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■欧州専用に開発されたスポーツワゴン
2013年(平成25)年8月11日、ホンダの英国現地法人“ホンダモーター・ヨーロッパ”が、フランクフルトモーターショーに先駆け、「シビックツアラー」を公開。欧州専売車として英国“ホンダ・UK・マニュファクチャリング(HUM)”で生産されたスポーティなワゴンで、翌2014年欧州でデビューし好評を得た。
ホンダの欧米進出の歴史
ホンダは、米国については1978年オハイオ州に“ホンダ・オブ・アメリカ・マニュファクチュアリング(HAM)”を設立し、1979年に2輪、1982年には「アコード」の現地生産を開始。日本の自動車メーカーとして初めて、米国での乗用車生産という歴史の1ページを開いた。
一方欧州の4輪については、1979年に英国のブリティッシュ・レイランド社(現、ローバー社)との技術提携を行うことで、欧州での4輪生産の第一歩を踏み出した。1985年に、英国スウィンドンで英国工場“ホンダ・マニュファクチャリングUK(HUM)”を設立し、1992年に「アコード(~2002年)」の生産によって欧州での本格的な現地生産を始めた。
1994年には、7代目「シビック(欧州仕様)」の生産が始まり、日本仕様と同様に3ドア&5ドアハッチバックが設定され、1.4L/1.6L/2.0L直4ガソリンエンジンと、いすゞ製1.7Lディーゼルエンジンが搭載された。
さらに、2000年には「CR-V(~2018年)」、2001年に「シビックTYPE R(~2021年)」、2009年に「ジャズ(~2014年)」の生産も行なったが、ホンダの社内諸事情により、HUMは2021年に生産を終了し工場は閉鎖された。
シビックツアラーのベースは9代目シビック(欧州仕様)
9代目シビック(欧州仕様)は、2012年1月にデビューした。コンセプトは“クリーン・ダイナミック”で、近未来的な流麗なワイド&ローのスタイリングが特徴で、5ドアハッチバックのみが設定された。
エンジンは、1.4L&1.8L直4 SOHC i-VTECガソリンと、2.2L直4 i-DTECディーゼル(2012年末には1.6Lに換装)の3機種を搭載。当時欧州では、NOxとPM(粒子性物質)の規制値を大幅に下げたEURO6が施行されており、i-DTECディーゼルエンジンでは、噴射圧180MPaのソレノイド式噴射弁を使ったコモンレール噴射システムや大量クールドEGR、可変ターボ、DPF(ディーゼルパテキュレートフィルター)、リーンNOx低減触媒の採用でEURO6をクリアした。
当時の欧州では、乗用車のディーゼル車シェアは約50%(ちなみに2024年現在は、20%弱に低下)あり、欧州で競争力を強めるには欧州の厳しい排ガス規制EURO6(日本のポスト新長期規制相当)をクリアする必要があったのだ。
スポーツワゴンのシビックツアラーがデビュー(欧州仕様)
発表されたシビックツアラーは、翌2014年から欧州で販売が始まった。9代目シビックハッチバックをベースに、Bピラーから後ろのオーバーハングを235mm延長して、広い荷室を確保したツーリングワゴンである。
シビック譲りのワイド&ローのロングなフォルムで、ボンネットからAピラー、ルーフにかけて流れるようなラインをもったスポーティなスタイリングが特徴。エンジンは、1.8L直4 i-VTECガソリンと1.6L直4 i-DTECディーゼルの2機種が用意された。
足回りについては、国内とは異なる欧州車専用のサスペンションを搭載し、上級グレードのリアには量産車としては世界初の“アダプティブ・ダンパーシステム”を採用し、ダイナミック/ノーマル/コンフォートの3段階の調整ができる優れモノだった。
シビックツアラーの最上級グレードは、£26,140(2014年レート:180円/£、日本円で約470万円)で、人気を獲得した。
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欧州車然としたスタイリングと軽快な走りは魅力的で、日本にも投入しては?という話もあったようだが、2014年当時の日本ではステーションワゴンブームは沈静しており、たとえ日本に輸入しても人気が得られたかどうかは確かでない。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。