アメリカン・ニューシネマなどのハリウッド映画でも活躍!『スーパーアメリカンフェスティバル』のマッスルカーを一気に見せます!!

今回で31回目を数えるアメリカ車の祭典『Super American Festival at お台場』がダイバーシティ前にあるお台場ウルトラパークで開催された。アメフェスでエントリー台数が多く、会場での人気を誇るのがパワフルな大排気量V8の心臓を持つマッスルカーだ。今回はエントリーのあったマッスルカーを写真を交えて紹介して行くことにしよう。
REPORT&PHOTO:山崎 龍(YAMAZAKI Ryu)

250台以上!? お台場で開催されたアメ車の祭典『スーパーアメリカンフェスティバル』の参加車両をチェック!今年はどんなレア車が?

今回で31回目を数えるアメリカ車の祭典『Super American Festival at お台場』がダイバーシティ前にあるお台場ウルトラパークで開催された。このイベントにはアメリカ車を中心に、さまざまな年代・車種・仕様のアメリカ車が集まった。カーショーだけでなく、ライブステージ、スワップミートと楽しみ方はさまざま。今回はイベントリポートとともに、エントリーマシンの中から注目したいアメリカ車をピックアップして紹介する。 REPORT&PHOTO:山崎 龍(YAMAZAKI Ryu)

MADE IN USA!マッスルカーの単純明快なカッコ良さ
そこにシビれる!あこがれるゥ!!

『バニシング・ポイント』『ブリッド』『バニシング in 60″』『ダーティー・メリー/クレイジー・ラリー』などなど、1960年代後半~1970年代半ばにかけて制作された「アメリカン・ニューシネマ」と呼ばれる一連の作品群に登場する主人公の多くがアウトローやアンチヒーローであり、映画の内容も反体制的であった。そして、それまでの“お上品”なハリウッド映画が扱おうとしなかった性とジェンダー・暴力・人種・宗教などをテーマに置いたところが斬新だった。

1970年型フォード・トリノGT。ロングノーズ&ショートデッキのワイドボディというマッスルカーらしいスタイリングがカッコいい。心臓部には351cu-in(5.8L)V型8気筒OHVエンジンを積む。

アメリカン・ニューシネマの中でも現代を舞台にした作品の場合、『バニシング・ポイント』のダッジ・チャレンジャー、『ブリッド』のフォード・マスタング 、『ダーティー・メリー/クレイジー・ラリー』のダッジ・チャージャーなど、映画の中で主人公が相棒としていたのが、いわゆる「マッスルカー」と呼ばれるパワフルなV8エンジンを心臓に持つ、迫力あるルックスを持つアメリカ製の2ドアスポーツクーペだった。

1970年型はトリノとしては第2世代の最初の年にデビューしたモデル。このモデルからコークボトル・スタイリングが採用された。なお、シリーズには429cu-in(7L)V型8気筒の心臓を持つトリノ・コブラ・スポーツルーフも設定された。

1970~1980年代にはTVのゴールデンタイムで各局連日のように洋画を流していたこともあって、カーアクションを売りにしたアメリカン・ニューシネマが放送されることも多く、当時少年期を過ごしたおじさん世代の中には、映画を通じてアメリカ車ファンになった人も少なくないだろう。

1970年型フォード・トリノGTのインテリア。第2世代のトリノはフォードの主力中型車で、写真の2ドアファストバック以外に2ドアセダン、2ドアハードトップ、2ドアコンバーチブル、4ドアセダン、4ドアハードトップ、ステーションワゴンと豊富な派生モデルが用意された。

なんたってマッスルカーはカッコいい。アイドリング時にデロデロと低く唸るアメリカンV8は、アクセルをひと踏みすればスキール音とともにタイヤスモークをモクモクと湧き揚げ、グォオオオオという雄叫びを上げながら重い車体を一気に加速させて行くのだ。

1966年型ポンティアックGTO。ジョン・デロリアンがチーフエンジニアを務めた元祖マッスルカー。ポンティアック代表するスポーツモデルとして登場した。1965年に縦2連4灯ヘッドライトへとフェイスリフトされた。

マッスルカーのほとんどは直線番長で、コーナーリングの限界は低いが、映画の中ではその弱点を逆に生かし、すべてのコーナーを豪快なパワードリフトで駆け抜けて行く。そんな野獣を思わせる暴力的かつ迫力のある熱い走りを披露するマシンに与えられたスタイリングと言えば、デカくて派手で豪快という子供でも分かりやすい単純明快なわかりやすい魅力がある。

1967年型シボレー・ノヴァ・スポーツクーペSS。ノヴァはシボレーブランドのコンパクトカーで、写真の車両はコンパクトな車体を生かしたスポーツモデル。バケットシートやアルミ製デッキカバーなどの専用部品がおごられた。直列6気筒を基本にオプションとして327cu-in(5.4L)V型8気筒を選ぶことができた。

いやはや、これをカッコ良いと言わずして何をカッコ良いと言うのだろう。三つ子の魂百までの言葉の通り、筆者は幼少期に映画で見たアメ車にすっかりやられてしまい、五十路を過ぎた今でもアメ車が好きで好きでたまらない。

デカくて派手で豪快!大排気量V8の心臓こそ正義!!
こまけぇこたぁいいんだよ!!

そんな「趣向は子供、身体は大人」な筆者のようなノーテンキなおっさん連中が世の中には結構いるようで、2024年10月20日に「お台場ウルトラパーク」で開催された『Super American Festival 2024 at お台場』(以下、アメフェス)には、多くの台数のマッスルカーがエントリーしており、終日マシンのまわりを来場者が囲んでいた。

初代モデルの最終型となる1969年型シボレー・カマロ。主要コンポーネンツは1968年型までのものを踏襲しているが、ボディ外板が一新され、よりワイドかつシャープなスタイリングとなった。

実際、エントリーしたマシンのバリエーションは豊富だ。会場に並んだマッスルカーは、アメ車イベントでは定番の往年のフォード・マスタングやシボレー・コルベット、カマロなどの人気車種はもちろんのこと、1967年型シボレー・ノヴァ・スポーツクーペSS、1970年型フォード・トリノGT、1968年型ダッジ・チャージャーR/Tなどマニアックなクルマの姿も見える。おおっ、あそこにあるは1967年型プリマスGTXじゃないか! あっちには元祖マッスルカーの1966年型ポンティアックGTOの姿もあるゾ!

1968年型ダッジ・チャージャーR/T。チャージャーとしては第2世代に当たるモデルでコークボトル・スタイリングと先代から受け継いだコンシールドヘッドランプが特徴。

もちろん、5代目や6代目マスタングや6代目カマロ、最新型のコルベットなどの2000年代以降の新世代マッスルカーのエントリーのほうが台数的には多く、それはそれで溢れんばかりの魅力があるのだが、やはりマッスルカーと言えば1960~1970年代のファーストジェネレーションにトドメをさす。

1970年型ダッジ・チャージャーR/T。第2世代チャージャーとしては最終型で、新たに440cu-in(7.2L)6パックV型8気筒OHVエンジンが追加された。また新しいデザインのバケットシートドアトリムなどインテリアにも改良の手が入っている。

視覚的なアピアランスを何よりも重視し、空力など無視したかのような押し出し感のあるスタイリング。燃費などおかまいなしのパワーを追求した大排気量V8、デカくて迫力あるボディサイズ……何もかもが最高だ。パワーが欲しいなら燃焼効率など細々したことを考えるより大排気量のV8エンジンを積む。デカイエンジンを積んだのだから燃費のようなつまらないことは考えない(巡航時のアメ車の燃費は排気量の割に良いのだが)。長距離を快適に移動するためにはデカイボディの方が良いに決まっている。これこそがアメリカ流の伝統的なクルマの価値観なのである。

エコも燃費も気にしない!! 楽しめるうちにマッスルカーに乗っておけ!!

1967年型プリマスGTX。中型大衆車のベルヴェディアをベースにしたマッスルカーで、心臓部には440cu-in(7.2L)V型8気筒OHV「スーパーコマンド」エンジンを搭載し、それにあわせてサスペンションなども強化されている。

最近はマッスルカーの母国アメリカでもCAFE規制なる燃費規制のせいで、SUVやピックアップトラックを除くとアメ車はボディサイズをシュリンクし、排気量も小さくなってしまった。伝統のV8エンジンも乗用車では設定がすっかり少なくなった。だが、アメ車が直4やV6なんてみみっちいエンジンしか積まなくてどうする。

1965年型フォード・マスタングハードトップ。このクルマについては多くを語る必要はないだろう。生誕60周年の節目を迎えた元祖スペシャリティーカーで、自動車史に残る爆発的なヒットを記録した記念碑的なクルマだ。

初代登場にちなんで限定1965台!! フォード・マスタング誕生60周年記念モデル「60周年アニバーサリー・パッケージ」が登場!

フォードは、ブランドを代表するマッスルカー「フォード・マスタング」の誕生60周年を記念して、現行のマスタングに「60周年記念パッケージ」を追加することを発表した。この限定モデルは初代モデルが登場した年にちなんで1965台のみが限定生産され、当時ラインナップされていたクラシックなブリタニー・ブルーのペイントカラーがボディカラーとして復活している。また、60周年を記念して、フォードは新たなデジタルメーター・クラスターのデザインを発表。昼間はクラシックなホワイト・ダイアル、夜間はアイシー・ブルーで照らされるクールなデザインとなっている。

「For Sale」のプレートが掲げられた1968型フォード・マスタング・ファストバック。ボディサイズを拡大した1967年型からの外観上の変更点は前後側面のサイドマーカー の有無で見分けられる。近年人気を集めているモデルであり、価格を聞くのがちょっと怖い。

ましてやハイブリッドやBEVなどまったくもって不要。そんなつまらないクルマは日本や欧州にでも作らせておけば良いのに……と、極東の島国に住むいちアメ車ファンとしては思う。思うのだが、どうにも「時利あらずして騅逝かず」と言った感じで、こんなマニアの戯言に賛同してくれる人は少なく、筆者のようなオールドスクールな人間にとっては、すっかりつまらない世の中になってしまった感がある。

1967型フォード・マスタングGT500E「エレノア」のレプリカ。『バニシング in 60″』をニコラス・ケイジ主演で2000年にリメイクされた『60セカンズ』に同型車が登場する。カスタムを手掛けたのは人気カスタムデザイナーのチップ・フーズ。ただしクェンティン・タランティーノに言わせると「ニコラス・ケイジ版(の映画)はクソだ」とのこと。エレノアの出来は良いのだけれどねぇ……。

21世紀に復活した新世代のマッスルカーも社会的な圧力に屈してボチボチ終焉を迎えようとしている。世界的なクラシックカーブームにより、1960年代~1970年代にかけて生産されたファーストジェネレーションのマッスルカーも今やすっかり高騰してしまったが、それでも一生添い遂げる気があれば、庶民でも無理を重ねれば買えないことはないだろう。

1969年型マーキュリー・クーガーをタランティーノ監督の映画『デスプルーフ in グラインドハウス』に登場するカート・ラッセル演じるスタントマン・マイクがテネシー州レバノンで使用したダッジ ・チャージャー風にカスタムした車両。カウルフード先端には「アグリーダック」のマスコットが備わる。

欲しい人は憧れだけで終わらせることなく、今のうちに欲しいクルマを買っておいて、大いに楽しんでおくことをオススメしたい。今後、大排気量のV8エンジンを搭載したマッスルカーが作られることはないだろうし、いつまでそれを楽しめるかはわからないのだから……。

1982年型シボレー・コルベット・スティングレイ(C3)、C3としては最終型で、燃料供給装置がキャブレターからインジェクションへと変更されている。最高出力は10hp増しの200hpとなった。
1992年型シボレー・カマロ・スポーツクーペ。3代目カマロとしては最終型となるモデル。心臓部にはLB9型シボレー・スモールブロック・350cu-in(5.0L)V型8気筒OHVエンジンを搭載する。
1982年型フォード・マスタング2ドアハードトップ。マスタングとしては3代目に当たるモデルで、FOXプラットフォームを使用していることから「FOXマスタング」の愛称を持つ。今から10年ほど前にモータージャーナリストの九島辰也氏がまったく同じマスタングに乗っていた。ひょっとして同じ個体?
1987年のマイナーチェンジでフェイスリフトが行われたFOXマスタングの後期型コンバーチブル。日本では近鉄モータースなどので手で少数が正規輸入された。アメリカでは1992年の生産終了まで人気を保った。コンパクトな車体にパワフルな302cu-in(5.0L)V型8気筒OHVエンジンを搭載したことから、現在でもドラッグレースなどで活躍する。
2007年に登場した5代目マスタング前期型をベースにしたシェルビーGT500。心臓部にはフォードGTにも搭載されたスーパーチャージャー付き330cu-in(5.4L)V型8気筒DOHCエンジンを搭載する。
2012年に登場した5代目マスタング中期型をベースにしたマスタングBOSS302。エンジンはチューニングにより最高出力444hpを発揮する。ボディブレースの追加や後部座席の補強用スチール製X ブレースの追加により、パワートレインとハンドリングの強化が図られた。
2015年にデビューした現行型マスタングをベースにしたシェルビーGT。302cu-inV型8気筒DOHC「コヨーテ」エンジンのほか、チューニングが施された直列4気筒ターボの「エコブースト」エンジンの設定もある。
2015年にデビューした現行型シボレー・カマロ・コンバーチブル。ボディ側面に描かれたコカ・コーラのバイナルグラフィックが印象的だ。
2014~2019年にかけて生産されたシボレー・コルベットZ06(C7)。イートン製R1740TVSスーパーチャージャーを備えた376cu-in(6.2L)V型8気筒OHVエンジンを搭載し、最高出力は650hpを発揮する。写真はエアロパーツで武装するなど相当手が入ったマシンだ。

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著者プロフィール

山崎 龍 近影

山崎 龍

フリーライター。1973年東京生まれ。自動車雑誌編集者を経てフリーに。クルマやバイクが一応の専門だが、…