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■クリエイティブムーバー第4弾はボクシーなハイトワゴン「S-MX」
1996(平成8)年11月18日、ホンダがクリエイティブムーバー第4弾の「S-MX」を発表(発売は11月22日)。クリエイティブムーバーとは、生活を楽しむことを追求した新発想のクルマづくりで、「オデッセイ」、「CR-V」、「ステップワゴン」の大ヒットモデルに続く第4弾が、コンパクトハイトワゴンのS-MXである。
ホンダが進めた新たなクルマづくりのクリエイティブムーバー
ホンダは、1990年代クリエイティブムーバーという新発想の個性的なモデルを世に放った。クリエイティブムーバーとは、“使う人の生活をより楽しく、豊かに広げていける「生活創造車」を目指したホンダの新発想車」を指す。その第1弾が「オデッセイ(1994年~)」、第2弾「CR-V(1995年~)」、第3弾「ステップワゴン(1996年~)」、そして第4弾が「S-MX(1996年~)」である。
オデッセイとステップワゴンは、多彩なシートアレンジで多人数が楽しめる3列シートのミニバン。CR-Vは、最低地上高を確保してオフロードも楽しめると同時に、広い車室でシートアレンジも配慮された都会派SUV。これら3台のモデルは大ヒットし、当時不況に喘いでいたホンダ復活の起爆剤となった。
そして、第4弾として登場したのが2列シートのコンパクトハイトワゴンのS-MXだ。クリエイティブムーバーすべてに共通するのは、広い室内空間と多彩なシートアレンジなど乗員が楽しめることを追求していることである。
ステップワゴンをベースに全長を短縮した2列シートのS-MX
S-MXは、全長4605mmのステップワゴンをベースに、全長を3950mmに短縮して2列シート化したコンパクトなハイトワゴンだ。
スタイリングは、厚みのある大きなフロントマスクを持つボクシーなボディとハイルーフの広い室内空間が特徴。前後2列のベンチシートは、完全フラット化することができ、車中泊にも対応可能である。ドアはスライド式ではなく、運転側に1枚、助手席側に2枚のドアを持つ変則的な3ドアレイアウト。ヒンジ式の後席の大型ドアは、乗降性や荷物の収納にも非常に便利である。
パワートレインは、最高出力130ps/最大トルク18.7kgmを発揮する低中速トルク重視の2.0L直4 DOHCエンジンと4速ATの組み合わせ、駆動方式はFFベースで4WDも用意された。
車両価格は、164.8万円(2WD)/186.8万円(4WD)。当時の大卒初任給は19.4万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約195万円/221万円に相当する。
見て乗って楽しいクルマを追求して若者向けのユーティリティに優れたS-MXは、当初は6000台を超える好調な販売を記録。しかし、その後はライバルの出現もあって販売は徐々に右肩下がりとなってしまった。
ステップワゴンに吸収され1代限りで生産を終えたS-MX
S-MXの販売が低迷した理由のひとつは、比較的安価に設定された同じコンセプトのボクシーなハイトワゴン、日産自動車「キューブ(1998年~)」とトヨタ「bB(2000年~)」が追走し、人気を獲得したことである。しかし、キューブとbBの人気も長続きはせず、2000年以降に人気が爆発したスーパーハイトワゴンやコンパクトミニバンに市場を奪われてしまったのだ。
一方で同年にデビューした3列シートのコンパクトミニバンのステップワゴンは、大ヒットを続けていたことからS-MXは兄貴分に相当するステップワゴンに吸収される形で2002年に1代限りで終焉を迎えたのだ。
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新たな発想で生まれたS-MXだが、もっと安価なら軽のスーパーハイトワゴン、一方で大は小を兼ねるという発想ならユーティティが高いコンパクトミニバンの方が良いとなり、S-MXは中途半端な位置づけになってしまったのだろう。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。