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歴代ロードスターで最高! 990S
現行ロードスターがデビューしたのは2015年。もう7年も経っているのだ。だが、その魅力はいっこうに色褪せない。というより、最新の990S、KPC(キネティック・ポスチャー・コントロール)の採用などで、さらに輝きを増している。
個人的な話で恐縮だが、20代の頃、NAロードスター(NA8C型1.8ℓモデル)を所有していた。手放したとき(プジョー306に乗り換えた)、「いつか、またロードスターを手に入れたい」と心に誓った。それから四半世紀が過ぎて、ロードスターがさらに素敵なクルマになって、まだ存在してくれている。
NA型ロードスターの乗り味にもっとも近いのが、現行型の「S」である。リヤのスタビライザー、LSDを装備しないのが、もっともベーシックなSグレードだ。これがいい。好みは人ぞれぞれで、RSがいいという人もいる。編集部周辺(というか、内部)にも、RSを購入したスタッフ、Navy Topを購入したスタッフがいる。
という長い前振りは置いておいて……マツダR&Dセンター横浜でロードスター990Sのキーを受け取った。ディープクリスタルブルーマイカのボディカラー、なかなかカッコいい。自分で買うなら「スノーフレイクホワイトパールマイカ」にしようと想っていたのだが、この色も素敵だ。3日間だが、自分のクルマだと想定して付き合ってみよう。
990Sは、もちろんマニュアルトランスミッションである。これがいい。ホンダ・シビックの6MTと並んで、シフト操作が楽しい屈指の6MTだ。筆者のようにNA型からの回帰を図ろうとしている人、MTは久しぶりの人でもまったく問題ない。MTの操作は自転車やスキーと同じで、一度身に着けてしまえば、何年も離れていてもすぐに感覚が戻るもの。「坂道発進がなぁ…」なんて思っている人には、最近のMTにはHLA(ヒル・ローンチ・アシスト)なる便利な機構がついていて、坂道でゆっくりクラッチ操作していても、ずり下がっていくようなことはないことを教えてあげよう。
トップを下ろしてオープンで走り出す。オープンカーのベストシーズンは冬だが、春ももちろん素晴らしい(花粉症でなければ、だと思うけど)。残念ながら借りだした日は夏のように暑い陽気であまりオープンカー日和ではなかったけれど、それでもやはりオープンは気持ちがいい。
ちなみに速度ごとのエンジン回転数はメーター読みで次の通りだ(6速で)。
80km/h巡航:2050rpm
100km/h巡航:2520rpm
110km/h巡航:2750rpm
120km/h巡航:3000rpm
ロードスターは、6速の変速比が1.000となっていて、いわゆるオーバードライブのギヤ段がない。それが一般道では使い勝手もよくて気持ちもいいのだが、高速道路ではどうしてもエンジン回転数が高くなりがちだ。その副産物として、スピードを出し過ぎることがない。速く気持ち良く走っているつもりでも、実際のスピードは低い(結果としてスピード違反を犯すことが少ない……と思う)。つくづくスピーツカーの魅力はスピードにあるのではなく、スピード感にあるのだということがわかる。
NA型と比較したら、ND型で不自由な点などほとんどない。990Sは、ナビゲーションシステムもないし、Apple CarPlay(もちろんAndroid Autoも)にも対応していない。BOSEサウンドシステムも付かない。けれど、さほど不自由は感じなかった。スーパーマーケットに日常の買い物をするくらいなら、トランクの容量は充分。できないことといったら、3人目を乗せることだけ、と言ってもいい。
軽さはなににもまして大事
ロードスターに乗っていると、「軽い」ことの有り難みがよくわかる。マツダのホームページを見たら、歴代ロードスターのサイズ比較が掲載されていた。
こうして見ると、やはりND型はNA型に近いことがわかる。ついでに、それぞれのパワーウェイトレシオを見てみると
NA型:7.83kg/ps
NB型:8.08kg/ps
NC型:6.53kg/ps
ND型:7.50kg/ps
となる。これまたちなみに、筆者乗っていたNA8C型は車重980kgで130psだったから7.53kg/psだった。ND型990Sとほぼ一緒だ。
借りだした翌日、早起きして房総半島の南へ少し走ってみた。トップを上げたり下ろしたり、のんびり流したりワインディングをちょっとだけ攻めてみたり(全然速いペースではないけれど)、どんなふうに走ってもロードスター990Sは楽しい。そして、燃費がいい。
3日間で258.7km走って、トータルの燃費は18.2km/ℓだった。燃料がハイオクなので、ちょっと割り引いて考えなくてはいけないが、それでも優れた燃費であることは間違いない。
ロードスターもいずれ電動化される…という人もいる。マツダは「2030年時点での生産における電動化比率は100%」と宣言している。となれば、次期NE型ロードスターはなんらかの電動化がされるのだろう。
現行ND型は、おそらく2025年くらいまで生産が続けられると予想する。990Sの公道試乗会で聞いた範囲では、モデルライフ中にエクステリアデザインが変更されることはなさそう(よかった!)。
マツダ開発陣がND型ロードスターをいかに軽く作るか、というところに、ものすごく注力したことはさまざまな取材を通して聞いてきた。グラム単位で軽量化した結果のひとつの好例が、この990Sなのだ。マイルドハイブリッドシステムを搭載しただけで、おそらく数十kgはすぐに重くなってしまうだろう。そうなれば、ND型990Sが持っている味わいは、きっと消えてなくなってしまう。
990Sのように、1トンを切る軽量さことが、もっともCO₂削減に効果があるのだ。実際の燃費もそうだが、使う材料が少なければ生産時に出るCO₂も少ない。リサイクルするにしても同じだろう。マツダのことだから、次期型でもなんらかの電動化を入れたうえで、1トンを切るライトウェイトなロードスターを開発してくれると思っているが、数年先のことはまったく見通せない(3ヵ月後だってまったくわからないのだから。これ以上ガソリン価格が上がったらどうしよう?)。
というわけで、現行NDロードスターの最終モデル(2025年モデルなのか2024年モデルかわからないけれど)を狙っている人、じつは結構いるのではないかと思っている。ライトウェイト、MT、オープン、自動運転もコネクテッドもなし。そんなスポーツカーが手頃な価格で手に入る時代が永遠に続くとは思えない。
僕もND型ロードスターの最終モデル、狙っています。
それまで、貯金とロードスターにスルリと乗り込める身体の柔軟性と反射神経をなんと維持していきたいと思っている。
■マツダ・ロードスター990S 全長×全幅×全高:3915mm×1735mm×1235mm ホイールベース:2310mm 車両重量:990kg エンジン形式:直列4気筒DOHC エンジン型式:P5-VP[RS]型 総排気量:1496cc ボア×ストローク:74.5mm×85.8mm 圧縮比:13.0 最高出力:97kW(132ps)/7000rpm 最大トルク:152Nm/4500rpm 燃料供給:筒内燃料直接噴射(DI) トランスミッション:6速MT サスペンション形式 前/後:ダブルウィッシュボーン/マルチリンク ブレーキ 前後:ベンチレーテッドディスク/ディスク タイヤサイズ:195/50R16 84V 乗車定員:2名 WLTCモード燃費:16.8km/L 市街地モード燃費:12.0km/L 郊外モード燃費:17.7km/L 高速道路モード燃費:19.5km/L 車両価格:289万3000円