渋滞運転機能)」は、国土交通省より自動運行装置として型式指定を取得した「自動運転レベル3:条件付自動運転車(限定領域)」に適合する先進技術であり、高速道路渋滞時など一定の条件下で、システムがドライバーに代わって運転操作を行なうことを可能にした。ともすれば「自動運転装置」としての側面が強調されがちだが、実際の設計・開発理念としては「安全運転支援装置」であり、「安全運転ありき」なのである。

システムは、クルマやバイクなどの金属物とそれ以外の非金属物の検知・測距に優れる、レーザー光を活用するライダー(レーザー・レーダー)を5台、金属物の検知と測距に優れるミリ波レーダーを5台、歩行者や車線・標識などの形状認識に優れるカメラを2台、近距離障害物の検知に優れる、超音波を活用するソナー12台を基本構成とする。

これらによって自車周辺の状況を高い精度で把握するが、さらに、近赤外線ライトを内蔵したドライバーモニタリングカメラでドライバーの状態を見守り、全球測位衛星システム「GNSS」を活用して自車の位置を高精度に測定し、3次元高精度地図上で位置を特定、詳細な進路情報を事前に把握することで、正確でなめらかなステアリング制御やカーブ前後の加・減速、勾配でのアクセル操作、分岐や出口の手前でのスムーズな車線変更などを可能としている。

つまり『Honda SENSING Elite』は、現状、技術的にはホンダ最高の安全運転支援装置である。しかし、これはいささか過剰装備のきらいがある。無論、「安全に対する技術的過剰はない」のだが、たとえば高速道路におけるレベル3の自動運転機能は、現状、町中での運転を主体とする中では、果たして必ずしも必要だろうか? 衛星システムと連動した運転制御システムは必要だろうか?

いかに優れた装置や装備でも、普及しなければ意味はない。高価で贅沢な一品物ではなく、アフォーダブルである必要がある。そのためにまず、現状の『Honda SENSING』の認識・検知機能の拡充をはかり、自車を中心とした360度全領域内での事故回避支援機能を充実させて量産普及をはかるべきではないか――

かくして今般、登場したのが車両周辺の死角をカバーし、交通事故の回避やドライバーの運転負荷の軽減をサポートする全方位安全運転支援システム『Honda SENSING 360』なのである。『Honda SENSING』の高機能版であり、『Honda SENSING Elite』の普及版とも言える立ち位置である。

*図版はMotorfan.jpにて再構成したものです。

その要諦は検知範囲を車両の前後のみならず、全方位に広げた点。現行『Honda SENSING』の単眼カメラに加え、フロントと4か所の各コーナーに計5台のミリ波レーダーを新たに装備することで、360度センシングを実現。これにより、従来の運転では目視での確認が難しかった車両周辺の死角をカバーし、他の車両や歩行者との衝突回避や運転に伴うドライバーの負荷の軽減をサポートする。この検知範囲の拡大と制御の更新は、従来機能の拡大とともに、4つの新機能の追加をもたらすことになった。

『Honda SENSING 360』のシステム構成。ステアリング把持センサーなどにより、ステアリング操作支援などが可能になっている。
各センサー類の担当エリアを見れば、「360」の意味がよくわかる。
従来の『Honda SENSING』で実現していた機能(左側の項目)に加えて、『Honda SENSING 360』では衝突軽減ブレーキ(CMBS)の機能拡充のほか4つの新機能が付加される。

1:衝突軽減ブレーキの進化

一般道の交差点などで右左折をする際に車両や歩行者を検知、接触の危険性がある場合は、衝突軽減ブレーキ(CMBS:Collision Mitigation Braking System)を作動させる。従来の機能をさらに進化させ、検知範囲を前方から全方位に広げたことで、交差点の出合い頭における衝突回避・被害軽減を支援する。

2:前方交差車両警報

一般道の交差点などでの低速走行時、または停車状態から発進する際、左右前方から接近する交差車両の情報をドライバーへ通知する。自車と交差車両が接触する危険性がある場合、システムがドライバーへ音とメーター表示で危険を警告、衝突回避の運転操作を促す。

3:車線変更時衝突抑制機能

車線変更をする際、後方から接近する隣車線の車両との衝突回避を支援。ミラーの死角から近づく後側方車両との接触の危険性がある場合、システムがドライバーへ音とメーター表示で危険を警告し、衝突回避のためのハンドル操作を支援する。現状ではそのような機能はないが、後方検知が可能となったことから、将来的には「あおり運転」の検知サービスへの展開も考えられるという。

4:車線変更支援機能

高速道路や自動車専用道において、渋滞追従機能付アダプティブクルーズコントロール(ACC:Adaptive Cruise Control)と車線維持支援システム(LKAS:Lane Keeping Assist System)が作動中に一定の条件を満たした状態でドライバーがウインカー操作をすると、システムが車線変更に伴うハンドル操作を支援。

5: カーブ車速調整機能

高速道路や自動車専用道でACCが作動中にカーブを走行する際、適切に車速調整する。コーナー進入時の速度の制御はバリアブル変化。フロントカメラによってカーブ手前で車線の曲率を前もって読み取り、ドライバーにとってスムーズでなめらかなカーブでの走行を支援する。『Honda SENSING Elite』のような衛星や地図と連動しているわけではなく、完全にカメラ検知のみで行なうという。

『Honda SENSING 360』は2022年に中国で発売する四輪車から適用を開始し、2030年までに先進国で発売する全モデルへ展開することを目指しているという。ホンダ車の安全装備の新たなる“標準”装備だ。

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