「ミニランクル」ことランドクルーザーFJを予想してみる。本当に出たら大ヒット間違いないでしょ!

2023年8月に開催されたランドクルーザー250発表会の会場で流されたムービーに、正体不明のSUVのシルエットが映し出された。これがランドクルーザーFJなのか!?
70/250/300のいずれもが高い人気を集めているランドクルーザー・シリーズだが、そう遠くない未来に、新たな兄弟が加わるかもしれない。より身近なサイズをもつランドクルーザーFJの登場が、まことしやかに囁かれているのだ。現段階ではあくまでも憶測に過ぎないが、周辺情報からランクルFJの姿を予想してみた。

シャシーはハイラックスチャンプ? エンジンは2.7Lガソリン?

日本がようやく戦争の傷を癒し始めた1950年代半ば、トヨタは海外戦略への足がかりとして、まずは北米へと進出した。トヨタが初の海外戦略に投入にしたのは初代「クラウン(RS)」だったが、残念ながらパワー不足や信頼性不足から受け入れられなかった。落胆するトヨタを救ったのは、現在も同社の金看板となっている「ランドクルーザー(以下ランクル)」だったのである。

ランドクルーザー20系

当時、北米に輸出されていたランクルは2代目の20系で、エンジンは直列6気筒ガソリンユニットのF型。クラウンRSの排気量がわずか1500ccしかなかったのに対して、F型は3900ccという大排気量エンジンだった。元々このエンジンは、北米で汎用エンジンだったシボレーの直6ユニットを参考にしてつくったものであったため、フィーリング的にアメリカ市場にすんなり受け入れられたと言われている。

しかし、何よりもアメリカ人を感嘆させたのは、その信頼性の高さだ。様々な気候環境を抱えるアメリカの国土の中で、ほとんどノーメインテナンスで走り続けられる日本の四輪駆動車のタフさが評価され、やがて口コミで全土に広がっていったのである。

この北米での成功がきっかけとなり、トヨタはランドクルーザーの世界への輸出を開始する。そして1960年に世界戦略車としてデビューさせたのが、「ランドクルーザー40系」だ。20系の雰囲気を残しつつも、より洗練されたボディフォルムに変更。品質もさらに向上し、“日本車無故障伝説”の先駆となった。

40系は商用車の主な燃料が軽油だった日本やオーストラリアなどでは、ディーゼルエンジンを搭載したBJが主流だったが、ガソリンが主流の北米にはF型エンジンを搭載したFJが輸出された。BJとFJは外観が異なり、BJはヘッドライト脇が四角いグリルが装着されていたが、FJは丸形(オーバルグリル)。これがFJのアイコンとなったのである。

ランドクルーザーBJ40系
ランドクルーザーFJ40系

この時代のアメリカはファミリーでキャンプに出かけるのがムーブメントとなり、この市場に対応したステーションワゴン55/56型がデビュー。そのファニーなマスクデザインから、“ムース(ヘラジカ)”の愛称で人気となった。しかし、イカついデザインでラフに使えるFJ40、そしてその派生モデルがアメリカンには人気が高かったのである。

ランドクルーザー50系

40系は84年に70系へとスイッチするが、その後も北米では40系の人気が続いた。残念ながら日本ではNOX法の影響で多くの40系が消えたが、アメリカではレストアされたパーツによって多くの40系が現役で走っている。映画俳優のトム・クルーズの愛車がエンジンをV8にスワップしたFJ40であり、近年売りに出されたことも記憶に新しい。

ランドクルーザー70系

日本のファンの間でも「FJ40」は特別なモデルだ。F型エンジンを搭載したFJ40、FJ43、FJ45Vなどは現在では非常に希少であり、ランクル好事家の間では伝説のモデルとなっている。

40系の生産が終了してから久しい2003年、デトロイトモーターショーにおいて突如、ネオクラシックの4WD「レトロクルーザー」が発表された。これが後の2006年から北米で販売が開始された「FJクルーザー」に発展する。同モデルは、「ランドクルーザープラド(120系)」や「ハイラックスサーフ」と多くの部品を共用していた。

FJクルーザー

デザインはFJ40を強く意識したもので、オーバルグリルと2トーンボディカラーはまさしくそのオマージュだった。また、サイドドアに観音開き式を採用するなど、各部に往年の名車のDNAを強く感じさせるものであった。駆動方式がユニークで、5MTはフルタイム4WD、4ATがパートタイム4WDという少々変則的なものだったのも同モデルの特徴と言える。

未導入だった日本では並行輸入車が販売され、これが大人気に。この状況を受けて、2010年からようやく日本でも購入できるようになったのである。結局、2018年まで8年にわたって販売され続け、3万台弱という販売台数を記録した。

FJクルーザーが人気を博したのは、デザインだけではなく、サイズ感も要因に挙げられる。日本市場では、ショートホイールベースのクロスカントリー4WDが不在の状況の中で、ロングホイールベースモデルほど大きくないFJクルーザーは、“それほど小さくはないが、まあ無駄のない大きさ”とユーザーに思わせたことが成功のファクターだったと言っていい。

2017年にニューヨークで発表されたコンセプトカー「FT-4X」や、2021年に“EVに関する新戦略発表会”の中でお披露目された「コンパクトクルーザーEV」は、まさにFJクルーザーと同じネオクラシック路線を継承したクルマだ。サイズはランドクルーザー300や250、そして70に比べるとかなりコンパクトで、長年一般ユース向けには“欠番”状態になっているショートホイールベースのランドクルーザーのラインナップを補完するものだと見られてきた。

FT-4X
コンパクトクルーザーEV

そんな中、2023年頃から巷でその存在が囁かれ始めたのが、“ランドクルーザーミニ”だ。FJクルーザーの後継モデルは長年噂の域を出なかったが、2023年に行われたランドクルーザー250のワールドプレミアの会場で、その紹介映像に謎のコンパクトサイズモデルが映っていたことから一気に現実味を帯びた。さらに同年11月にトヨタが「ランドクルーザーFJ」の名を商標登録したことで、実現性が見えてきたのである。

発表された映像はサイドのシルエットであり、そこから多くをくみ取ることはでない。だが、まずサイドフォルムはコンパクトクルーザーEVよりも、FJクルーザーに近いものだ。ルーフはリヤでスラントしている。ドアは5枚で、250系と比べると全長がかなり短いように見える。

ランドクルーザー250の発表会場で、スピーチをするサイモン ハンフリーズさん(チーフブランディングオフィサー)。注目は後ろのスクリーンの向かって左側。暗い影で詳細な姿はわからないが、これがランドクルーザーFJだと思われる。

このシルエットから、様々な媒体がその姿を予想CGで見せているが、個人的には2024年2月9日に『クリッカー』に掲載されたものが、一番近いのではないかと思っている。というのも、トヨタは新型車に“FJ”の名を冠すると思われるわけで、これは間違いなくFJ40へのオマージュである。ということは、ヘッドライトは丸目で、どこかにオーバルグリルを思わせる意匠を入れてくるのではないだろうか。もちろん、グリルにはTOYOTAの文字が入るだろう。

トヨタはすでに、コンパクトクルーザーEVを彷彿させるデザインの「IMV 0」、いわゆる「ハイラックス チャンプ」などの名前で東南アジアに流通させている。一説によれば、ランドクルーザーFJはこのシャシーを共用しているとも言われているが、真偽は定かではない。しかし、様々なボディバリエーションをもつ70系のシャシーを使うというのは、やはり今更感が拭えない。

IMV 0

エンジンは2.7Lガソリンで、価格は300万円台に納まるのでは!?…という噂が出ているが、定かではない。しかし、もしこれが現実ならスズキ「ジムニーノマド」に迫る大ヒットになりそうだ。250系ではオーバーサイズだし、価格も高すぎる…と思っているランクルユーザー予備軍は多いはずだ。

いずれにせよ、ランクルとFJのふたつの名前を冠する以上は、トヨタもデキに相当な自信がありそうである。ランクルファンにとっては楽しみな1台になるのではないだろうか。

シルエットはランクル250に似たスクエアなものだが、サイズはだいぶ小さいように見える。本当にランドクルーザーFJとしてデビューすれば、ヒット間違いなしだが…。

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著者プロフィール

山崎友貴 近影

山崎友貴

SUV生活研究家、フリーエディター。スキー専門誌、四輪駆動車誌編集部を経て独立し、多ジャンルの雑誌・書…