ホットハッチのように俊敏なハンドリング「トヨタ・クラウン スポーツ」【最新国産新型車 車種別解説 TOYOTA CROWN SPORT】

車種ごとに違ったパワートレインをライナップする「トヨタ・クラウン」シリーズだか、23年10月に登場した「クラウン スポーツ」にはパラレルハイブリッドとプラグインハイブリッドが用意されている。ワイドなボディながら機敏でシャープなハンドリングは印象的で、迫力あるスタイリングとともにパワフルな操縦性はスポーティさとラグジュアリーさが両立している。
REPORT:佐野弘宗(本文)/山本晋也(写真解説) PHOTO:平野 陽 MODEL:平岡明純

四輪操舵DRSを標準装備 よりパワフルなRSも追加

2022年7月、異例の4車種ファミリーとして登場した新型クラウン。ただ、そのときに発売されたのはクロスオーバー(以下、CO)だけで、そこから1年以上が経過してから、第2波ともいうべきスポーツとセダンが発売となった。ちなみに、残るエステートは今春予定とか。

エクステリア

撮影車のHEVと追加設定されたPHEVとの外観上の違いはリヤのエンブレムとアルミホイールの塗装色くらいだが、最低地上高の数値がPHEVは165㎜と5 ㎜高くなっている。全高も1570㎜とハイブリッドとは異なる。最小回転半径は5.4m。

同じクラウンでも、COとその他3車種の発売時期が大きくズレたのは、当初はCOだけの計画で16代目クラウンの開発がスタートしたからだという。昨今の「セダン離れ」を受けてCOに生まれ変わることにしたクラウンだったが、それが形になりはじめると「やっぱりセダンもいけるのでは?」との意見が出て、さらには「どうせ複数車種をやるなら、スポーツもエステートも」と、最終的には4つのクラウンを同時開発することになったのだそうだ。その中でも、クラウンスポーツはファミリー随一のスポーティなデザインと走りがツボだ。土台はCOと共通のGA-Kプラットフォームだが、上屋は欧州スーパースポーツブランドのSUVを思わせる肉感的なハッチバックとなる。特に強烈な抑揚がつけられたドアからリヤフェンダーにかけた曲面のプレスには非常に苦労したという。インテリアデザインは基本的にCOと共通だが、「RS」専用に用意される黒と赤のコーディネートは鮮烈である。

乗降性

ホイールベースはCO比で80㎜短く、さらに前後オーバーハングも削られており、全長はCOより210㎜も短い。一方で全幅は40㎜幅広く、明らかに回頭性重視のショート&ワイドなディメンションとなっている。さらに、標準装備される四輪操舵「DRS」も、低速域の逆位相はより強く、高速域の同位相は弱く……と、俊敏性を強調する専用セッティングになっている。

インストルメントパネル

インパネ中央のディスプレイオーディオは12.3インチ画面で助手席からも見やすい。内装色は、写真のサンドブラウンのほか、HEVにブラックを設定。PHEVは情熱的なブラック&センシュアルレッドとなる。

パワートレインは車種ごとにラインナップを変えるのが新型クラウン流。スポーツの場合は、COと共通の2.5ℓシリーズパラレルハイブリッド(グレード名は「Z」)と、ハリアーなどに続く2.5ℓプラグインハイブリッド(同じく「RS」)という2種類を用意する。CO同様、どちらもリヤモーター式の4WDだ。

居住性

この原稿を書いている23年12月下旬時点で、筆者が試乗できているのは穏当な乗り味(のはず)のZのみだが、その巨体に似合わず、まるでホットハッチのように俊敏なハンドリングが印象的だ。ロールもほとんどしない。固定減衰ダンパーもあってか、全体に硬質な肌ざわりだが、路面からの衝撃はきれいに丸められている。これは高いボディ剛性のおかげだろう。見た目の割に車両感覚は良好で、さらにDRSのおかげで、市街地でも意外なほど小回りが利くのは素直にありがたい。

うれしい装備

メーカーオプシンのパノラマルーフは前後席とも開放感を味わえる。スイッチ操作によりスムースに開閉する電動シェードも上質なムードだ。
追加モデルデビュー     23年10月6日 
月間販売台数         1860台(23年11月)
WLTCモード燃費         21.3km/ℓ※SPORT Z(HEV)

ラゲッジルーム

RSの試乗経験をもつ同業者によれば、Zより明らかにパワフルで、乗り心地もより良好という。2t超の車重はお世辞にも軽いとはいえないが、標準装備される可変ダンパーのNAVI AI AVSやフロント6ポットという強力なブレーキが奢られていることもあり、その重さを感じさせることは少ない。そんな走りに加えて、日本車とは思えない迫力満点の後ろ姿は、ドイツ御三家などの輸入車乗りも、ちょっと心惹かれるのではないか。

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.156「2024 最新国産新型車のすべて」の再構成です。

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