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■初代サニーに追加されたファストバックのサニークーペ
1968(昭和43)年3月2日、日産自動車の初代サニーにファストバッククーペの「サニー1000クーペ」が追加された。約半年遅れで登場したライバルのトヨタ「カローラ」に対抗するため、サニーはよりスポーティでスタイリッシュなクーペを投入したのだ。

誰もが入手できる小型大衆車を目指したサニー
1960年代、日本は高度経済成長を迎えたモータリゼーションの黎明期。日産は誰でも購入できる1Lクラスの小型大衆車である初代サニー「ダットサン・サニー」を1966年に市場に投入した。サニーの特徴は、軽量ボディを生かした優れた動力性能と、ノーズが長く傾斜したリアウインドウで構成される斬新なスタイリングだった。

新開発の一体成型システムで剛性を確保しながら、外板も極力薄肉化を図り、車両重量は軽量625kgを達成。エンジンは、当初800ccだった計画を急遽1000ccに拡大した最高出力56psの直4 OHVで、最高速は135km/hを超え1.5Lクラス並みの優れた走りを見せた。

サニーは、軽快な走りと低価格で5ヶ月で3万台を超える販売を記録し、その年の12月には月販台数が1万台の大台を突破。ところが、同年の11月に“プラス100ccの余裕”と謳ったトヨタの初代「カローラ」が登場すると、100ccながら排気量の大きい後発のカローラに販売トップの座を奪われてしまった。
打倒カローラの切り札として登場したサニークーペ
カローラに対抗するため、サニーはスポーツグレードを追加するなど商品力強化を図り、その切り札として1968年3月のこの日、サニー1000クーペが追加された。

サニークーペの特徴は、何と言ってもファストバックの大胆なスタイリングにあった。ルーフからリアエンドまでシャープな直線で形成されたボディは、個性的でダイナミックだった。ノーズ回りのフォルムはセダンに近かったが、それ以外はほとんどセダンの面影はなく、セダンと共通するパーツもほとんどなかった。

インテリアについても、メーターパネルはクーペ専用で、高級かつスポーティなデザインが採用され、3連丸型のメーターがクーペらしさを強調。シートも専用のフルリクライング機能を備えたセミバケットシートという凝りようだった。

パワートレインは、セダンより4psアップした最高出力60psの1.0L直4 OHVツインキャブ仕様エンジンと4速MTおよび3速ATの組み合わせ。それほどパワフルなエンジンではなかったが、675kgという軽量ボディのおかげでクーペに相応しい軽快な走りができた。
車両価格は、50万円(4速MT)/55万円(3速AT)。当時の大卒初任給は、3.1万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約371万円/408万円に相当する。
ユニークなセットオプションで人気を加速

サニークーペはモノグレードだったが、その代わりに豊富なオプションによってユーザーの要求に応えた。特に、人気アイテムを揃えた以下の3つのセットオプションがユニークだった。
・スポーティ・オプションセット(価格:4.68万円)
タコメーター、ナルディタイプステアリングホイール、木目チェンジレバーノブ、ヘッドレスト、安全ベルト、フォグランプ、ブースター付マフラーカッター、イニシャル入りカーバッジ
・スーパーデラックス・オプションセット(価格:3.22万円)
ナルディスタイルステリングホイール、木目チェンジレバーノブ、カレンダー付音叉時計、フォグランプ、オルゴール付方向指示器、オートアンテナ、イニシャル入りカーバッジ、マフラーカッター、サイドバイザー、ナンバープレートトリム
・セーフティ・オプションセット(価格:2.03万円)
安全ベルト、ヘッドレスト、ハイウェイエマージェンシーキット、バックアップブザー、バンパーガード

最も人気があったのは、スポーティ・オプションセットでサニークーペも人気を獲得し、サニーシリーズの拡販に大きく貢献した。
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サニークーペで人気を加速させたサニーだったが、カローラの排気量100ccアップのイメージや手堅いカローラのスタイリングやインテリアの優位性によって、初代の販売競争ではサニーはカローラに敵わなかった。その後2代目サニーは、排気量を1.0Lから1.2Lに拡大して、カローラとの戦いは2代目へと引き継がれたのだ。
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