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戦車も運べる世界最大級の大型輸送機

「C-17グローブマスターIII」は、世界的にも最大クラスの大型戦略輸送機であり、アメリカのほか、イギリスやオーストラリア、NATOなど数カ国で運用されている。全長53m×全幅51.75mで、航空自衛隊の新型輸送機C-2(全長43.9m×全幅44.4m)よりも一回り大きい。C-17の最大積載量は77.5トンに達し、車重60トンのM1エイブラムス戦車すら搭載することができる。
石破首相は、かねてよりC-17導入論者で知られており、その輸送力を強調してきた。たしかにC-17の輸送力は優れており、一時は航空自衛隊でも導入を検討したこともあったが、国産C-2開発が選択された過去がある。なぜなら、C-17は日本にとっては使いにくい輸送機だからだ。

飛行機は滑走路があればどこでも着陸できる…というわけではない。離着陸に必要な滑走距離、機体からの荷重に対する滑走路の強度といったことを考えなくてはならない。C-17輸送機は、民間機で言えばボーイング747やエアバスA380などの大型機に準じる機体だが、日本国内でこれら大型機が運航できるのは規模の大きな国際空港くらいだ。対して、C-2輸送機は、中型機であるボーイング767と同規模であり、地方空港でも幅広く運用することができる。なお、C-2部隊が配備されている入間基地(埼玉県)ですら、C-17の運用は難しい。
巨大な飛行機には相応の滑走距離が必要
滑走路の長さについて、もう少し詳しく見ていこう。ウィキペディアを読むと「離着陸距離は910m」とある。また、ボーイング社のWebページには「7000フィート(2130m)の滑走路から離陸し、3000フィート(914m)の簡易飛行場に着陸できる」とある。日本の国内飛行場は、国際空港で3000~4000m、地方空港では1000~2500m程度の滑走路を有している。上記の数字だけ見ると、地方空港でもギリギリ運用できそうな気がしてくるが、どうだろう?

離着陸の滑走距離は、積載貨物(+燃料)の重量や気温、高度の影響を受け、さらに着陸であれば、進入角度や進入速度の影響も大きい。そのため、必ずしも上記の数字のとおりにはいかない。また、実際の運用となれば、安全のためのマージンも考えなくてはならないだろう。
米国政府機関の資料によれば、たとえば機体重量210トン(機体重量+貨物・燃料80トン)で着陸する場合の、安全上の配慮を含めた実用的な滑走路長について「約1800m」という数字が記載されている。離陸距離にしても、ほぼ最大離陸重量の機体重量260トンならば「約2900m」が必要だとしている。
生産終了で中古品しか買えない現状
上のようにC-17を日本国内で運用するには、どうにも使い勝手が悪いように思える。また、多くの識者が指摘しているとおり、C-17はすでに生産を終了している。日本だけのために生産を再開してくれる可能性は乏しく、購入するなら中古にならざるを得ず、ますますC-17導入のメリットは乏しいように感じるのだが……。
