スバル「NEWレオーネ」が国内初の53年規制適合。SEEC-TとEGRを組み合わせた独自の排ガスシステムを採用【今日は何の日?3月31日】

SUBARU レオーネ
SUBARU レオーネ
一年365日。毎日が何かの記念日である。本日3月31日は、当時世界で最も厳しかった国内排ガス規制の昭和53年排ガス規制に適合したNEWレオーネが、マイナーチェンジで追加された日だ。
TEXT:竹村 純(Jun TAKEMURA)

世界一厳しい排ガス53年規制に一番乗りしたNEWレオーネ

1977(昭和52)年3月31日、SUBARU(当時は富士重工)は「スバルレオーネ」のマイナーチェンジで、国内では初となる“昭和53年規制”適合モデル「NEWレオーネ」を追加設定した。53年排ガス規制は、米国のマスキー法をベースにした、当時世界で最も厳しい日本の排ガス規制だった。

レオーネ・ハードトップ
1977年の「NEWレオーネ・ハードトップ」53年排ガス規制に適合車

多彩なモデル展開を進めたレオーネ、世界初の4WDも搭載

スバルレオーネは、「スバル1000」の後継として1971年にデビューした。
スバル1000は、国産初の水平対向エンジンやデュアルラジエターなど最新の技術を盛り込んだ個性的なモデルだったが、当時デビューしたトヨタ「カローラ」と日産自動車「サニー」の人気の陰に埋もれてしまい、存在感をアピールすることはできなかった。

1971年にデビューした初代「レオーネ」
1971年にデビューした初代「レオーネ」

レオーネは、最初にクーペスタイルの1400、翌1972年にセダンがデビュー。流麗なロングノーズとサッシュレスのドア、カットインのリアコンビランプが特徴。パワートレインは、1.4L直4 水平対向エンジンと4速MTの組み合わせで、駆動方式はFF。
その後も積極的にモデル展開を進め、1972年に世界初のジープタイプでない量産4WDの商用車エステートバン、さらに1975年にマイナーチェンジでセダンに4WDモデルを設定し、世界初となる4WD乗用車が誕生した。

ここに、今もスバルブランドの象徴である“水平対向エンジン+4WD”のシンメトリカルAWDが完成したのだ。

自動車メーカーに重くのしかかった国内排ガス規制

1970年代、米国の排ガス規制(通称:マスキー法)の影響で、日本でも排ガス規制の動きが加速した。1973(昭和48)年から4段階で排ガス規制が強化され、1978年には当時世界で最も厳しい昭和53年規制が施行されることになった。具体的な規制値は、以下の通りである。

・昭和48(1973)年規制:2.94g/km(HC)、18.4g/km(CO)、2.18g/km(NOx)
・昭和50(1975)年規制:0.25g/km(HC)、2.10g/km(CO)、1.20g/km(NOx)
・昭和51(1976)年規制:0.25g/km(HC)、2.10g/km(CO)、0.60g/km(NOx)
・昭和53(1978)年規制:0.25g/km(HC)、2.10g/km(CO)、0.25g/km(NOx)

5年の間に、各規制値が約1/10まで低減、53年規制がいかに厳しい規制かどうかが分かる。

SEEC-Tのシステム構成
SEEC-Tのシステム構成

スバル独自のSEEC-Tシステムで53年規制をクリア

排ガス規制の強化に対して、スバルは1973年にスバル独自の排ガス低減技術SEEC(SUBARU Exhaust Control)を発表、1975年には51年規制に対応したSEEC-Tを開発。
SEET-Tは、排気管内の負圧によって作動するリードバルブで、排気マニホールドとシリンダーに新気(2次空気)を導入、希薄な燃焼を活性化し排ガスを低減するシステムである。

このSEEC-Tに改良を加え、EGR(排気ガスを吸気側に還流)を追加した排ガス低減システムを採用した1.4Lと1.6L水平対向エンジンを搭載したNEWレオーネをマイナーチェンジで市場に投入。これにより、レオーネは国内初の53年規制適合車という栄誉を得た。

その後、他メーカーも独自の排ガス低減システムを開発し、続々と53年規制に適合車が登場。排ガス規制に苦しんだ1970年代が終焉を迎え、1980年代の高機能・高性能時代が幕開けたのだ。

ラリーで活躍するレオーネ
レオーネはラリー界でも活躍した(ドライバー:清水和夫/PHOTO:オートスポーツ誌)

53年排ガス規制という高いハードルを乗り切るため、日本のメーカーは様々な排ガス低減技術やエンジン制御技術を開発した。その結果、日本の技術が世界に認められ、日本車が世界で大躍進する原動力となったのだ。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。

キーワードで検索する

著者プロフィール

竹村 純 近影

竹村 純

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までを…