果たしてラッコは腹を叩くのか

罵詈雑言である。BYDが日本市場を研究して専用開発した軽BEVスーパートールワゴン「ラッコ」に試乗して素直にポジティブな意見を記した同業のSNSを何人か覗いてみれば、まるでネトウヨな書き込みが氾濫していた。もちろん、私だって中国政府は大嫌いだ。熊のプーさんには正直、虫唾が走る。日頃から口にしないだけで、シナ(CHINA)の政治体制には、隣人ながら我慢の限度を超えることも度々ある。一方で、国民や文化、なかでも産業には一目どころか何目も置いている。いや、置かざるを得ない。中国人の親戚や親しい友人もいるし、中華料理はしょっちゅう食べるし、身の回りの製品で中国なしで成立するものなどほとんどないと知っているから感謝もする。相手が同じような気持ちになってくれないからってキレるなよ、ってことだ。
ラッコに話を戻すと、我々メディアはこれまでと同様に、つまり、メルケルが嫌いでも、メローニが極右でも、スターマーが鈍臭くても、トランプがアンポンタンでも、そんなこととは関係なく、その国々から遥々やってきたプロダクトを、それに関与したエンジニアやデザイナーへの敬意も込めつつ、評価してきた。日本で使用するにあたって、容赦無くダメ出しし、手放しで礼賛もした。ラッコにしたところで、ただそれだけのことである。熊のプーさんはおよびじゃない。文句を言う人たちだって今や“中国製”なしでは生きていけないことを知っている。だから自動車は最後の砦なのだ。しかも軽のスーパートールはまさにガラパゴスの代表選手で、日本一が世界一というカテゴリーなものだから、土足で踏み込まれた感があるのだろう。それだけ反感も激しい。わかる、わかるんだけどね……。
この際、嫌いなもんは嫌いでよろしい、というほかない。その代わり、事実誤認や勝手な推測は控えた方がいい。悪意を持って切り取られたラッコの床下写真に寄せられたコメントの数々などは、さしずめ、その際たるものだろう。銀色のケースがそのままバッテリーに見えるらしいし、あの最低地上高では腹を打ちまくるらしい。いっそケースをカーボン柄のフィルムで覆っておけばよかったのに(笑)。最低地上高に関して言えば、ラッコと同じくらい低い国産車だって他にいくつも存在する。でもって、筆者はこれまで7000台近くの個体に乗ってきた。ラッコより最低地上高の低いクルマもたくさんあった。総走行距離も150万kmを超える。けれども、ノーズならいざ知らず、腹を打ったことなど一度たりともない。そう簡単に腹を打つことなど、ない。そんなことを言うと雪国はどうする?とか言われるけれど、どうもしない。無理だと思うならSUVにすればいい。みながみなラッコに乗りなさい、と言ったわけじゃない。というわけで、ラッコが腹を打つのはこれからも、本家本元だけかと思っている。
2026年8月第4週
2026年8月22日(土)晴れ

「プジョー E-3008」で奈良へ。2回目となるJun’s Garage×まほろばミュージアム「Cars and Coffee」を壺阪寺で開催した。メインテーマは奈良トヨタのスタッフが1年かけてレストアをし終えたばかりの2台の「パブリカ」だ。私も奈良トヨタ本店にプジョーを預け、そこ(奈良県田原本町)からパブリカコンバーチブルを借り、壺阪寺まで1時間ほどのドライブを楽しんだ。もう1台はパブリカセダン。パブリカはトヨタ史にとって、失敗は成功の糧を地でいくモデルだ。パブリカへの反省があって稀代の大衆車「カローラ」は誕生した。またパブリカは「スターレット」へと進化し、「ヴィッツ」や「ヤリス」へその精神は受け継がれている。午後、意識高い系の「麦の夜明け」さんで中華そばを食って、帰宅。地元の地蔵盆に出席。宴会(足洗いという)の二次会でスナックへ。久しぶりに歌った。
2026年8月23日(日)晴れ

少々二日酔い。朝から申し訳程度の原稿を書き、ランチは近所にオープンした「なぶら」さんで鯖ラーメンにトライ。鯖のフライ付きで、なかなか旨い。オフィスに戻り再び原稿に、今度はしっかりと取り組んだ。なぜなら夕方早めから予約困難店の「食堂おがわ」さんで大阪のクルマ仲間たちと食事会が予定されていたから。東京から同業のスペシャルゲスト佐藤久実さんもお呼びしての楽しい宴会となった。また飲んでしまった。
2026年8月24日(月)晴れ

早朝から北野天満宮でプジョー E-3008の撮影。午前中、原稿執筆。午後から奈良トヨタの菊池社長、小南専務ほかが我が家にご来訪。再来年のまほろばミュージアム新館オープンに向けて、私のコレクションも飾りたいとのこと。とても楽しみだ。飾って皆さんに見ていただくようなコレクションなどミニカーくらいしかないんだけれどね。
2026年8月25日(火)晴れ

朝から奈良へ。計画中のイベントコースを視察。奈良もかなり外国人観光客が多くなった。施設にいる母を見舞って、奈良市内のホテルで催された友人の講演を聞く。友人の名は鈴木智博さんで、彼は今、「江戸城天守再建築城プロジェクト」を強力に推進している。彼がこのプロジェクトを始めたわけじゃない。ある時、江戸城跡を歩いていて、天守再建を訴える人と出会ったそう。あまりの熱心さに彼は驚いた。仮にプロジェクトが今すぐうまく進んだとしても、年齢からして、自分たち自身では決してその姿を見ることは叶わない。もちろん何の利益も念頭にない。にも関わらず、どうしてこんなにも熱心になれるのか。そこに鈴木さんは「国を想う力」をみた。未来へと受け継ぐべきは、単なる建物ではない。この強い想いと、その結果としての文化財だと気がついた。文化財は、それがオリジナルであれ再建であれ、時代における人々の想いの総和である。だから、まずは自分の国を想う心を広く問いかけ養おう。そのために彼は再建プロジェクトを引き継ぐことを決意したのだった。
2026年8月26日(水)曇り
朝から夕方まで原稿執筆と講演会の資料作り、諸々の事務作業。まるで夏休みの宿題。
2026年8月27日(木)曇り

東京に向けて朝9時にE-3008で京都を出発。この時間に出発するとほぼほぼ渋滞に遭うことなく東京まで走っていける。バッテリー残60%で京都を出て、湾岸長島PAで15分、静岡SAで10分間、急速充電した。いずれもトイレや軽食に要する休憩時間といったところで、所要時間はエンジン車と大差ない。比較的大きなバッテリーを積み、電気を吸う能力さえ高ければ、ほとんど不便はない。三田でE-3008を返却後、日本橋の「水戯庵」さんへ。能舞台を楽しみつつ、懐石ディナー。オーナー木村英智氏ほかと来年の「コンクール・デレガンツァ」について懇談。薬師寺と仁和寺で開催され、メインテーマは“ミッレミリアの100周年”と決まった。都内泊。
2026年8月28日(金)晴れのち曇り

朝から靖国神社を参拝。九段下で「トヨタ RAV4」をピックアップ。都内をうろうろ試乗。目黒通りのコレツィオーネまで走り、成瀬社長と雑談。いずれもマニュアルミッションの「モデナスパイダー」と「ガヤルドクーペ」があった。欲しい。今乗るならこの辺りのミッション・スーパーカーがちょうどいいと思う。夕刻、九段下へRAV4を返却。夜は目黒駅近くで渡辺敏史さん、吉田由美さんほかを交えてステーキ会食。都内泊。
2026 8/22〜2026 8/28
走行距離 約700km 試乗車数 2台
2025 11/1〜2026 8/28累計
走行距離 約4万8300km 試乗車台数 192台

