後席アレンジ多彩なSUVとミニバンのクロスオーバー「プジョー・リフター」【最新ミニバン 車種別解説 PEUGEOT RIFTER】

3列目のリアシートを取り外すなどアレンジ次第でマルチな使い方が広がる「プジョー・リフター」。23年には全長を延長し7人乗りのグレードも追加され、日本のミニバンにはない個性が発揮されている。SUVとミニバンのクロスオーバーという存在はアクティブなシーンにもマッチし、駆動はFFながら悪路走行モードが用意され、高速クルージングの安定性とともに大きなポイント。
REPORT:河村康彦(本文)/工藤貴宏(写真解説) PHOTO:平野 陽 MODEL:平岡明純

路面状況に応じモード選択可 加速性能や悪路走破性も秀逸

多人数乗車を得意とするミニバンというよりも、リヤシートのアレンジ次第で圧倒的な広さのラゲッジスペースを生み出すことができる真にマルチパーパスなモデルと紹介したくなるのがプジョー・リフター。

エクステリア

2列モデルから販売が始まったリフターだが、2023年1月に3列モデルを追加。シトロエン・ベルランゴやフィアット・ドブロとは骨格を共用する兄弟車だ。
2列シート車に対して355㎜も全長が伸ばされ、そのぶん室内スペースが拡大。・・・といえばかなり車体が大きいように思えるが、その全長はトヨタ・アルファードに対して200㎜以上短く、さらにホンダ・ステップワゴンよりも短いと聞けば許容範囲内と感じる。ただし、全幅は1850㎜とステップワゴンより100㎜ワイドでアルファードと同等だ。

インポーターが「SUVとミニバンのクロスオーバー」というフレーズで紹介するこのモデルが初公開されたのは、2018年春に開催されたジュネーブ・モーターショー。日本には19年になって2列シート仕様の5人乗りバージョンが上陸し、23年初頭にはホイールベースを190㎜、全長を355㎜延長して3列シートレイアウトを採用した7人乗りバージョンも追加で設定されている。そんな2タイプのボディに現在カタログモデルとして用意されるのは「GT」グレード。前述シートレイアウトの違いを除けば主な装備の違いは、ショートボディには電動シェード付きの〝マルチパノラミックルーフ〞が標準で装着されロングボディにはその設定がなされない程度となっている。

乗降性

ちなみに、「SUVとのクロスオーバー」を謳いながらも前二輪駆動仕様のみという設定に疑問の声も挙がりそうだが、それをカバーする存在が標準装備の〝アドバンスドグリップコントロール〞。ダイヤル式のATセレクターがレイアウトされたセンターパネル左上に同じくダイヤル式のスイッチが置かれたこのアイテムは、路面状況に応じて5つの走行モードを選択可能。さらに、低ミュー路の急坂を安全に下るのに貢献する〝ヒルディセントコントロール〞の機能も加えられ、最低地上高も180㎜となかなかの高さなので、FFモデルとしては実際の悪路踏破性もかなり高そうだ。

インストルメントパネル

メーターを高い位置に置き、小径のハンドルと組み合わせるプジョーのこだわりレイアウトを採用。狙いは、ハンドルに遮られることなくメーターを確認できる視認性の高さだ。

テストドライブを行なったのはロングボディ。ショートとの重量差は50㎏で、その分動力性能に影響が現れる理屈ではあるものの、その差を感じさせられることは実際には「皆無」と言える印象。それどころか決して小さくはない3列シートの持ち主に、まったく不足のない加速性能を与えているのが僅かに1.5ℓというエンジンとは信じられないほど。もちろんそこには、ターボ付きディーゼルユニットが発する底力とともにアイシン製8速ATの威力もその力強い走りに大いに貢献をしているに違いない。

居住性

ワインディングロードなどコーナリングが連続するシーンへと差し掛かった際のフットワークのテイストは、3m近いホイールベースや1.9mに迫る全高といったディメンションであることもあってか、特に機敏とは言えないのは他の多くのプジョー車とは明確に異なるキャラクター。一方、高速クルージング時にはしっかりとした接地感を演出し、前述の背の高さをまったく意識させない点には「さすが!」という賛辞を贈りたくなる。

うれしい装備

テールゲートはリヤウインドウ部分だけを開放可能。バッグなど小さな荷物の出し入れだけならこれで十分に事足りるし、車両後方に広いスペースがなくても開けられるのが便利だ。
月間販売台数     NO DATA
現行型発表      19年10月(「LONG GT」追加 23年1月)
WLTCモード燃費    18.1 ㎞/ℓ

ラゲッジルーム

今や軽自動車でも当たり前の装備となっている後席スライドドアのパワー機構をもたない一方で、テールゲートにはガラスハッチ構造を備えるなど、日本のミニバンを見慣れた多くの人からすれば〝規格外〞と言えそうな存在。けれども、「だからこそ選びたくなる」という数少ない人の意見にも、痛いほど納得がいく一台なのである。

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.155「2024 最新ミニバンのすべて」の再構成です。

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