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脳を活性化させることで老若男女関係なく安全運転向上に効果
普段の生活を便利にするクルマの運転。でも、気を付けなくてはいけないのが交通事故だ。安全運転をしていたのに、うっかり事故を起こしてしまった。そんなニュースが後を絶たない。そして、多く報道されるのが高齢者によるアクセルとブレーキペダルの踏み間違いによる交通事故だ。まるで、高齢者になると運転ミスを起こしやすくなるので、危険だから高齢者になったら運転免許を早めに返納しろ、と言わんばかりだ。
確かに運転時の操作ミスによる交通事故はある。統計的にみると75歳未満では約16%なのに対し、75歳以上で操作ミスによる事故の比率は約30%と高い。しかし、そのうちアクセルとブレーキペダルの踏み間違いによる事故の比率は7%でしかない。データによれば、事故要因のほとんどは、前方不注意と判断の誤りだ。
東北大学の川島隆太教授は言う。
「これって脳科学者が見るとピンとくるんです。ブレーキの踏み間違い以外のミスというのは、ほぼほぼ全てが脳の問題です。脳の、とくに前頭の機能の問題であるということに、我々はすぐに気がつきます」
交通安全の三要素と呼ばれているものには「認知」「判断」「操作」があるが、これらは全て脳の前頭前野が司っていることが『脳トレ』開発の中でわかった。この場所は記憶や学習理解整理推測抑制など大切な機能が宿っているが、その働きは20歳をピークにして直線的に衰えていく。つまり「認知」「判断」「操作」の能力は毎年低下する運命にあるわけだ。
しかし、脳はトレーニングによって機能をある程度活性化させることが可能であることもわかってきた。そこで、脳をトレーニングすることによって、結果的に安全運転につなげようというのが、川島教授と仙台放送が現在展開しているプロジェクトだ。
川島教授と仙台放送が開発したアプリを使って脳をトレーニングすることで、頭の回転速度や情報処理速度が活性化する。すると、行動や思考の速度が速くなる。さらに、注意力や記憶力も上がる。川島教授は「交通事故の防止の7割から8割というのは脳の機能の問題です。その脳の機能とは何歳からでも向上させることができる。そして、その脳が支えている安全運転という行動改善まで起こすことができます」と言う。
法人向け脳トレサービス『BTOC』を導入した企業の交通事故が減っている
安全運転のための『脳トレ』プログラムは、現在、東北大学と仙台放送が共同開発した『BTOC(Brain Trainer On Cloud/ビートック)』というアプリが『運転技能向上トレーニング』(特許取得済)として法人向けに展開されている。そして、このプログラムを多くの流通系や交通系大手企業が導入し、確実に成果を上げつつある。ある企業では、導入する2年前と比べると前年・今年ともに事故・違反ともに件数が減っているという。また、つい最近も日本生保やあいおいニッセイ同和損保も注目して『BTOC』の共同展開を始めたというのは見逃せない。
脳を活性化させることで、老若男女問わずに安全運転技能が高まるというのは嬉しいこと。安全運転のための『脳トレ』プログラムを多くの人が気軽に利用できるようになり、悲惨な交通事故が減少することにつながれば、こんなにすごいことはないだろう。