【タイモーターエキスポレポート】

マツダのピックアップトラック「プロシード」後継モデルもすでに3代目!「BT-50」は魂動デザインのいすゞ「D-MAX」!?

微笑みの国、タイの首都バンコクで、2024年11月28日~12月10日の期間で、国際モーターショー「第41回モーターエキスポ2024」が開催された。タイは、日系ブランドが大きなシェアを持つ日本車大国でもある。そこで出会った日本では出会えない日本車を紹介したい。今回は、筆者も実車を見る機会を楽しみにしていたマツダデザインを取り入れた1トンピックアップトラック「BT-50」を紹介しよう。
REPORT:大音安弘(OHTO Yasuhiro) PHOTO:大音安弘(OHTO Yasuhiro)/MAZDA

そもそも「BT-50」とは?

日本では、マツダのオリジナルデザインが取り入れられるのは登録車のみだが、海外向けの1トンピックアップトラック「BT-50」は、魂動デザインを採用しているのが大きな特徴だ。その歴史を少し振り返ろう。

初代モデルはBシリーズ及びプロシードの後継として2006年にタイ・バンコクで発表された。この初代は、当時の親会社フォードとの共同開発車であった。2011年より販売が開始された2代目も、基本構造はフォードと共有している。

マツダのピックアップトラック「Bシリーズ」は1961年に登場。2006年まで5世代に渡ってラインナップされた。写真は1985年〜1998年の4代目で、1996年のマイナーチェンジ以降のモデル。
日本では2代目から「プロシード」として販売されたが、他にも「ブラボー」(オーストラリア)、「サンダー」「ファイター」「マグナム」(いずれもタイ)の名称がある。写真は同じく4代目のマイナーチェンジモデル。

初代もオリジナルデザインを取り入れていたが、2代目はより差別化が図られており、外装のほとんどが専用デザインとされていた。大きく状況が変化したのは、現行型となる3代目だ。2015年にフォードとの資本提携が解消されたため、新たなピックアップトラックのベースの供給元の確保に迫られたのだ。

Bシリーズの後継として2006年3月の「バンコク国際モーターショー」で発表された初代BT-50。フォードとの共同開発車で、フォード・レンジャーの姉妹車でもある。2011年に2代目にフルモデルチェンジ。
2011年に登場した2代目BT-50。先代同様、基本構造はフォードと共有しておりフォード・レンジャーがベース。ただし、外装デザインでよりマツダらしさが発揮された。

そこで手を組んだのが、日本のいすゞだ。同社は、1トンピックアップトラックに属する独自モデル「D-MAX」を手がけている。それをベースに仕様を変更し、供給を受けることになった。最大の特徴は、歴代モデルのように製造には携わらないものの、マツダの最新デザイン「魂動デザイン」による専用エクステリアが与えられたこと。つまり、デザイン上の特徴は、新型にも受け継がれているわけだ。

3代目BT-50は魂動デザインのD-MAX?

現行型となる3代目は2020年10月にフルモデルチェンジ。D-MAX同様にタイで生産されるものの、グローバルでは発表と同時に、タイではやや遅れての2021年1月から供給が開始された。

3代目BT-50(2010年グローバルモデル)。
3代目BT-50(2010年グローバルモデル)。

さらに、2024年秋にビックマイナーチェンジを実施して最新仕様になった。タイではモーターエキスポが初披露の機会となったため、主役級の扱いとなったことで、ようやく筆者もBT-50をチェックすることができたのだ。

2024年秋のビッグマイナーチェンジで、最新の魂動デザインへと進化したBT-50。

そのスタイリングは、一目で「マツダ」と理解できる魂動デザインをストレートに取り入れたものである。そのため、ライバルと比べても、よりSUVらしいルックスに仕上がっていると思う。

ステージに展示されたBT-50の最上級グレード「DBL 3.0 XTR 4×4 6AT」は、モデルライン唯一の4WD車だ。

OEMということもあってか、モデルラインは極めてシンプル。エントリーとなる前席後方のスペースを確保した観音開きドアを持つ「フリースタイルキャブ」は「FSC 2.2 XS HI-RACER 6MT」のモノグレードに。その他はダブルキャブ仕様のみとし、「XT-DBL 2.2XT HI-RACER 8AT」「DBL 3.0 XTR HI-RACER 6AT」「DBL 3.0 XTR 4×4 6AT」の3タイプを用意。すべてを合わせても4タイプしかないのだ。

マツダらしいデザインのエクステリア

まずマツダらしいエクステリアデザインから見ていこう。フロントマスクは完全に専用デザイン。一般的に高価とされるヘッドライトユニットも、オリジナル仕様とする拘りようだ。CX-5やCX-8を彷彿させる魂動デザインフェイスが表現され、ひと目で最新マツダ車だと理解できる。

完全に専用化されたフロントマスク。そのアップだと、マツダの新型SUVにしか思えない出来栄え!?だ。

大型のフロントグリルは、下部にブラックの大きなアクセントモールが配置され、ヘッドライトとの一体感を演出。グリル内部にはオクタゴンの突起が均等に配置されているのが特徴で、よりスポーティかつ力強いマスクに仕上げている。

最上位グレード「XTR」専用のBT-50エンブレム。
最上位グレード「XTR」に装備されているADAS機能のステレオカメラ。
最上位グレード「XTR」のドアミラーは、ブラック仕様となる。

足元のアルミホイールは17インチ仕様と18インチ仕様が用意されるが、こちらもデザインはオリジナル。リヤセクションでは、テールランプを専用デザインとしており、マツダの世界観をしっかりと表現する。そのこだわりは、ボディカラーにも反映されており、いすゞD-MAXには非設定となるレッドとブルーという鮮やかな色味も選ぶことができるのだ。

ダブルキャブ仕様には、サイドステップが標準となる。
展示車両は18インチホイールに265/60R18サイズのブリヂストン「DUELER H/T 684II」を装着(ダブルキャブ仕様は全て同サイズ)。
最上位グレード「XTR」のスタイリングバー。
テールレンズもBT-50専用デザインに。
スタイリングバーには、ハイマウントストップランプを内蔵。
最上位グレード「XTR」は、傷防止のベッドライナーを装備。
バックドアには、巨大なマツダエンブレムを装着。写真は「XT」のもの。
標準状態の荷台。写真は「XT」。
展示された「XT」の荷台はライナーは無くボディ同色となる。

マツダのSUVとして違和感のないインテリア

最上位グレード「XTR」のコックピット。
ダブルキャブのエントリ-グレード「XT」のコックピット。

インテリアに目を向けると、ダッシュボードデザインこそ共通であるが、細やかなパーツを変更することで専用化を図る。その一例として、ステアリングホーンボタン、センターコンソール、ドアトリム、シート表皮などが挙げられる。

ダッシュボードデザインはD-MAXと共通。
ダブルキャブはデジタルメーター仕様に。
ATシフト回りのステッチは、BT-50専用。

特にシート表皮では、最上位となる「XTR」にテラコッタとブラックのコンビシートを採用。よりマツダSUVライクな空間に仕上げているのだ。

最上位グレード「XTR」専用のテラコッタとブラックのコンビシート。
シート形状こそD-MAX譲りだが、表皮デザインはマツダ仕様となる。
最上位グレード「XTR」シートのみに採用されるヘッドレストの車名刺繍。
後席用にクーラーの送風口とUSBポートも装備される。

パワートレインはD-MAXと同様で、2.2Lの新エンジンと8速ATも設定

最上位グレード「XTR」専用となる3.0L直列4気筒ディーゼルターボエンジン。

パワートレインはD-MAXと共有しており、上位の3.0L直列4気筒ディーゼルターボに加え、D-MAX改良で投入された新開発の2.2L直列4気筒ディーゼルターボの2種類を用意。性能も共通で、3.0Lエンジンが最高出力190ps/3600rpm・最大トルク450Nm/1600~2600rpmとなり、2.2Lエンジンが最高出力163ps/3600rpm・最大トルク400Nm/1600rpm~2400rpmとなる。

D-MAXへの採用に合わせて、BT-50のエントリーエンジンも、1.9Lから2.2Lの新開発エンジンに換装された。

トランスミッションは、2.2Lエンジン搭載のフリースタイルキャブが6速MT。ダブルキャブにはMTの設定はなく、2.2Lエンジンが8速AT、3.0Lエンジン車が6速ATとなる。因みにHI RACERは、いすゞのHI-LANDERと同様に車高が高い仕様であり、最低地上高を235mm~240mmを確保している。

グレードを絞ってD-MAXよりやや高価な価格設定に

価格は76万2000バーツ(約347万2000円)~135万2000バーツ(約616万円)となっており、ラインナップが限定されるため比較的高価となっている。

ダブルキャブのエントリ-グレード「XT」のコクピットまわり。
ステアリングのホーンパッドは、しっかりとマツダ仕様に。
メーターデザインは、D-MAXに準じる。
「XT」は2.2Lエンジン車なので、新エンジンに合わせて8速ATを採用。

因みに最高値となるのは、ダブルキャブで3.0Lエンジン搭載する4WD車の「DBL 3.0 XTR 4×4 6AT」である。3.0Lエンジン車専用となる「XTR」グレードとなれば、ADASまで標準化されており、日本で強化されるマツダのSUVラインアップに加えてくれても良いのではと少し思ってしまうほど。

「XT」のフロントシート。シート表皮は専用化されており、最新マツダ車に使われるセンターストライプ付き。
「XT」のリヤシート。シート表皮は、フルファブリックとなるが、座り心地は上々だ。

CX-80のような豪華なSUVが増えるのも魅力のひとつだが、BT-50のような骨太な仲間がいても面白いのではないだろうか。BT-50は中身こそいすゞだが、そんな気持ちにさせてくれるほど、マツダらしいピックアップトラックに仕上げられていた。

バックドアに輝くBT-50エンブレム。ぜひ日本でも見てみたいものだ。
デザインの異なる「XT」の18インチホイール。タイヤはもう1台と同じく265/60R18サイズのブリヂストン「DUELER H/T 684II」を装着。

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著者プロフィール

大音安弘 近影

大音安弘

1980年生まれ、埼玉県出身。幼き頃からのクルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者へ。その後…