キャンピングカーだけじゃない!?フィアット・デュカトのスゴいカスタム!『CSPI-EXPO』でコマツが提案した移動オフィス車とは?

建設土木業界で必要な機械や技術の展示会『CSPI-EXPO2024(第6回建設・測量生産性向上展)』が、2024年5月22日~24日の期間、千葉県千葉市にある幕張メッセで開催された。普段は目にすることが無い専用機器や建機が溢れる会場の中で、特に興味を持ったユニークなメカについて紹介していこう。
REPORT&PHOTO:大音安弘(OHTO Yasuhiro)

建機の雄・コマツが提案する「モビリティオフィス」

日本が世界に誇る建機メーカー「コマツ」の展示の中で、シルバーのボディにブルーのラッピングが施されたフィアット・デュカトを発見した。メンテナンス等を行うサービスカーかと思いきや、なんとオフィス機能を備えた車両である「モビリティオフィス」だという。

『CSPI-EXPO2024』のコマツブースに展示されたフィアット・デュカト。一見、ただのラッピングカーに見えるのが、その中身が凄かった!

参考出品された「スマートコンストラクション モビリティオフィス」は、通常はオフィスに備えてある建設現場向けのシステムを車載したもの。その機動性を活かし、建設現場に持ち込めば、その瞬間からオフィスを立ち上げることが出来るというわけだ。

この移動可能な「モビリティオフィス」を製作したのは、コマツの子会社であるEARTHBRAIN社からの依頼を受けたフィアットプロフェッショナル正規ディーラーかつキャンピングカーメーカーのトイファクトリーで、同社が得意とするキャンピングカー製造のノウハウが活かされている。

フィアット・デュカトはすでにキャンピングカーのベースとして注目されている。

フィアット・デュカトはどんなクルマ?オフィス仕様の車内は……

ベースとなったフィアット・デュカト。正規輸入車となったことで、バンとして、プロの現場での活躍が期待されている。

ベースとなったデュカトは、日本に正規輸入される「L2H2」仕様のもので、荷室が全長2960mm×全幅2000mm×全高1970mmのサイズとなっている。室内高が約2mあるので、大柄な人でも車内を立ったまま移動や作業ができる大型バンのデュカトの強みも活かされている。足元には、機動性を高めるべく、オールテレインタイヤを装着されていた。

フィアット・デュカト「スマートコンストラクション モビリティオフィス」。サイドウィンドウや断熱素材の追加など、車内の快適性も向上されている。

その車内を覗いてみると、後部のラゲッジスペースにオフィス環境を構築。ドイツのアルミ製の車載用キャビネットシステム「bott」をベースに木材を組み合わせることで、2名分の作業デスクや収納スペース、ベンチシートを確保している。そのデスクの前には備え付けの2基の大型モニターがある。その光景は子供の頃に映画や特撮作品で活躍する特殊車両を彷彿させ、ワクワクさせてくれる。

大型のモニターを設置した2名分のワークスペース。まるでスパイ映画や刑事ドラマに登場する移動基地のようだ。
bott製車載キャビネットシステムに、ウッドを組み合わせる。
ウッドを組み合わせたことでキャンピングカーのような雰囲気に。
シンクにベンチも備え、便利で快適なワーキングスペースを構築。

搭載されるシステムは、コマツの子会社である「EARTHBRAIN社」の様々なデジタル技術を提供する「Smart Construction」を中心に構築されており、ドローンによる建設現場の撮影したデータの分析やリモートコントロールを行う建設機械向け遠隔操作システムなどの機能が備わる。また通信機能として、衛星通信(スターリンク)やモバイル通信機器(4G/5G)。長距離Wi-Fiネットワーク通信機器を備えることで、何処にいても建設会社のオフィスにいるように、様々な情報のやり取りや作業ができるようになっている。さらに快適な作業空間とするべく、家庭用ルームエアコンや冷蔵庫、シンクがあり、ボディ内部は断熱施工も施されている。

デスクにはリモートコントロール用のコントローラーが設置されていた。
ドローン撮影による地図データ作成や危険なエリアの確認なども可能。

建設現場のオフィスとしてだけでなく災害復興の拠点としても活用できる

仕事道具の収納もしっかり確保された車内。長椅子もあるので、緊急対応時の休息にも活用できる。

モビリティオフィスの強みは施工現場にオフィス機能を簡単に持ち込めることだが、同時に災害対策車両でもある。災害時に迅速に現地入りすることが可能であり、復旧作業に必要な情報収集を行うだけでなく、建機のリモートコントロールシステムを使うことで、危険な初動復旧作業を自動・遠隔施工することを可能としている。

ボディの左サイドにはラダーを設置。ルーフ前方には、周囲を照らすライトも設置されている。

コマツによれば、今後、モビリティオフィスを販売する予定で、車両についても、その用途に合わせて、ハイエースや軽バンなど様々サイズのもの展開する予定だという。

ルーフサイドにはタープも設置されており、ラゲッジルームの外にもワークスペースなどを拡大することもできる。

日本ではキャンピングカーでの活躍を中心に正規導入が開始されたデュカトだが、日本製バンにはない大きなボディを活かすことで、移動可能な高機能作業空間となる「モビリティオフィス」は、その可能性のひとつを教えてくれた。今後は、このような活用例も増えていくかもしれない。

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著者プロフィール

大音安弘 近影

大音安弘

1980年生まれ、埼玉県出身。幼き頃からのクルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者へ。その後…