“軽”に乗りたくない! 国産スモールは「ロッキー/ライズ」の独擅場!?【スモールカー事情2025】

日本では、軽自動車のスーパーハイトワゴン、ハイトワゴンの存在感が増し、相対的にAセグメントのスモールカーのプレゼンスが低下している。輸入車勢のAセグメントモデルもEVシフトの過渡期にあり、姿を消したモデルが多い。ここ数年、Bセグメントよりもコンパクトなスモールカーでよく売れているのは「ダイハツ・ロッキー/トヨタ・ライズ」となっている。

TEXT:塚田勝弘(TSUKADA Katsuhiro) PHOTO:平野 陽/TOYOYA/DAIHATSU

軽自動車以上、コンパクトカー未満のAセグメント

Aセグメントで最も売れている「トヨタ・ライズ」 ダイハツでは「ダイハツ・ロッキー」を名乗る。

年々、新型車が肥大化する中、欧州によるセグメント分けも少しずつ変わっている感があるが、現在のAセグメントは全長3.6m〜3.9m以下のコンパクトモデルだ。メーカーやブランドによっては、AセグメントからCセグメントくらいまでひと括りにコンパクトカーと表現する傾向もあるが、Aセグ、Bセグ、Cセグメントの間はひと回り程度のサイズの差がある。軽自動車は、全長3.4m、全幅1.48m、全高2.0mという規格で縛られているため、Aセグメントは、ひと回り小さなスモールカーとも表現できるだろう。

日本勢で現在買えるのは、スモールSUVの「ダイハツ・ロッキー/トヨタ・ライズ」「SUBARUレックス」「ダイハツ・トール/トヨタ・ルーミー」「スズキ・クロスビー」「スズキ・ジムニーシエラ」「スズキ・ソリオ/三菱デリカD:2」となっている。

トヨタ・ライズ、トヨタ・ルーミー、SUBARUレックス、三菱デリカD:2は、OEMモデルなので、選択肢は少ない。日産マーチやトヨタ・パッソ、三菱ミラージュなどはすでに姿を消している。

5m前後の最小回転半径による小回り性能の高さとパッケージングの良さが魅力だ

欧州勢では、在庫販売となっているフィアット・500(ガソリン車)、EVのフィアット500e/アバルト500e、アバルトのガソリン車も日本向けのF595、695の生産を終了し、在庫次第という状況のようだ。そのほか、ルノー・トゥインゴもすでに販売を終え(ルノー・ジャポンによると、駆け込み需要は多かったという)、フィアット・パンダやフォルクスワーゲンup!、スマートも販売を終えて久しい。軽自動車以外の選択肢として、大きすぎず、価格の面でも魅力的な存在であるAセグメントは、一定のニーズがあるだけに、新型モデルの登場も待たれる状況といえるだろう。

ロッキー/ライズ/レックスは、驚異的な後席と荷室の広さが最大の魅力

3タイプのパワートレーンを設定。なお、SUBARUレックスは、1.2L NAのみとなる

現実的な選択肢は、ダイハツ・ロッキーとOEMモデル、ダイハツ・トールとOEM版、スズキ・クロスビー、スズキ・ソリオとOEMモデル、フィアット500e、アバルト500eなどとなっている。今回は、スモールSUVのダイハツ・ロッキー/トヨタ・ライズ/SUBARUレックス(1.2L NAガソリンのみ)をピックアップする。

認証試験不正問題で一時期、出荷停止になっていたダイハツ・ロッキー/トヨタ・ライズ/SUBARUレックス(1.2L NAガソリンのみ)。出荷再開後、自販連の販売ランキングで唯一、上位に顔を出している。

全長3995×全幅1695×全高1620mmのスリーサイズは、Aセグメントとしては全長は長めではあるものの、現在となっては、同セグメントに分けても違和感はあまりない。最小回転半径は4.9m〜5.0mで、前方視界の良さもあって狭い場所での取り回しも楽にこなせる。また、SUVらしく185mmの最低地上高は、降雪地域でも比較的安心して走破できる。カーシェアリングの定番モデルであり、4人乗車する機会も多いだろう。

質感はそれなりだが、機能的なインパネで操作性も良好

後席の居住性もBセグメントSUVを凌ぐほど高く、足元も足元にも余裕があり、床面から座面前端部までの高さも十分に確保されているため、大人でも深く腰かけられるのも美点だ。前後席に身長180cmの人が座っても無理のないパッケージングを実現している。

上位クラスのSUVを超える荷室容量

全長を考えると、驚異的な後席足元スペースを誇る

こうなると、後席の広さがラゲッジに影響を及ぼしそうなものだが、荷室も広い。通常時でも奥行きは長く、後席使用時でも369Lを確保し、床下収納(デッキボード下)も驚くほど深く、デッキボード下を含めると449Lに達する。6対4分割可倒式の後席背もたれを前倒しすると、段差は残るものの、広大な積載スペースを確保。2人までのキャンプなら十分にカバーできそうな積載力で、BセグメントSUVを含めてもトップクラスの荷室容量を誇っている。なお、トヨタ・ヤリスクロスの荷室容量は371L、マツダCX-3は350L、マツダCX-30は430L、日産キックスは423Lなどとなっていて、売れ筋のBセグSUVよりも広い。

BセグメントSUVを超える荷室容量を誇る

パワートレーンでは、ダイハツ独自のシリーズハイブリッド(100%電動駆動)の「eスマートHV」を設定しているのも魅力だ。WLTCモード燃費は28.0km/Lで、街中中心であれば静かでスムーズな走りを享受できる。そのほか、同燃費20.7km/Lの1.2Lガソリン車、同燃費17.4km/Lの1.0Lガソリンターボも設定している。このガソリンターボは4WDのみで、シリーズハイブリッド、NAエンジン車はFFのみとなる。

ハイブリッド車も床下収納を用意する

燃費重視ならもちろんハイブリッドが適任だ。低速域ではEV走行になるものの、少し速度を上げていくとエンジンがすぐに始動する。100%駆動であってもエンジン車のような発電用エンジンの存在感だが、逆にいえば純ガソリン車からの乗り替えでも違和感はない。NAモデルも街中のストップ&ゴーをスムーズにこなすトルクを享受できる。高速域はさすがにパンチ力不足を抱かせるものの、コスパに優れた街乗りクルマとしては十分に満足できるはず。

先進安全装備は、衝突被害軽減ブレーキを全車に標準装備し、アダプティブクルーズコントロール(ACC)やレーンキープコントロールも上位グレードに標準化する。ロングドライブの機会も多いのならACC搭載車を選択すると重宝するはずだ。

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著者プロフィール

塚田 勝弘 近影

塚田 勝弘

中古車の広告代理店に数ヵ月勤務した後、自動車雑誌2誌の編集者、モノ系雑誌の編集者を経て、新車やカー…