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オブザーブ・シリーズの3代目、「グリップ・アイス・究極」に由来する
TOYO TIRESといえば、スポーツモデルからSUVまで幅広いファンを獲得しているタイヤブランドだが、そのスタッドレスタイヤに「オブザーブ」というサブブランドが使われるようになったのは、意外と最近で2014年からということはご存知だろうか。
それ以前、トーヨータイヤのスタッドレスタイヤは「ガリット」というサブブランドで展開していた。これはこれでクルミの殻をコンパウンドに混ぜることで雪面をひっかくようにグリップさせるという技術を直感的に伝える絶妙なネーミングだった。そのためか、初代オブザーブは「オブザーブ ガリット GIZ」という名前で登場した。
そして2020年には「オブザーブGIZ2」へと進化を遂げ、本年2024年にオブザーブ・シリーズの3代目として「オブザーブGIZ3」が登場する。このようにモデルサイクルが一定でないのは、トーヨータイヤが「市場ニーズを満たす技術が実現できたら少しでも早くローンチする」という姿勢で取り組んでいるからといえる。
ちなみに「GIZ(ギズ)」というアルファベットに込められた意味は「グリップ・アイス・究極(Z)」というもの。じつは最新のオブザーブGIZ3においてもクルミの殻をコンパウンドに混入するというトーヨータイヤ独自のテクノロジーはもちろん採用されている。
コンパウンド関連の新技術としては低温での密着性アップと効きの長持ちに貢献する「持続性高密度ゲル」や植物由来の素材を45%用いた「サステナグリップポリマー」などがトピックス。トレッドパターンの新デザインとしては氷上での縦性能に寄与する「ヘリボーンサイプ」やドライ&アイス路面でのトラクション性能につながるアッセンブルブロックなどがオブザーブGIZ3での注目テクノロジーとなっている。
新旧のオブザーブGIZを同サイズ・同じクルマで比較試乗
さて、新作スタッドレスタイヤ「オブザーブGIZ3」の試乗ステージとして用意されたのは東京某所にあるアイススケートリンク。通常の雪上に比べて圧倒的に滑りやすく、かなり過酷な路面といえる。なぜ、このようにツルツルの氷上を選んだのかといえば、オブザーブGIZ3の進化ポイントがアイス性能にあるからにほかならない。
トーヨータイヤがアナウンスするところによれば、従来のGIZ2に対して、オブザーブGIZ3は「アイス路面でのブレーキングにおける制動距離が22%短縮され、アイス路面でのラップタイムが4%短縮されている」という。アイス性能の持続性や燃費にかかわる転がり抵抗の低減、低車外音においても進化しているというが、今回はブレーキングやコーナリングといった性能に着目して、新旧オブザーブGIZシリーズを比較してみることにした。
まずは旧モデルとなるオブザーブGIZ2で走り出す。
スニーカーでは歩くことさえままならないほど滑りやすいスケートリンクだが、旧タイプのGIZ2であっても特別に注意することなく走行することができる。アクセル全開で20km/hまで加速してからのフルブレーキングでもABSを作動させながら余裕のある制動性能を有していることを示してくれた。これほど十分なアイス性能があれば、いくら進化しているといっても新作オブザーブGIZ3の性能を体感するのは難しいかもしれない…。
しかし、オブザーブGIZ3に乗り換えると発進から違いは明確だった。
最初にアクセルを入れたときにタイヤが路面を掴むグリップ感はレベルが上がっているし、スラローム的なコースでハンドルを右に左に切りながらアクセル操作をするだけの余裕が感じられる。定常円旋回ではGIZ2に比べて圧倒的に自由度が高い。旋回速度を上げることもできれば、ライン取りも自在といった具合だ。
圧倒的安心感。障害物を避ける操作に余裕がある
氷上走行では、アクセルを踏みすぎたときに介入するトラクションコントロールや強いブレーキング時にハンドル操作を可能にするABSといった電子制御は欠かせないが、オブザーブGIZ3ならば、そうした電子制御が介入するギリギリの領域をキープした走りが可能だったのもビックリしたポイントのひとつ。
グリップ限界がわかりやすいためヒヤヒヤとした気持ちになることが少なく、滑りやすいスケートリンクをいつまでも走っていたくなるほどの安心感、信頼性を実感することができた。
タイヤ1本ぶんだけクルマを内側に寄せるといった走りも思い通りにできる。こうしたアイス性能の高さは、公道においては、路上駐車しているクルマを避けるような、ちょっとしたレーンチェンジでも進化を感じることができるだろう。
スタッドレスタイヤに求められる安心感を、とくにアイスバーンのような滑りやすい路面で高めたオブザーブGIZ3。2024年のウィンターシーズンにおいて注目のニューモデルといえそうだ。