トヨタGRヤリス・ラリー1の勝田貴元選手 WRC制覇が夢じゃない! 日本期待のドライバーはどんな選手?

篠塚健次郎以来となる、日本人によるWRC制覇を目指す勝田貴元選手
先週末、WRC(世界ラリー選手権)第3戦クロアチア・ラリーが開催され、日本から参戦した勝田貴元選手が6位でフィニッシュした。最新ラリーカー、トヨタGRヤリス・ラリー1をドライブする貴元選手は、WRCトップカテゴリー参戦4年目。いよいよ頂点が見えてきたドライバーのひとりだ。

三代続くラリー界のサラブレッド

貴元選手は、1993年3月17日生まれ、愛知県出身の29歳。彼の父親は、全日本ラリー選手権で9度のドライバーズタイトル獲得した勝田範彦選手、その祖父もまた内外のラリーで活躍した勝田照夫氏という、ラリー界のサラブレッドと言える存在である。そんなラリー一家に生まれながらも、当初貴元選手が選んだのはサーキット。11歳でカートデビューし、フォーミュラチャレンジ・ジャパン (FCJ) を経て、全日本F3選手権にまで到達している。

貴元選手に転機が訪れたのは、2015年。トヨタが立ち上げた若手ラリードライバー育成プログラム「TOYOTA GAZOO Racingラリーチャレンジプログラム」のオーディションに勝ち抜き、ラリードライバーに転向することを決めたのだ。以降、フィランドを拠点に、フィンランド選手権、WRCの下部カテゴリーとなるWRC2など、順調にステップアップ。2019年はついに当時のトップカテゴリー、トヨタ・ヤリスWRCドライブのチャンスを手にした。

クロアチア・ラリーで優勝したカッレ・ロバンペラ選手のように、10代で華々しくトップへと駆け抜けたドライバーと比べると、貴元選手の歩みは遅いと見えるかもしれない。しかし、フィンランドへ渡った当初は、幾度となくクラッシュを繰り返したものの、ラリー参戦経験を積み重ねるたびに、着実にスピードと安定性を身につけてきた。

第2戦スウェーデンでは4位。表彰台まであと少しだった。

2021年からは、ついにWRCトップカテゴリーへのフル参戦をスタート。トップドライバーたちを相手に、ベストタイムを刻むようにもなった。そして、第6戦サファリ・ラリーでは、チャンピオンドライバーのセバスチャン・オジエと首位争いを展開、自身WRC最上位となる2位を獲得した。このラリーでは自身のキャリア初となるラリーリーダーも経験したが、最後の最後で経験で勝るオジエに突き放されてしまった。それでも、1992年のアイボリーコーストにおける篠塚健次郎以来となる、日本人によるWRC制覇が、夢ではないことを日本のラリーファンに見せてくれたのである。

「2021年はとても良いシーズンになりました。一歩一歩着実に戦って、結果も徐々に良くなっていきました。サファリ・ラリーで初めて表彰台に上がりましたが、とても特別な気持ちでした。新時代のラリーカーで挑戦する2022年は、多くのことが変わります。僕たちがどこまでやれるのか、とてもワクワクしています」と、シーズン前に貴元選手は目標を明かしている。

第3戦クロアチアは6位。

ハイブリッドパワートレインを搭載するトヨタGRヤリス・ラリー1で、新たなシーズンをスタートさせた2022年。最終戦には12年ぶりのWRCラリージャパンも控えている。しかも、その舞台は勝手知ったる地元愛知。「長いシーズンで一歩ずつ経験を積み上げて、最終戦のラリージャパンを迎えたい」と、貴元選手は語る。さらに強さを増して迎える地元凱旋、日本のラリーファン悲願の瞬間が訪れるかもしれない。

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