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ティグアンはVWのベストセラーカー

2019年以降、世界で最も売れているフォルクスワーゲンが「ティグアン」だ。そしてその第3世代となるモデルが、このたび2016年以来のフルモデルチェンジを果たした。日本ではその手頃なサイズや価格設定からひとまわり小さな「T-Roc」と、さらに小柄な「T-Cross」がここ数年輸入SUVカテゴリーの人気を二分していたが、遂に真打ちが登場したわけである。
そんなティグアンのグレード分けは、従来通りベーシックグレードが「アクティブ」となる。対して上級モデルは「エレガンス」と「R-Line」が、装備の関係で価格こそ異なるが、ヒエラルキー的には横並びの扱いとなった。


パワーユニットは、各グレードに1.5L直列4気筒ターボベースのマイルドハイブリッド「eTSI」(150PS/250Nm)と、2.0直列4気筒TDIディーゼルターボ「TDI」(193PS/400Nm)が用意される。トランスミッションは全車が7速DSG(DCT)で、駆動方式は「eTSI」が前輪駆動(FF)、「TDI」が四輪駆動(4WD)の「4MOTION」となる。そして本国では、プラグインハイブリッドが既に発表されている。

サイズは維持しつつボリューム感と空力性能をアップしたデザイン
その見た目は、まずボリューム感が増した。
先代モデルはボンネットの4本線をはじめ、キャラクターラインと面構成でソリッドさを際立たせるデザインだったが、現行モデルはボンネット高を高め、先端に緩やかなRを付けることでSUVらしさを演出した(Cd値も0.33から0.28へと向上)。

また3本線の水平基調だったグリルをLEDで一本化し、デイライトと一色線につなげ、“への字”だったバンパー開口部を大きく開くことで、クールだった表情に温かみが出た。
スリーサイズ的には全長が4545mmと、今回試乗した「エレガンス」で先代モデル30mm大きくなった(「R-Line」は25mm)。

( )内は「R-Line」
対して全幅はエレガンスで1840mm、R-Lineで1860mmと先代と変わらず。全高は25mm高くなり、1655mmとなった。ホイールベースが2680mmと先代の2675mmからさして変わらないことから見ても、まだフォルクスワーゲンはこのティグアンに大幅なサイズアップが必要だとは思わなかったようだ。

最大値よりも通常時の容量と使い勝手を高めたラゲッジルーム
ちなみに荷室容量も652Lと、先代比で37L容量がアップしている。しかしながらシートを倒したときの容量は、リヤシートの厚みを増やした分だけ減った。先代は1780Lあったが、現行モデルは先代パサート・ヴァリアント(1650L)とほぼ同等だという。
センターディスプレイは15インチの大画面!

運転席に乗り込むと、まず現代的なインテリアが目に飛び込んで来る。その主役となるのは、15インチの巨大なディスプレイ“Discover Pro MaX”だ。また運転席のメーター“Digital Cockpit Pro”(10.25インチ)も、メーターフードレスなパネルタイプとなった。
15インチディスプレイは初見だと、ただただその大きさに圧倒されるばかりだ。しかし実際に使い込んで行くと、マルチタスク時の使い勝手に納得が行った。たとえばオーディオなど他のアプリケーションを操作するときも、いちいちナビ画面が閉じないからストレスフリーだ。

逆にちょっとストレスを感じたのは、ID.4タイプの新型シフトレバー(ダイヤルか?)。最新世代は全てこの方式にシフトしているが、前に回しててD/Sレンジ、手前に回してN/Rレンジという順序が(先端のボタンを押してPレンジ)、シフトレバーとは逆になるからなりやりにくい。慣れればよいとも言えるが、思わず発進でリバースに入れてしまうことも何度かあって、個人的にはまったく馴染めなかった。

進化と熟成が感じられる足まわりによるしなやかな走り

ユーザーインターフェイスではまだ色々手探りなティグアンだが、走りはかなり成熟している。
試乗車であるeTSIエレガンスには、プログレッシブステアリングと可変制御ダンパー“DCC Pro”の設定がない。しかしタイヤが235/55R18サイズとなっているため、エアボリュームが得られてまず乗り心地が良い。足まわりの追従性も、かなりしなやかだ。

高速巡航時の足さばきも同様に柔軟で、バネ下のタイヤを積極的に動かしながらフラットライドを保持してくれる。かつ120km/h付近になると、その動きが一気にまとまりを帯びてくる。

固定式のダンパーと、いたってベーシックなステアフィール。にもかかわらず速度を上げるほど動きに一体感が出てくるのは、電動パワステやダンパーの基本セッティング、バネレートの選択、ジオメトリーといったシャシーの要素が熟成されて切っているからだろう。そしてこれこそが、「MQB evo」となったプラットフォームの実力なのかもしれない。明らかに良くなったとは感じないのだが、じわりと何かが進化している。

ちなみにDCC Proとプログレッシブステアリング、そして20インチタイヤを装着した「R-Line」は、よりそのコーナリング限界が高くてスポーティなキャラクターとなっている。

街中だと路面の起伏で若干横揺れを感じるが、255幅の40扁平で2インチサイズアップしたタイヤをよく押さえ込み、乗り心地もしっとり上質で、どっしり頼もしい。
eTSIなら「エレガンス」がマッチする
とはいえ1.5eTSIには、筆者は「エレガンス」の方が合っていると感じた。なぜならこのベルトドライブ式スターターモーターを組み合わせた1.5L直列4気筒ターボは、とても実直なユニットだからだ。

48Vマイルドハイブリッド故に、たとえばパサートeHybrid(プラグインハイブリッド)のようにシルキーなモーターライドは得られない。アクセルを踏み込めば、ゼロスタートや合流加速でエンジンは“ブーン”と回る。
しかしそのサウンドはきれいに調っており、1600kgに抑えられたボディを極めてまじめに引っ張る。そしていつの間にかACT(アクティブシリンダーマネジメント)が、2気筒を休止させて静かにタイヤを転がしている。
要するに、グイグイ走るよりも普通に走ってこそ、その清廉さを理解できると思うのだ。

ベースグレード「アクティブ」でこそ生きる生真面目さ
そして次なる導入が待たれる2.0TDIやプラグインハイブリッド(こちらの目処は立っていないようだが)にこそ、車重が重たくなる分も含めて、「R-Line」の組み合わせが合うのではないか。もっといえば、DCC Proのダンパー制御が生きると感じた。

極論すればその生真面目さは今回試乗できなかったベーシックモデル「アクティブ」にこそフィットするような気もするが、そこにフロントカメラと連動した「IQ.LIGHT HD」やリラクゼーション機能付きシート、シートヒーターといった装備をちょっと贅沢に盛ってしまうと、選択肢が「エレガンス」になるというわけである。
メーカー | フォルクスワーゲン | |
車名 | ティグアン | |
グレード | eTSIエレガンス | TDI 4MOTIONエレガンス |
全長 | 4545mm | |
全幅 | 1840mm | |
全高 | 1655mm | |
ホイールベース | 2680mm | |
車重 | 1600kg | 1750kg |
最低地上高 | ー | |
最小回転半径 | 5.4m | |
乗車定員 | 5名 | |
トランク容量 | 652〜1650L | |
エンジン | DXD型 水冷直列4気筒DOHCインタークーラーターボ | DXN型 水冷直列4気筒ディーゼルターボ |
排気量 | 1497cc | 1968cc |
最高出力 | 150ps/5000-6000rpm | 193ps/3500-4200rpm |
最大トルク | 250Nm/1500-4000rpm | 400Nm/1750-3250rpm |
燃料/タンク容量 | ハイオク/60L | 軽油/61L |
WLTC燃費 | 15.6km/L | 15.1km/L |
サスペンション | F:マクファーソンストラット R: 4リンク | |
ブレーキ | F:ベンチレーテッドディスク R:ディスク | |
タイヤサイズ | 235/55R18 | |
駆動方式 | FF | 4WD |
トランスミッション | 7速DCT | |
モーター | 4452 | ー |
最高出力 | 13.5kW | ー |
最大トルク | 56Nm | ー |
総電圧 | 44V | ー |
価格 | 547万円 | 621万8000円 |
フォトギャラリー:ティグアンeTSIエレガンス





















































