FF車では世界初の四輪ダブルウイッシュボーンサスを採用【第2回ホンダクラシックミーティング】
先日、奇跡の個体と表現したくなる初代アコードが参加していたことをお伝えしたイベント「第2回ホンダクラシックミーティング」。会場には50台ほどの歴代ホンダ車が展示されていたが、アコードは少数派のようで、前述の初代のほかは1台のみが参加していた。
けれど、その1台がリトラクタブルヘッドライトを採用した3代目、しかもホイール以外はノーマルを保っている個体で驚かされた。これはぜひとも紹介しなければとオーナーを直撃した!
掲載写真のナンバープレートからあえて「多摩53」の文字を消さなかったのは理由がある。お察しの方もいるだろう、このアコードは新車登録時からナンバーが変わっていないのだ。オーナーは62歳になる北久保清人さんで、案の定1オーナーで維持されてきたという。アコードは昭和61年生まれの1986年式。つまり36年間も所有されているのだ。
北久保さんは新車当時「なんとなく」アコードを選ばれたそうだが、36年も乗り続けたのだから深い愛情があるのだろう。それとも先日紹介した初代のように、アコードには長く乗っていたくなるこだわりの理由でもあるのだろうか。その点を聞いても「普通に良いクルマですよ」と謙遜されるだけ。そんなライトな受け答えのなかには、ご本人でなければ理解できない愛情が込められているのかもしれない。
3代目アコードが新車だった当時は、まだまだMT比率が高かった。けれどアコードを当時選ぶ人の大半がATを選んでいたように記憶している。それはDOHCエンジン以外にもSOHCや1.8リッターが存在したからで、走りよりスタイルや雰囲気を求められたからだろう。
北久保さんが選んだグレードは2.0Siで、当時の最上級モデルである2リッターDOHCエンジン搭載車。だからだろうか、トランスミッションは5速MTを選ばれている。もしATを選んでいたら、トラブルで乗り続けることは難しかったかもしれない。なんといってもこのアコードは23万kmを走破しているのだから。
これまでのところ、トラブルや故障は経験されていないという。乗り方が左右するところではあるが、20万km超の間ノートラブルとは信じがたい。けれど、距離を感じさせない内外装の程度の良さから、いかに深い愛情を注がれているかが想像できる。クルマもオーナーも幸せな時間を過ごされてきたことだろう。そんな北久保さんが最近になって見直したのがドアポケット。アームレストが貫通しているので、道路地図を写真のように挿して置けるのだ。
第2期ホンダF1エンジンを連想させるデザインのヘッドカバーを備えるB20A型エンジンは、これまで不具合を起こしたことがない優等生。2リッターの排気量から160psを発生するため、MTを駆使して走ることは何よりの楽しみだろう。
ところが困ったことが最近になって起こる。純正のタイヤサイズだ。185/70R13が採用されたが、今や軽自動車でさえ15インチを履くものが多く13インチタイヤは選べるような状況でなくなってしまったからだ。そのため仕方なく社外の14インチホイールに変更することとなった。ホイールだけ非純正なのは、このような理由からだった。
FFながら4輪ダブルウイッシュボーン式サスペンションを採用したりアンチロックブレーキシステム(A.L.B.)を設定するなど、先進的だった3代目アコード。再評価されていい名車である。