「新車が買えない!」は落ち着いた?オフロード4WDは入手困難!納車まで2年待ちが当たり前?!

ようやく自動車用半導体の供給も落ち着き、クルマのデリバリーの遅れも徐々に回復してきたが、トヨタなどは人気車種は依然として長納期状態となっている。中でもオフロード4WDはまったくいつ買えるのか分からない状態が続いている。いったいこの状況はいつまで続くのだろうか?

TEXT:山崎友貴(YAMAZAKI Tomotaka) PHOTO:中野幸次(NAKANO Koji)/SUZUKI/編集部

納車2年待ちは長すぎる!衰える気配のないオフロード4WDの人気ぶり。

トヨタ・ランドクルーザー70

ようやく自動車用半導体の供給も落ち着き、クルマのデリバリーの遅れが多少回復してきた矢先に、ダイハツの不正問題による新車販売中止が決まり、相変わらず自動車市場はざわついている。

それでなくも、トヨタなどは人気車種がことごとく長納期状態となり、ユーザーは“一体、何を買ったらいいんだ?”という状態に陥っているのにだ。クルマ全体がそんな調子なのだが、中でもオフロード4WDはまったくいつ買えるのか分からない状態が続いている。

つい先頃、鳴り物入りで再販された「ランドクルーザー70」などは、発売数日前にトヨタ系販売店の多くが“契約できるのは各店1〜2台で、その後の契約の見通しはまったく経っていない”という旨の通知がユーザーに行われた。

全国のトヨタ系列販売店は約5000店あるので、月間400台程度生産しても各店への割当はごく少数だという。

トヨタのサブスク「KINTO」での契約も、発売日には“1年以上待ち”の文字がサイト上に表示される始末。現状ですでに2年待ちという事態になっている、という話も関係者から漏れ伝わってきた。ランドクルーザー70は月販400台となっているのだが、全国のトヨタ系列販売店の数を考えると、2年待ちという話はかなり真実味を帯びている。

さて長納期車の草分けと言えば、2018年に発売された現行型のスズキ「ジムニー」だ。発売直後は半年待ちほどだったが、あれよあれよという間にジムニー、ジムニーシエラとも1年待ちになってしまった。特に、先代よりもドライブフィールが大幅にアップしたシエラは、その月販台数が少なかったこともあって長納期に陥ってしまったのである。

「軽自動車では唯一無二の本格オフローダー」と言えるキャラクターのジムニーも大人気。

そこまで売れると思っていなかったスズキは、慌てて2019年に湖西工場の生産能力を1.5倍にしたものの、その成果はなかなか納期に反映されることはなく、コロナ禍や半導体不足、CAFÉ規制の影響もあってかえって納期が長くなっていく始末であった。

現在は人気のAT車がジムニー、シエラとも全グレードで2年待ちとなっており、MT車であれば半年で納車されることもあるという。

それにしても、ランドクルーザー70、ジムニーともなぜこのように長納期になってしまうのだろうか。その要因のひとつとして考えられるのが、その構造だ。両モデルはオーセンティックな構造のオフロード4WDであり、ラダーフレーム、リジッドアクスルサスペンションという伝統的なメカニズムを採用している。

ジムニーは安全性や快適性は着実に進化を遂げているが、基本構造は本格4WDの証とも言える伝統のラダーフレーム構造を採用する。

これはモノコックボディにエンジンやサスペンションを組み付けていく、昨今のSUVとは異なり、そもそも部品点数、工程が多いわけである。それだけでも、造るのが大変だということはユーザーにも容易に想像がつく。もちろん、生産ラインで“よーい、ドン”で造り出すわけではなく、ある程度組み立てられた部位を、ライン上で形にしていくので、生産時間の短縮という工夫は十分にしていることだろう。

とは言え、カローラクロスとランドクルーザー70の生産工程に違いがあることは自明の理だ。第2に、両モデルはワールドワイドモデルということ。世界中に輸出されている上に、海外市場で販売されている台数の方が圧倒的に多い。ランドクルーザー70で言えば、そのすべてをトヨタ車体吉原工場で生産しているし、輸出向けジムニーシエラ(海外名ジムニー)も2021年からインドでも生産を開始したが、それまではやはり湖西工場において輸出向けまで含めた全台数を造っていたのである。

つまり、トヨタもスズキも当初はそれで十分にまかなえるという算段があったわけで、それが狂った要因を探るのであれば、やはり国内市場での予想外のヒットということになろう。

売れすぎちゃって困っちゃう! その理由とは?

ジムニーシエラも「いかにも四駆!」という無骨なスタイリングが女性ユーザーの心を掴んでいる。

では、メーカーさえも予想できなかったヒットの要因は何なのだろうか。コロナ禍が後押ししたアウトドアブームなども、その要因に挙げられるだろうが、筆者が取材の過程で分かったのは、両車とも女性ユーザーの心をがっちりと掴んだということだ。

例えば、ジムニーはその長い歴史の中において、現行型で初めて女性ユーザーの比率が男性ユーザーを上回った。これはメーカーさえも予想できなかったことだという。ランドクルーザー70もまた、ジャパンモビリティショー2023に展示されたことで女性ユーザーからのディーラーへの問い合わせ、予約申し込みがどっと増えたという話を聞いた。

多くの市場において、女性ユーザーの存在はビジネス成功の可否につながっているのだが、まさかオフロード4WDの世界にここまで女性が進出してくるとは、筆者も含めて多くの男性諸氏が想像していなかったと思う。

頭上や後方が狭くても開けやすい横開き式テールゲート。背面タイヤ付きなので操作に少し力がいるが、小柄な人でも腕を伸ばさずに閉められる。

さて、こうなってくると心配なのが、来春に予定されている「ランドクルーザー250」だ。70系の購入に“失敗”した筆者だけでなく、多くのユーザーが250系の購入を考えていると思うが、またもやくじ引きの果てに買えないという事態に陥るのだろうか。

加えて、「ジムニー5ドア」の存在も気になる。インドに続いて、オーストラリアでも発表されたジムニー5ドアだが、日本での発売は「現状のジムニーシリーズの納期が解消されないかぎりあり得ない」そうである。おそらく世の男性諸氏の中には“5ドアなら買ってもいい”と奥方から言われている向きが少なくないと思う。

アルファード/ベルファイアもそうだが、一刻も早く2か月待ちほどで愛車が買えるように自動車メーカーには頑張っていただきたいと思う2024年の年始だ。

インドで発表されたジムニー5ドア、日本への導入に期待が高まる。

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著者プロフィール

山崎友貴 近影

山崎友貴

SUV生活研究家、フリーエディター。スキー専門誌、四輪駆動車誌編集部を経て独立し、多ジャンルの雑誌・書…