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■初代テラノの走りと乗り心地を向上させた2代目
1995(平成7)年9月28日、日産自動車の本格オフローダー「テラノ」がモデルチェンジを行い、2代目に移行した。“走りが楽しいスポーツ・ユーティリティ”をコンセプトに、新たにモノフレームボディやフルタイム4WD(オールモード4×4)を採用し、初代の走りに磨きをかけた。
RVブームに対応するために日産が放った初代テラノ
1980年代半ば、米国で流行したアウトドアブームが日本にも押し寄せ、走破性の高い4WDを装備した本格オフローダーブームに火が付いた。
いち早く人気を獲得したのは、1982年に登場した三菱自動車の「パジェロ」、トヨタの「ハイラックスサーフ」で、それらに対抗する形で1986年に日産自動車からデビューしたのが、米国で基本デザインを描いたテラノだった。
小型ピックアップのシャシーを使い、2ドアの流れるようなラインのハードトップのボディを被せた都会的なスタイリングで、乗用車のように座席位置は低めに設定していたのが特徴。エンジンは、2.7L直4ディーゼルで、駆動方式はFRと4WDの切り替えが可能なパートタイム4WDが採用された。
その後も、V6ガソリンエンジンやディーゼルターボ、4ドアモデルなどを追加して商品強化を図ったが、勢いのあるパジェロとハラックスサーフの対抗馬にはならなかった。
オールモード4×4で本格SUVとして進化した2代目テラノ
1995年にモデルチェンジでデビューした2代目テラノは、先代のコンセプトを継承しながら、フレームをモノコック構造のボディ内に組み込んだモノフレーム構造を採用し、強度を高めながらも軽量化を実現。2列5名乗車のワゴンスタイルで、3列シートを持つパジェロやハイラックスサーフよりコンパクトに仕上げられた。
エンジンは、最高出力130psのインタークーラー付2.7L直4 OHVターボディーゼルと170psの3.3L V6 SOHCガソリンエンジンの2種、駆動方式はフルタイム4WD(オールモード4×4)および先代と同じパートタイム4WDが用意された。
車両価格は、オールモード4×4の標準仕様で287.8万円、ハイグレードが323.9万円とガソリン、ディーゼルとも同額。当時の大卒の初任給は、19.4万円(現在は約23万円)程度なので、単純計算では現在の価値でそれぞれ341万円および384万円に相当する。
2代目テラノは、悪路走破性や乗り心地など本格オフローダーとして優れた性能を発揮したが、初代同様パジェロとハイラックスサーフの後塵を拝し、2002年に国内の販売を終了した。ただし、海外では「パスファインダー(テラノの輸出名)」としてモデルチェンジしながら、2024年現在も高い人気を獲得している。
トルクを自在に電子制御するオールモード4×4
2代目テラノが採用した電子制御4WDの“オールモード4×4”は、「スカイラインGT-R」の電子制御トルクスプリット4WD(ATTESA E-TS)をベースにしている。
FRをベースに、電子制御の油圧多版クラッチを組み合わせ、車速やアクセル開度、車輪速センサーによって走行状態を検知し、リアルタイムで最適な駆動力を算出して、瞬時に前輪へも適切な駆動力を分配する。いわゆるスタンバイ方式の4WDだ。
通常走行のFRから、50:50の4輪駆動までの駆動力配分を無段階で制御できるので、悪路で優れた走破性を発揮できる。さらに、2WD・LOCKの固定モードと4L(低速4WD)・LOCKも備えており、ドライバーの意志で選択できることも大きな魅力である。
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優れたオフローダーのテラノだったが、RVブームには上手く乗れなかった。しかし、RVブームが去ってライト感覚のSUVブームに流れが変わったことで、2000年にデビューしたテラノの後継にあたる「エクストレイル」は、デビューから10年間、SUVのトップとなる大ヒットを飾った。テラノがあってのエクストレイルの成功と言えるのかもしれない。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。