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実用性とスポーツ性を両立するシビック、タイトさを活かすGRヤリス




シビックタイプRは全長4595mm×全幅1890mm×全高1405mmというワイド&ローなプロポーションを持ちつつも、Cセグメントハッチ5ドアバックとして十分な室内スペースを確保している。
また、シートは専用のスポーツバケットタイプとなるが、高いホールド性を確保しながら乗降性にも配慮されており乗用車としての快適性も確保されている。
一方のGRヤリスは全長3995mm×全幅1805mm×全高1455mmというコンパクトな3ドア構成となっており、エクステリアデザインからもレーシングスピリットがにじみ出ている。ただし後席スペースはタイトで、あくまで補助的な位置づけとなる。総じて車内は日常的な4人乗車よりもドライバーに主眼を置いた設計だ。
荷室開口部も広いとはいえず、174Lの小さな荷室容量も相まって積載性という点では限定的なユースを想定した作りとなっている。そのぶん、軽量化や剛性確保に注力されており、ドライビングに特化したパッケージであるといえる。
ホンダ シビックタイプR RACING BLACK Package
ボディサイズ=全長4595mm×全幅1890mm×全高1405mm
ホイールベース=2735mm
車両重量=1430kg
タイヤサイズ=265/30ZR19(前後)
トヨタ GRヤリス RZ ハイパフォーマンス
ボディサイズ=全長3995mm×全幅1805mm×全高1455mm
ホイールベース=2560mm車両重量=1300kg
タイヤサイズ=225/40ZR18(前後)
排気量とトルクが生むパフォーマンスの違い、求める走りに応じた選択


シビックタイプRは、低回転域からのトルクの太さと高回転まで伸びるパワー特性が特徴で、前輪駆動車としては驚異的な加速性能を誇る。さらに、前輪駆動とは思えない接地性とコントロール性を備えており、サーキット走行からワインディングまで対応する懐の広さも特徴だ。
一方のGRヤリスは、排気量ではシビックに劣るものの、専用設計のターボチャージャーや吸排気系の最適化により、コンパクトなエンジンながらパンチの効いた加速を実現している。
また「GR-FOUR」と呼ばれる4WDシステムの存在が、トラクション性能とコーナリング安定性を引き上げており、滑りやすい路面やハードなブレーキング時の安心感につながる。
つまり、前輪駆動のシビックがドライバーの操作に対する応答性を楽しむクルマであるのに対し、GRヤリスはラリー由来の制御技術による、高い安定性を活かした速さが武器だ。
なお、燃費性能はWLTCモードでシビックタイプRが12.5km/L、GRヤリスが10.8km/Lとなっており、実用性の観点では総じてシビックタイプRに軍配が上がりそうだ。
ホンダ シビックタイプR RACING BLACK Package
エンジン形式=直列4気筒ガソリンターボエンジン
排気量=1995cc
最高出力=330ps/6500rpm
最大トルク=420Nm/2600〜4000rpm
トランスミッション=6MT
駆動方式=2WD(FF)
トヨタ GRヤリス RZ ハイパフォーマンス
エンジン形式=直列3気筒ガソリンターボエンジン
排気量=1618cc
最高出力=304ps/6500rpm
最大トルク=400Nm/3250〜4600rpm
トランスミッション=8AT
駆動方式=4WD
価格に見合う価値をどう見るか、上位グレードならではの魅力


シビックタイプRに新しく追加された「レーシングブラックパッケージ」の価格は599万8300円に設定されおり、通常のタイプR(499万7300円)と比較すると、およそ100万円高となる。
レーシングブラックパッケージは内装全体を黒で統一することで、よりドライビングに集中しやすい環境に整えられた仕様だ。その他の機能面に違いないため、サーキットアタックをする場合や、より引き締まった室内空間を求めるなら選ぶ利点がある。
一方、GRヤリスの「RZ ハイパフォーマンス」は533万円だ。ベースグレードであるRZ(483万円)に対して50万円の差がある代わりに、トルセンLSDや専用チューンのサスペンション、BBS製鍛造アルミホイールなどが追加される。
両車ともに高性能な上級グレードであり、走りに対するこだわりが強い層に向けた構成といえるだろう。性能と価格のバランスをどう評価するかはユーザーの志向や用途によって大きく分かれる。
スポーツ走行用と割り切るならドライビングスタイルや好みで選ぶとよいだろう。1台で日常的な用途もこなすなら、車内が広く燃費もよいシビックタイプRという選び方がひとつの指標になりそうだ。