ティッシュ or 不織布1枚でワイパーブレードを長持ちさせる法”えっ3年でも4年でも?”【MF クルマなんでもラウンジ】 No.1

やさしく、やさしーくなぞる。
タイヤ、エンジンオイル、冷却液、バッテリー、バルブ・・・頻度が高い低いの差はあれど、自動車は消耗品の集合体でもある。いずれもいつしか値段が上がり、交換タイミングが訪れるたびに出費が頭痛の種になるものが多くなってきた。ワイパーのブレードゴムもその例に漏れない。
梅雨シーズン真っ只中、他の時季よりなおお世話になることが多く、かつこれまた値段が高くなったワイパーブレードを簡単に長持ちさせる手入れの方法をお伝えする。
TEXT/PHOTO:山口尚志(YAMAGUCHI Hisashi)

雨の日に不可欠なワイパーについて考える

梅雨シーズンを機に、平素気にも留めていない(?)ワイパーとその手入れについて考えてみる。

コントロールの方式は進化しているものの、その構造、姿・形はちっとも変わっていないのがクルマのワイパーだ。ガラスに付着した水を熱で蒸発させる、振動で吹き飛ばすなどの研究はされたことがあるようだがどれも実用性に欠け、直接何かで拭うのにはおよばない。おそらく今後もこの現状のやり方が続くのではないか。

クルマは晴れの日に走るだけでなく、雨や雪、強風、真夏の酷暑、寒冷地の零下何十度、ほこりの中といった、過酷な環境下ででも走る。クルマだってよくもまあ音を上げないわなと感心するが、どのような場を走るにしても、クリアな視界確保は必須だ。

梅雨に入って約3週間経過(関東甲信の場合)。じめじめ期はまだ続きそうな気配だ。

自動車に関することなら何でも話題にしちまおうという狙いで名づけた「MFクルマなんでもラウンジ」の第1回は、この時期だからこそなお目を配るべき「ワイパー」を長持ちさせる方法をテーマにする。

交換頻度の一般論

ワイパー・・・ここではガラスに常に接触している交換可能なゴム部分=ブレードを指すが、このブレードさんの生活環境もなかなか過酷だ。よく見てみよう。

使われていないときでもアームのばね力でガラスに押し付けられて変形させられた状態で風雨やほこりにさらされるわ、雨の日には押し付けられたままガラスの上を引きずりまわされ、反転時には押し付けられたままいきなり逆向きに変形させられるわ・・・生まれ変わってもワイパーゴムにはなりたくはない。

停止時のワイパー。動いていなくたってアームのばね力に押さえつけられ、ブレードは常に変形している(断面部輪郭に着色しています。)。
ワイパー作動時。運転席上方から撮影。正転時はこのように変形している。
反転位置に来たら速度はいったんゼロになり、反転と変形が同時に受けてこのようになる。考えてみればたまったもんじゃない。

ところでこのワイパーゴムを、みなさんはどれくらいの頻度で交換しているだろうか。

私が自前のクルマを持ち始めた頃は、誰に聞いたか何で読んだか、「半年に1回」という言葉を鵜呑みにしていた。ただ、半年くらいでは水切れに大した劣化が見られないことに気づき、そのうち交換頻度は1年目安に・・・その頃になると、カー用品店で手にする交換ゴムは、最安スタンダード品でも値が高くなっており、「手入れをしながら使えば長持ちするようになるのではないか。」と考えるようになった。

たったこれだけの作業で長寿命に!

ゴム部分には、走行中、ガラスとの間に入り込んだ空気中のほこりやごみが想像以上に溜まっているものだ。春の時期の桜の花びら、秋の紅葉時の色づいた枯れ葉なんか、ワイパーを持ち上げた覚えなんかないのに、どうしたらこうなるのか、ガラスとゴムの間にうまく挟まっていることがある。

ほこりがつきまくったワイパーと汚れたガラスの組み合わせは最高だ。汚れが払拭範囲に広がってガラスがきれいに汚れ、ワイパーを動かす前よりも見えなくなる。それほどでなくとも、雨の降り始めに動かして水切れが悪いと雨水が広がってにじむだけで、動かさないほうがましだったということをみなさんも経験したことがあると思う(この場合、ガラス面の油膜も影響しているのだが)。

ガラスのウロコや油膜を落とし、撥水コーティングをしないひとでも、せめてワイパーそのものの手入れだけは念入りにしておこう。
手入れといっても大したことではなく、ワイパーアームを起こし、ゴムのガラスと接触する部分・・・いわば刀でいう刃先を清掃するだけのことだ。

その方法は・・・ティッシュか不織布を1枚用意し、水でぬらす。固くでなくてよい。水が垂れなくなる程度まで水分を残した状態で刃先を拭う。それだけだ。

ティッシュなり不織布なりを水でぬらして・・・
軽くしぼる。適度に水分が残っているていどがちょうどよい。

武士が刀の手入れをするように、端から端までていねいに、ていねいになぞるのである。ゴム内部のカーボンなのか空気中のチリなのか、1回サッと走らせるだけでティッシュないし不織布は驚くほど黒くなる。

親指・人差し指・中指の指3本でブレード刃先をつまみ・・・
やさしく、やさしーく刃先を拭う。
数回往復させたら・・・ほれ!
もちろん助手席側も。ティッシュの向きを反対にして・・・
やさしく、やさしーくなぞる。
このときは助手席側のほうが汚れが多かった。

これを完全にでなくていいから汚れがつかなくなるまで往復させ、元に戻してワイパーを動かしてみよう。

払拭ぶりは新品同様までとはいわないが、しかしほぼ新品状態にまで復元し、「まだまだ使えるじゃないの。まだ買わなくていいヤ」くらいまでにはなる。

これを月1回の洗車、あるいは10日~2週間に一度思いついたとき、または線が出始めたなと気づいたときに行うようにすれば鮮明な視界を長期的に得ることができ、ゴムそのものも長持ちする。新しいうちから習慣づけておくといい。

私はいまのクルマ(旧ジムニー シエラ)も含めてこれまで5台、このようなワイパーの使い方をしてきた。前車のときなんぞ、「この手入れを続けてゴムはどれくらいまで持つか」と思いついて手入れだけで使い続けた結果、少なくとも4年は持たせることができた。「少なくとも」というのは、実験の途中でいまのクルマに入れ替えたため、交換タイミングを確認していないのだ。想像だが、クルマを入れ替えなければあと2年は使えたのではないかと思っている。

いまのクルマで使っているヤツも目下実験中で、私は何かを交換したり直すなどしたらその都度年月日を記録するようにしているのだが、調べたら2021年2月13日に交換したものだった。さすがにいつまでも新品同様とはいかないが、洗車のたびに拭い、「線が入ってきたな。」と思えばゴシゴシを続けてきたおかげで、まだまだ使える状態を維持している。

数えたら納車時についていたものも含めて3セット目。同じように手入れしているのに2018年納車時のやつは1年でちぎれ、2019年3月25日に交換。これも2年弱でちぎれ、いま使っているヤツに交換したわけだ。過去に使ってきたクルマで、たかだか1年や2年でちぎれた例はないので、もしかしたらフロントガラスがおっ立っていることが原因なのではないかと思ったが、現在使用中のものが交換から3年と5か月、距離にして3万1200kmちょい使っていても、手入れしていれば過去車同様長持ちしているので、たまたまハズレ玉が2回連続したのだと解釈している。ワイパーゴム、やはり「半年に1回」「1年に1回」で交換という必要はなさそうだ。いま使用中のものがいつまで持つか、まだまだ使い続けてやろうと思っている。

なお、さきに「ティッシュか不織布」と書いたが、最近は不織布で行なうようにしている。ブレードには刃先に沿ってメーカー名か何かの刻印がなされており、濡れてヤワになったティッシュが刻印で削れて消しゴムのカスのようなカス(ヘンないい方でゴメン)が出るのだ。これがはさまってまた拭い線が生じたら何のために掃除をしたのかわからなくなるので不織布の使用を推奨する。

それにしても、ワイパーゴムも値段が高くなったもので、私が自分で初めてクルマを買った頃はスタンダード品で1本400~500円だったと記憶するが、今回この記事を書くために近場のカー用品店で確認したら、980円で売っていた。以前だったら左右1000円かからなかったのがいまでは2000円弱。リヤワイパーつきのクルマならざっと3000円の出費となる。手入れしない手はない。消耗品はできるだけ長持ちさせ、維持費の低減に努めたいものだ。

ウォッシャー液残量の確認もお忘れなく。

最後に。
ガラスやワイパーの手入れをしたら、併せてフードも開き、ウォッシャー液の残量確認もしておきたい。

走行中、ガラス汚れに気づき、ウォッシャースイッチを入れたら液が切れていたというのは困る。いまのクルマは「ウォッシャー連動」といってスイッチを入れると同時にワイパーも動くようになっているが(余談だが、ワイパーが後追いで連動するのだから、ほんとうは「ワイパー連動ウォッシャー」が正しいような気がする)、このときはワイパーがガラスを乾拭きすることになり、ガラスを傷つける恐れがある。

いまのクルマはエンジンルームがぎっしりでウォッシャータンクはバンパーやフェンダーなどの裏に追いやられ、補給口だけが表に出るレイアウトになっている。タンクがまる見えだと外から目をやるだけで残量がわかるのだが、いまはわずかに顔を出す補給口のふた裏にあるレベルゲージを引き抜いて見なければならない。どうか面倒がらずに確認し、残りが少なかったらウォッシャー液を補給すべし。

いまのクルマのエンジンルーム内はギッシリだ。写真は現行エクストレイルの例。
ウォッシャー液タンクは補給口が頭を出すだけで、タンクそのものは見えない。
筆者の旧ジムニー シエラ。カメラアングルが異なるからこの写真ではわかりにくいが、エンジンルームはスカスカ。地面まで見える。
よってレイアウトに余裕があるのでウォッシャータンクがまる見えだ。
外から見て、「おっ、空っぽだ」とわかったら・・・
すぐさまウォッシャー液を補充しよう。
原液を必要なだけ入れたら・・・
容器にある指定のとおりの濃度に水で薄める。表面張力スレスレまで入れてしまってかまわない。
満タン! 完了!

青い水なんて、あんなもんカー用品店に行けば2L 200円弱で買える。安いもんだ。

ほんとうは高いクルマだけにではなく、燃料残量警告同様、すべてのクルマにウォッシャー液残量警告灯をつけてくれるといいのだが。

ウォッシャー液量不足を教えてくれるクルマもあるのだが、値段の高いクルマに限られるのが残念だ。写真は現行CX-60。
CX-60は同時に文字ででも警告してくれる。

梅雨シーズンはまだ少し続きそうな気配。この記事を読んだ方、平素お世話になっているワイパーに、感謝の意味も込めていまいちどあらためてワイパーメンテナンスをしてみてほしい(ウォッシャータンクも。)。

ではまた次回。

キーワードで検索する

著者プロフィール

山口 尚志 近影

山口 尚志