日産「ゼロ・エミッションフォーラム2024」を開催。小泉進次郎 EV普及の秘策は「まず配って使ってもらうこと」と大胆提案

日産自動車は2日、東京・竹芝で第3回となる「ゼロ・エミッションフォーラム2024」を開催した。会場には多くの業界・自治体の関係者が来場し、カーボンニュートラル社会についての関心の高さを物語っていた。

カーボンニュートラル社会の実現に向けた日産の新たな取り組み

日産自動車が推進する日本電動化アクション「ブルー・スイッチ」の今後の展望を紹介するとともに、カーボンニュートラル社会の実現を考える「ゼロ・エミッションフォーラム2024」が東京・竹芝で開催された。

冒頭の挨拶に立った日産自動車の星野朝子副社長は再生可能エネルギー普及の必要性を訴え、「これから社会では総電力量の増加は避けて通れない問題です。そして、家庭や企業の省エネだけでは需要の増加を抑え込むことは難しいと考えられます。火力や原子力だけではない、再生可能エネルギーの普及が必要です。

日産はEVの量産開始から10年を超える歴史と経験を活かし、サーキュラーエコノミー(経済、従来の3Rの取組に加え、資源投入量・消費量を抑えつつ、ストックを有効活用しながら、サービス化等を通じて付加価値を生み出す循環型の経済活動)の技術開発と普及を推進していきます」と日産が従来から続けている「ブルー・スイッチ活動」の継続を強調した。

「ブルー・スイッチ活動」についてプレゼンテーションを行った日産自動車の星野朝子副社長

企業向けのエネルギーマネジメントサービス「ニッサン エナジーシェア」を発表

EVの利用状況に応じた放充電マネジメントを行う法人向けサービス「ニッサン エナジーシェア」は環境負荷の低減だけでなく、電気料金の節約にも貢献する。

日産は今回の「ゼロ・エミッションフォーラム2024」のトピックとして、電気自動車を活用した法人向けエネルギーマネジメントサービス「ニッサンエナジーシェア」の提供を発表した。

新サービス「ニッサンエナジーシェア」の概要について日産自動車の専務執行役員 遠藤淳一氏は壇上で、「日産はこれまで、福島県浪江町などにおいて、EVの充放電を自律的に行う独自の制御技術を用い、エネルギーの効率的な利活用の検証を行ってきた。「ニッサンエナジーシェア」は、これらの検証を通して培った技術や知見をもとに、ユーザーのニーズや状況に応じた最適なエネルギーマネジメントサービスを、企画から構築、保守運用までワンストップで提供するもので、主に法人や事業者、自治体に向けたサービスです」プレゼンテーションを行い、下記の3つのポイントを説明した。

「ニッサンエナジーシェア」の仕組みについて説明を行った、日産自動車の専務執行役員 遠藤淳一氏

スマート充電によるピークシフト
建物の電力消費状況と、EVのバッテリー残量や使用状況を把握し、EVへの充電タイミングを賢く制御する。複数のEVを保有している場合でも、建物の電力使用に影響を与えることなく、安心してEVを使用することが可能。

車両の使用スケジュールをアプリで管理し、充電が必要な車両から優先して充電を行うことで、消費電力のピークを分散させる。

放電マネジメントによるピークカット
建物の電力需要が高まる時間帯に、EVから建物へ電気を戻すことで施設電力のピークをカットし、電力使用量を抑えるとともに、電気料金の削減にも貢献する。

オフィスの電力消費が増える日中はEVの充電を抑制して、夜間のオフピーク時に安い電気で充電を行うという制御も可能。

再生可能エネルギーの有効活用
建物などに太陽光パネルが設置されている場合、太陽光発電との連携が可能。太陽光での発電量が多い時には積極的にEVへ充電し、その電力を夜間に建物へ給電するなど、太陽光の発電状況に応じた受給電を効果的に行う。

太陽光発電など再生可能エネルギーによる充電が可能な時にEVの充電を行い、夜間など発電を行わないタイミングでオフィスに電気を送ることもできる。

導入の効果に関しては、太陽光の発電や設置型蓄電池の導入の有無によりケースバイケースとしているが、一例として、車両を5台ぐらい保有し、自社敷地に駐車場を構え、配送業務など定期的なクルマの使用をメインとしている企業などが導入メリットを感じやすいという。

美しい美瑛の未来と持続可能な地域共創に向けた100年のプロジェクト

北海道・美瑛の豊かな自然を守り、更なる美しい美瑛の未来に向けて電気自動車(EV)を活用していく、「電気自動車を活用した美しい美瑛の未来と持続可能な地域共創に向けた包括連携協定」を締結、“100年後の美しい美瑛の未来”を描きながら、様々なアクションを創出する「BIEI×NISSAN ブルー・プロジェクト」を実施する、美瑛町町長の角和浩幸氏がプレゼンテーションを行い、日産EVオーナーと共に森をつくる、森のオーナプロジェクト「豊かな森プロジェクト」や、道の駅びえい白金ビルケを入口とする白金エリア全域をEV推進エリアとする「美しい道プロジェクト」など実施予定の施策を説明した。

北海道・美瑛町の角和浩幸町長

広島大学の2030年カーボンニュートラル実現に向けた取り組み

日産とEVのバッテリーを蓄電池として充放電制御を行う「ニッサンエナジーシェア」を活用した大規模なエネルギーマネジメントを3月より実施予定の広島大学は「2030年カーボンニュートラル×スマートキャンパス5.0宣言」を掲げている。

広島大学の越智光夫学長

登壇した同学学長の越智光夫氏は、2030年までに、通勤・通学を含めたキャンパスで使うエネルギーのカーボンニュートラルの実現を目指しているとして、国内の他大学に先駆け、カーボンニュートラルの実現に向けEVを軸に日産と強力なタッグを組み、キャンパス車両の100%EV化、再生可能エネルギー100%のエネルギーマネジメントによる地産地消を視野に、モビリティ×エネルギーによるカーボンニュートラル実現、および広島大学モデルの確立を目指すという。

再生可能エネルギーを活用したEVカーシェアを導入。それをアプリを駆使して管理し、データを活用するという取り組みを行う。

これは再生可能エネルギー、エネルギーマネジメント、さらにモビリティ、学生、デジタル化によるデータ活用などを加えたユニークな取り組みだ。キャンパス内の約70棟のおよび7箇所の駐車場などに太陽光発電装置を設置し、合計で約6.5MWもの電力を発電する。これは東広島キャンパスの約20%の消費電力に相当する電力量だ。その他にも、EVカーシェア車両を導入し放充電ネットワークの検証などを進めていくという。

EVカーシェア車両が集めた走行データや放充電データは、同大学の環境経済学や交通工学の分野でも活用される。

小泉進次郎流の大胆なEV普及策を語る

元環境大臣の経験を活かし、日本のEV普及について語る小泉進次郎氏。

ステージに登壇した衆議院議員の小泉進次郎氏は、EVの普及に関して「ライドシェアを例とすると分かりやすいのですが、導入に前向きな人は、海外旅行なのでライドシェアを体験して、その良さに共感した人だと思います。EVの良さを理解するにはEVに乗って体験することが必要です。まずEVを普及させて触れることが大切です。

そして日本の自動車メーカーのEVが売れることが大切。個人の購入も大切ですが、車両の保有台数の多い企業が動けば何千台規模のEVシフトのドミノが起こり、大きな流れになる。それを後押しするために、EVのリースに対する補助金の仕組みも進めているところです。

長いトレンドでみたら、EVやFCVなどの電動車の流れは間違いないと思うので、国会でのEV普及も含め、日本のEV普及に協力していきたい」

国内企業のEV導入数が増加していることを取り上げ、今後も導入が加速するよう補助金の優遇など検討したいと語った。

「そして、日産さんにひとつ考えていただきたいことがあります。少々ハードルの高いボールを投げるかたちになりますが、誰も体験したことを売るにはどうしたらいいか? 

その答えは、その商品を配って使ってもらうことです。使ってもらって商品の良さを知ってもらう。全国の約1700ある自治体に軽EVのサクラを1台ずつ配るのはどうだろうか? 日本のEVの普及のカギは軽自動車にある。日本の道路や生活にフィットし便利な軽EVを普及させることが、EVの普及や充電インフラの充実にもつながると考えています」とEV普及の意気込みと小泉流の大胆な秘策を語った。

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