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■3列シート7人乗りSUV「エクシーガ・クロスオーバー7」

2015年(平成27)年4月16日、スバルからミニバン「エクシーガ」の後継モデルとして「エクシーガ・クロスオーバー7」がデビューした。ミニバンにSUVの魅力をプラスした“都市型SUV+多人数車”というコンセプトで、アクティブなライフスタイルを意識したユニークな3列シートのクロスオーバーSUVである。

7人乗りミニバンだがミニバンを名乗らなかったエクシーガ
クロスオーバー7の先代であるエクシーガは2008年にデビューした。ミニバンブームの真っ盛りの中、スバルが満を持して送り出したのが、あえてミニバンとは言わずに“多人数乗用車”と称したエクシーガだ。

“7シーター・パノラマ・ツーリング”をコンセプトとし、「レガシィツーリングワゴン」よりひと回り大きいボディに、7人(2+3+2)乗りの3列シートを配備した広い室内空間を確保。パワートレインは、2.0L水平対向DOHCエンジンと4速AT、同ターボエンジンには5速ATが組み合わされ、駆動方式はシンメトリカル4WD でNA仕様にはFFも用意された。

ミニバンでありながら、スバルらしさをアピールしたエクシーガだったが、期待したほどの存在感を発揮することはできなかった。当時すでに時代遅れとなりつつあった背の低いミニバンであり、さらにヒンジドアであったことがミニバンブームに上手く乗り切れなかった原因だった。
人気回復のためにクロスオーバーSUVへ方向転換したクロスオーバー7
エクシーガの人気が低迷する中で、2015年にエクシーガの後継モデルとして登場したのが、エクシーガ・クロスオーバー7である。


クロスオーバー7の基本コンセプトは、多様なライフスタイルを意識した“都市型SUV+多人数車“である。そのため、専用サスペンションの採用によって最低地上高を170mm確保、全長を10mm延ばし全幅は25mm拡大するなどSUVらしさが演出された。

3列シートは、フロントからリアに向かって座席が高くなるシアターシートスタイルを採用して快適性を向上。パワートレインは、最高出力173ps/最大トルク24.0kgmを発揮する2.5L水平対向4気筒DOHCエンジンとCVTの組み合わせ、駆動方式はもちろんスバルが誇るシンメトリカルAWDが採用された。

一方で、先進運転技術「アイサイト(EyeSight)ver.2」を標準装備して、車両価格275.4万円で発売。クロスオーバー7は、当初こそSUVブームの後押しもあって先代エクシーガの販売不振を一時的に回復することはできたが、その後は人気のSUVの仲間入りはできず、2017年に生産を終えた。


中途半端な位置づけになりやすい3列シートSUV
ミニバンのエクシーガの後継がSUVのクロスオーバー7となった背景には、スバルがミニバンから撤退するという社内事情があった。マツダは、ミニバンからの撤退を決断して、それまでの「MPV」、「ビアンテ」、「プレマシー」のユーザーの受け皿として、「CX-5」の上に位置する3列シートのSUV「CX-8」をラインナップに加えた。スバルも、同様にミニバンから撤退すること決めて、エクシーガから3列シートのSUVへと切り換えたのだ。

マツダ・CX-8は、ミニバンの代替としてファミリーカー色の強いSUVであり、ヒットとは言えないまでも堅調な販売を続けた。一方のスバル・クロスオーバー7は、伝統の水平対向エンジン+シンメトリカルAWDを採用したスバルらしいアクティブなSUVのイメージがアピールポイントだった。


ただ、アクティブなSUVを求めるなら、2シーターながらレガシィ「アウトバック」がある(2023年に生産終了)。SUVに求められるには、どこでも走破できる実用性とユーティリティだが、3列シートのSUVでは多人数が楽しめるファミリー志向も必要となる。クロスオーバー7の3列シートのコンセプトが、ユーザーには中途半端で、伝わりにくかったのだろう。

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現在、売れ筋の2つのジャンルであるミニバンとSUVの1つ、ミニバンの市場から撤退したスバルとマツダ。莫大な開発リソースが必要とされる状況下では、中規模メーカーは“選択と集中“を徹底するしか生き残る道はないのだ。ミニバンではないが、用途がミニバンに近い3列シートのSUVは、中途半端になりやすいので市場の評価は得られなかったのかもしれない。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。