じつは世界で今一番売れているVW!? マイルドハイブリッド初採用の新型ティグアンってどうなの?人気ミドルSUVの実力をチェック!

世界で最も売れているフォルクスワーゲン(以下、VW)が「ティグアン」だ。2016年以来となるフルモデルチェンジで第3世代となった新型ティグアン、その走りを山田弘樹が確かめる。
REPORT:山田弘樹(YAMADA Kouki) CAPTION:MotorFan.jp PHOTO:MotorFan.jp/VW

ティグアンはVWのベストセラーカー

2019年以降、世界で最も売れているフォルクスワーゲンが「ティグアン」だ。そしてその第3世代となるモデルが、このたび2016年以来のフルモデルチェンジを果たした。日本ではその手頃なサイズや価格設定からひとまわり小さな「T-Roc」と、さらに小柄な「T-Cross」がここ数年輸入SUVカテゴリーの人気を二分していたが、遂に真打ちが登場したわけである。

T-Roc
T-Cross

そんなティグアンのグレード分けは、従来通りベーシックグレードが「アクティブ」となる。対して上級モデルは「エレガンス」と「R-Line」が、装備の関係で価格こそ異なるが、ヒエラルキー的には横並びの扱いとなった。

ティグアンeTSIエレガンス
ティグアン「R-Line」

パワーユニットは、各グレードに1.5L直列4気筒ターボベースのマイルドハイブリッド「eTSI」(150PS/250Nm)と、2.0直列4気筒TDIディーゼルターボ「TDI」(193PS/400Nm)が用意される。トランスミッションは全車が7速DSG(DCT)で、駆動方式は「eTSI」が前輪駆動(FF)、「TDI」が四輪駆動(4WD)の「4MOTION」となる。そして本国では、プラグインハイブリッドが既に発表されている。

ティグアンeTSIエレガンス

サイズは維持しつつボリューム感と空力性能をアップしたデザイン

その見た目は、まずボリューム感が増した。
先代モデルはボンネットの4本線をはじめ、キャラクターラインと面構成でソリッドさを際立たせるデザインだったが、現行モデルはボンネット高を高め、先端に緩やかなRを付けることでSUVらしさを演出した(Cd値も0.33から0.28へと向上)。

ティグアンeTSIエレガンス

また3本線の水平基調だったグリルをLEDで一本化し、デイライトと一色線につなげ、“への字”だったバンパー開口部を大きく開くことで、クールだった表情に温かみが出た。

ティグアンeTSIエレガンスのフロントマスク。
バンパー内には可動式のシャッターが見える。

スリーサイズ的には全長が4545mmと、今回試乗した「エレガンス」で先代モデル30mm大きくなった(「R-Line」は25mm)。

ティグアン「エレガンス」のボディサイズは全長4545mm(4540mm)×全幅1840mm(1860mm)×全高1655mm。ホイールベースは2680mm。
( )内は「R-Line」

対して全幅はエレガンスで1840mm、R-Lineで1860mmと先代と変わらず。全高は25mm高くなり、1655mmとなった。ホイールベースが2680mmと先代の2675mmからさして変わらないことから見ても、まだフォルクスワーゲンはこのティグアンに大幅なサイズアップが必要だとは思わなかったようだ。

ティグアンeTSIエレガンス

最大値よりも通常時の容量と使い勝手を高めたラゲッジルーム

ちなみに荷室容量も652Lと、先代比で37L容量がアップしている。しかしながらシートを倒したときの容量は、リヤシートの厚みを増やした分だけ減った。先代は1780Lあったが、現行モデルは先代パサート・ヴァリアント(1650L)とほぼ同等だという。

ラゲッジルーム容量は通常時で652Lと大容量を確保。
拡大時は先代からは減少したものの1650Lは十分以上。リヤシートは4対2対4分割。
ラゲッジルームにはDC12V電源を用意。
加えてAC100V/150Wのコンセントも。
電動パワーゲートを装備。停止表示機材はリヤゲート内側に。
取材車両には荷掛けネットも搭載されていた。
パンク修理キットではなくテンパータイヤを装備。

センターディスプレイは15インチの大画面!

ティグアンeTSIエレガンスのコックピット。

運転席に乗り込むと、まず現代的なインテリアが目に飛び込んで来る。その主役となるのは、15インチの巨大なディスプレイ“Discover Pro MaX”だ。また運転席のメーター“Digital Cockpit Pro”(10.25インチ)も、メーターフードレスなパネルタイプとなった。

Discover Pro MaXの15インチモニター。
Digital Cockpit Proのメーター表示。

15インチディスプレイは初見だと、ただただその大きさに圧倒されるばかりだ。しかし実際に使い込んで行くと、マルチタスク時の使い勝手に納得が行った。たとえばオーディオなど他のアプリケーションを操作するときも、いちいちナビ画面が閉じないからストレスフリーだ。

インストゥルメントパネルやセンタコンソールは15インチディスプレイも含めややドライバー側に向いており、運転席は気持ち包まれ感のあるレイアウトになっている。
アラウンドビューカメラ”Area Viewr”の画面。
エアコンのインターフェースは常時表示され、温度設定はディスプレイ下のタッチパネルで行う。

逆にちょっとストレスを感じたのは、ID.4タイプの新型シフトレバー(ダイヤルか?)。最新世代は全てこの方式にシフトしているが、前に回しててD/Sレンジ、手前に回してN/Rレンジという順序が(先端のボタンを押してPレンジ)、シフトレバーとは逆になるからなりやりにくい。慣れればよいとも言えるが、思わず発進でリバースに入れてしまうことも何度かあって、個人的にはまったく馴染めなかった。

ステアリングコラムの右側のレバーがシフトレバー。「D(S)」「N」「R」は前後に捻る、「P」は先端のスイッチを押す、という操作。
左側のワイパーやライトのインターフェースもやや独特。
ライト関係はダッシュボードの右下にも配置されていた。
センターコンソールにはスタート/ストップスイッチ、パーキングスイッチのほか、中央には音声認識のスイッチを配置。
センターコンソール奥のトレイは入れは可動式の2段型で、下段にはUSBタイプCソケットとワイヤレス充電が2つずつ用意されている。

進化と熟成が感じられる足まわりによるしなやかな走り

ティグアンeTSIエレガンス

ユーザーインターフェイスではまだ色々手探りなティグアンだが、走りはかなり成熟している。
試乗車であるeTSIエレガンスには、プログレッシブステアリングと可変制御ダンパー“DCC Pro”の設定がない。しかしタイヤが235/55R18サイズとなっているため、エアボリュームが得られてまず乗り心地が良い。足まわりの追従性も、かなりしなやかだ。

ティグアンeTSIエレガンスは18インチホイール+235/55R18サイズのタイヤを装着。取材車両のタイヤはハンコックVentus EVO SUVを装着していた。

高速巡航時の足さばきも同様に柔軟で、バネ下のタイヤを積極的に動かしながらフラットライドを保持してくれる。かつ120km/h付近になると、その動きが一気にまとまりを帯びてくる。

ティグアンeTSIエレガンス

固定式のダンパーと、いたってベーシックなステアフィール。にもかかわらず速度を上げるほど動きに一体感が出てくるのは、電動パワステやダンパーの基本セッティング、バネレートの選択、ジオメトリーといったシャシーの要素が熟成されて切っているからだろう。そしてこれこそが、「MQB evo」となったプラットフォームの実力なのかもしれない。明らかに良くなったとは感じないのだが、じわりと何かが進化している。

ティグアンeTSIエレガンスのリヤサスペンション。

ちなみにDCC Proとプログレッシブステアリング、そして20インチタイヤを装着した「R-Line」は、よりそのコーナリング限界が高くてスポーティなキャラクターとなっている。

「R-Line」は20インチの大径ホイールに255/40R20サイズのタイヤを装着する。

街中だと路面の起伏で若干横揺れを感じるが、255幅の40扁平で2インチサイズアップしたタイヤをよく押さえ込み、乗り心地もしっとり上質で、どっしり頼もしい。

eTSIなら「エレガンス」がマッチする

とはいえ1.5eTSIには、筆者は「エレガンス」の方が合っていると感じた。なぜならこのベルトドライブ式スターターモーターを組み合わせた1.5L直列4気筒ターボは、とても実直なユニットだからだ。

ティグアンeTSIエレガンスのエンジンルーム。1.5L水冷直列4気筒DOHCインタークーラーターボエンジンは150ps/5000-6000rpm・250Nm/1500-4000rpmの出力を発揮。これにモーターの13.5kW・56Nmが加わる。

48Vマイルドハイブリッド故に、たとえばパサートeHybrid(プラグインハイブリッド)のようにシルキーなモーターライドは得られない。アクセルを踏み込めば、ゼロスタートや合流加速でエンジンは“ブーン”と回る。

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しかしそのサウンドはきれいに調っており、1600kgに抑えられたボディを極めてまじめに引っ張る。そしていつの間にかACT(アクティブシリンダーマネジメント)が、2気筒を休止させて静かにタイヤを転がしている。
要するに、グイグイ走るよりも普通に走ってこそ、その清廉さを理解できると思うのだ。

ティグアンeTSIエレガンス

ベースグレード「アクティブ」でこそ生きる生真面目さ

そして次なる導入が待たれる2.0TDIやプラグインハイブリッド(こちらの目処は立っていないようだが)にこそ、車重が重たくなる分も含めて、「R-Line」の組み合わせが合うのではないか。もっといえば、DCC Proのダンパー制御が生きると感じた。

ティグアンeTSIエレガンスをドライブする筆者。

極論すればその生真面目さは今回試乗できなかったベーシックモデル「アクティブ」にこそフィットするような気もするが、そこにフロントカメラと連動した「IQ.LIGHT HD」やリラクゼーション機能付きシート、シートヒーターといった装備をちょっと贅沢に盛ってしまうと、選択肢が「エレガンス」になるというわけである。

IQ.LIGHTを採用するヘッドライトベゼル内は3眼式。
テールランプベゼルにもIQ.LIGHTのロゴが入る。
フロントシート。「エレガンス」はスポーツコンフォートシート。シートヒーターは全席標準装備だが、フロントシートベンチレーションは「レザーシートパッケージ」のみ。
リヤシート。「エレガンス」のシートはマイクロフリース生地。センターコンソールボックス後端に後席用エアコンとシートヒーター、USBタイプC電源が配置されている。
「エレガンス」「R-Line」のフロントシートにはリラクゼーション機能も標準装備。
マッサージのパターンは3つ設定されている。
メーカーフォルクスワーゲン
車名ティグアン
グレードeTSIエレガンスTDI 4MOTIONエレガンス
全長4545mm
全幅1840mm
全高1655mm
ホイールベース2680mm
車重1600kg1750kg
最低地上高
最小回転半径5.4m
乗車定員5名
トランク容量652〜1650L
エンジンDXD型
水冷直列4気筒DOHCインタークーラーターボ
DXN型
水冷直列4気筒ディーゼルターボ
排気量1497cc1968cc
最高出力150ps/5000-6000rpm193ps/3500-4200rpm
最大トルク250Nm/1500-4000rpm400Nm/1750-3250rpm
燃料/タンク容量ハイオク/60L軽油/61L
WLTC燃費15.6km/L15.1km/L
サスペンションF:マクファーソンストラット
R: 4リンク
ブレーキF:ベンチレーテッドディスク
R:ディスク
タイヤサイズ235/55R18
駆動方式FF4WD
トランスミッション7速DCT
モーター4452
最高出力13.5kW
最大トルク56Nm
総電圧44V
価格547万円621万8000円
ティグアン「エレガンス」諸元表

フォトギャラリー:ティグアンeTSIエレガンス

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著者プロフィール

山田弘樹 近影

山田弘樹

自動車雑誌の編集部員を経てフリーランスに。編集部在籍時代に「VW GTi CUP」でレースを経験し、その後は…