安全装備や先進技術を強化して販売再開「ホンダ・オデッセイ」【最新ミニバン 車種別解説 HONDA ODYSSEY】

1994年に登場して以来、長らくホンダの顔だった「オデッセイ」。一時その名を消していたが23年にパワートレインをハイブリッドに絞り、先進安全装備などソフト面を大幅に充実させ復活した。ベースは変わらないながらエクステリアも高級感と洗練されたスタイリングとなり、熟成された乗り味とともに変わらず頼もしいクルマと言える。
REPORT石井昌道(本文)/山本晋也(写真解説) PHOTO:中野幸次 MODEL:平岡明純

高級感あふれる新型フェイス 低全高でも圧倒的に広い車内

1990年代に流行していたRV(ミニバンやSUVなどレジャービクル)がまったくなく、それが業績不振の要因だと言われていたホンダは、アコードのハードウエアと工場設備で成立するミニバンのオデッセイを開発。94年に発売するやいなや大ヒットとなり、その後もステップワゴンやCR-Vなどの人気車を生み出して業績を回復させた。

エクステリア

ボディサイズの割りに最小回転半径は小さく、ノーズもフラットに伸びているが、実は車両感覚をつかみやすいデザインではないので取り回しには気を付けたい。写真ではフロントドアの開口角が若干狭く見えるかもしれないが、実際は物理的な余裕があるため狭さを感じることはない。テールゲートは電動タイプで、ゆっくりと開閉するのは安心感がある。
「BLACK EDITION 」は、ブラックのエンブレム、マットベルリナブラックのアルミホイール、スモークレンズのリヤコンビランプなどで差別化されている。最小回転半径は5.4m。

その後、オデッセイはホンダのミニバンのフラッグシップとして君臨。2022年には埼玉・狭山工場の閉鎖に伴い日本での販売を中止したが、23年末に中国・増城工場で生産するモデルを輸入するカタチで販売再開。パワートレインはハイブリッドのe:HEV、サスペンションや内外装がスポーティな「アブソルート」のみに絞り込み、装備違いの3グレードを用意。ホンダセンシングのアップデート、ホンダコネクトの初搭載などを受けて販売されている。

乗降性

スタイリングの基本は以前と同様だが、再販売にあたって新デザインのフロントグリルを採用。水平基調のめっきバーが4本から5本となり突起状のデザインを組み合わせることで高級感を向上させた。また、新たに加わった「ブラックエディション」はフロントグリル、リヤコンビランプ、アルミホイール、ルーフ・ピラーライニングなどがブラックにまとめられ、フラッグシップらしい洗練感が表現されている。もともと全高は低めで、良い意味でミニバンらしさを感じさせないスタイリングだが、それでも十分な室内空間を実現しているのは超低床プラットフォームだからだ。さらに、乗降性が高まるとともに、低重心によるセダンライクな走りも特徴となっている。

インストルメントパネル

11.4 インチ画面の純正アクセサリーナビや「エレクトリックギアセレクター」のシフト操作が新世代を表現。メーターはアナログの速度計とカラーディスプレイを組み合わせる。

e:HEVはエンジンが発電しその電力を使うモーター駆動が基本で、車両重量がそれなりにある大型ミニバンとの相性は抜群に良い。315Nmという、3.0ℓガソリンエンジン並みの最大トルクを0-2000rpmで発生するモーターは、発進時から力強くレスポンスも良いからだ。ストップ&ゴーの多い街中でも頼もしく走ってくれる。エンジンは発電のために回っていて、強い加速を求めればそれなりに高回転なるが、遮音がしっかりしているので静粛性も高い。

居住性

高速巡航ではエンジンと駆動輪が直結するエンジンモードとなる。モーターは低/中速域が得意なのに対してエンジンは高速域が得意なため、燃費効率が高まるからだ。その切り替えはメーター表示で確認できるが体感はまったくできないほどスムーズ。高速巡航の燃費が想像以上に伸びてくれるのがうれしい。単なるシリーズハイブリッドではなく、賢く高効率を狙っているのだ。それにも増して驚きだったのが、乗り心地が良かったことだ。記憶にある初期モデルはスポーツカー並みに硬さがあったが、今回の試乗車はスポーティな「アブソルート」であってもサスペンションがしなやかに動いている。それでも低重心だからコーナリング性能などに不満はない。

うれしい装備

2列目シートを中央側に寄るとロングスライドが可能。写真は最後端にセットして、オットマンを展開した状態だが、まさに最上級の快適空間だ。背もたれとオットマンは電動調整式なのもうれしい。
月間販売台数     1016台(24年5月~10月平均値)
現行型発表    13年10月(一部改良 23年12月)
WLTCモード燃費  19.9 ㎞/ℓ※「e:HEV ABSOLUTE」  

ラゲッジルーム

静かで頼もしいe:HEVとしなやかな乗り心地は、高級感のあるオデッセイに相応しい。販売再開のうれしさとともに、乗り味が熟成されたことに驚きを覚えるのだ。

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.164「2025年 最新ミニバンのすべて」の再構成です。

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