上質な足まわりが絶品「レクサス・IS500」【最新スポーツカー 車種別解説 LEXUS IS500】

8年ぶりの復活となる「レクサス IS500」。現在では貴重ともいえるV8/5.0ℓの大排気量自然吸気エンジンは進化を遂げ、新しい「IS 500 」は「IS 500 F SPORT Performance」としてサーキットより一般公道での快適性を重視。パワフルなパワーを得ながらも素直なドライブフィールはオールラウンダーならではの懐の深さがある。専用チューンや専用開発されたタイヤ、高い剛性感はステアリングや動作に無駄を作らず、乗り心地は高級感に溢れている。価格と性能と快適性のバランスは最適解と言えるだろう。
REPORT:佐野弘宗(本文)/小林秀雄(写真解説) PHOTO:宮門秀行

V8 5.0ℓを搭載する超弩級モデルがISに復活

コンパクトなISにV8を詰め込んだレクサスといえば、先々代(日本では初代)ISにあった「IS F」からニ世代、8年ぶりの復活となる。その心臓部となる5.0ℓエンジンもIS Fと基本的に変わらぬ2UR-GSE型。しかし、現在もLCやLS、RC Fにも搭載されている同ユニットは時代に合わせて進化しており、そのピーク性能はIS Fの最終モデルから51㎰/30Nmが上乗せされている。さらに「SPDS(スピードダイレクトシフト)」と称する8速ATもIS Fから受け継ぐ。

エクステリア

FRスポーツらしいプロポーションを実現。「IS500“F SPORT Performance”」はV8の存在感を想起させる専用デザインのボンネットを備えるほか、「IS350“F SPORT”」とは異なる意匠のフロントフェンダー、前後バンパーガーニッシュを採用している。
従来は3.5ℓV6、2.5ℓハイブリッド、2.0ℓ直4ターボのラインナップだったが、新たに5.0ℓV8を搭載する「IS500“F SPORT Performance”」を追加。最高出力481㎰、最大トルク535Nmを発揮し、AVSやEPSに独自のチューニングも施すことで高い操縦安定性も実現。
取材車は「IS500“F SPORT Performance”」の導入を記念した特別仕様車「First Edition」で、マットブラック塗装のBBS製19インチ鍛造アルミホイールを装備。タイヤはブリヂストンのポテンザS001Lが組み合わせられ、グリップと乗り心地の良さを両立。
広くて実用的なトランクルーム。フロアはホイールハウス間の幅が約850㎜、手前側が約1470㎜で、奥行きは約1070㎜。後席には6対4分割可倒式で、背もたれを倒すと奥行きは約1920㎜となる。

最近の感覚ではエンジン性能の進化が控えめ過ぎに見えるかもしれないが、この2UR-GSE型は今や貴重、かつ古典的な大排気量自然吸気ユニット。出力アップひとつも、最近のターボのように「過給圧を上げて一丁あがり?」とはいかない。

インテリア

本格的なFRスポーツでありながら、シックな内装がレクサスらしい。「IS500“F SPORT Performance FirstEdition”」は、ステアリングやドアオーナメントパネルにアッシュの木目加飾を採用。木目が開いたまま仕上げるオープンフィニッシュが味わいを表現。
「IS500“F SPORT Performance”」専用の8インチTFT液晶メーターを搭載。エンジン始動時にはオープニング画面も専用仕様だ。
シフトノブも、専用のウルトラスエード仕様。
F SPORTと共通のアルミ製スポーツペダルを採用。

本格的なサーキット通いを想定した前身モデルが純粋な「F」を名乗っていたのに対して、新しいIS500のグレード名は「Fスポーツ」。IS500もサーキットでもある程度は楽しめるだろうが、あくまで一般公道での快適性も重視したオールラウンドなスポーツセダンという性格づけである。素直に引き締まった固定減衰ダンパーを備えていたISFに対して、IS500は他のISの上級モデル同様に連続可変ダンパーの「AVS」を備える。もっとも、そのダンパー設定に加えて、コイルや減衰力、パワステ、タイヤもすべて専用チューンである。

スパルタンではない豪快・上質なハイチューン・ツアラーに

巨大なV8を収めるべく盛り上がったエンジンフードや縦4本出しのエキゾーストなど、いかにもFなディテールをたたえたIS500だが、走り出すと、純粋なFを名乗らない理由が即座に理解できる。歴代のFに共通するヒリヒリとした緊張感、街なかで転がすだけでも隠せない威圧感がIS500にはないのだ。優秀なAVSに加えて、ボディ後部に装着されたパフォーマンスダンパーや空力処理、専用開発のブリヂストン・ポテンザS1001Lタイヤの恩恵もあるのか、全身にみなぎる車体剛性感や、低速からいかにも滑らかで潤いあるストローク感は絶妙というほかない。ステアリングや身のこなしにはほとんど無駄がないが、同時に乗り心地はISとして最も高級感のある仕上がりといっていい。

うれしい装備

「IS500“F SPORT Performance”」は4連エキゾーストマフラーを標準装備。
専用ブラックキャリパーのブレーキは、フロントにφ356㎜の2ピースディスクを使用。リヤもφ323㎜と大径。
ドライブモードセレクトはSport S+、Sport 、Custom、Normal、ECOの5種。 
Customを選択するとパワートレイン、シャシー、エアコンの各モードを変更可。

IS500で最も感心するのはシャシーなのだが、7200rpmまで滑らかに回り切るV8もまた、今どきとしてはたまらない魅力をもつ。4000rpm以下ではどことなく線の細さを感じつつ、そこから回転上昇に比例してトルクを積み増して、右足に吸いつくレスポンスは、正しく自然吸気ハイチューンエンジンのそれというほかない。IS500の本体価格は850万円。絶対的には高いが、さらにサーキット連続走行まで想定したブレーキや冷却性能を与えたら、軽く1000万円を超えるだろう。価格と走りのバランスをとった感覚がIS500の真骨頂だ。

Country       Japan 
Debut        2022年7月
車両本体価格     850万円

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.151「2023-2024 スポーツカーのすべて」の再構成です。

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