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革新的なエンジンなのに……
革新的燃焼を実現した夢のエンジン、それがSKYACTIV Xだ。これに24Vマイルドハイブリッドシステム、M Hybridを組み合わせたのがe-SKYACTIV Xだ。
デビュー前から大きな話題となっていたSKYACTIV Xだが、販売は思ったほど伸びなかった。理由のひとつは、価格が高かったから。2019年12月のデビュー時の価格は、もっともプライスタグの軽いX Proactive(FF 6AT)で319万8148円だった。価格を並べてみると
X Proactive FF 6AT 319万8148円
ディーゼルの XD Proactive FF 6AT 279万0741円
SKYACTIV-G2.0の20S Proactive FF 6AT 251万5741円
だった。2.0ℓガソリンより68万2407円、1.8ℓディーゼルより40万7407円も高かったのだから、なかなか手が出せなかったのも頷ける。
ドライブすると、ガソリンともディーゼルとも違うフィールを味わえるし、燃費もちょっといい。なにより「革新的なエンジン」を手にする歓びがあった。が、いかんせん高価だった。
そんなわけで、個人的にMAZDA3のお勧めは1.5ℓ直4ガソリンエンジンを搭載した15Sだった。価格は222万1389円!
予算に余裕があって新しいモノ好きなら、e-SKYACTIV X搭載モデルがいい、という結論だった。
マツダはe-SKYACTIV X搭載モデルを「特別で」「高級な」ものとして売り出したわけだが(実際、高価なエンジンに24Vマイルドハイブリッドシステムを組み合わせているから高いのは当然なのだが)、ちょっと高すぎた。
高い割に190ps/240Nmのパワースペックは驚くほどではないし、燃費もフルハイブリッドには及ばない。
そんなわけで、思うように売れてこなかったe-SKYACTIV Xだが、現状を打開する仕様が2021年11月に追加された。
それが、X SMART EDITIONだ。
先に車両価格をお知らせしておく。
279万0741円だ。
ちなみに
トヨタ・カローラスポーツ ハイブリッドG 266万円
VWゴルフ eTSIアクティブベーシック 295万9000円
MAZDA3のe-SKYACTIV Xは充分以上に競争力がある。
これが一番いいかも
と能書きが長くなったが、X SMART EDITIONと5日間過ごしてみた。MAZDA3のデビューは2019年だから、すでに3年経っているわけだが、そのかっこよさ、新鮮さに衰えは一切ない。現行マツダ車のなかでロードスターとMAZDA3は別格のデザイン完成度をもっている。
X SMART EDITIONは、装備を少し省いて価格を抑えたモデルだ。省かれた装備は、例えば以下の通りだ。
・CTS(クルージング&トラフィックサポート)
・TSR(交通標識認識システム)
・前側方接近車両検知
・アダプティブLEDヘッドライト
アデプティブヘッドライト(X SMART EDITIONもLEDヘッドライト)はちょっと惜しいけれど、あとはなくてもさして困らない(実際、試乗中に気になったことはなかった)。
あとは、タイヤだ。これまでのe-SKYACTIV X搭載グレードは215/45R18サイズのタイヤを履いていたのに対してX SMART EDITIONは、205/60R16サイズのタイヤ(試乗車はヨコハマBluEarth-GT)になる。
これがいい! 見かけはちょっと弱々しい(個人的にはまったく気にならないけれど)が、乗り心地は18インチタイヤ装着車よりもゴツゴツ感がなくていい。首都高の継ぎ目もスッといなしてくれる。いつも乗り心地を試す場所(路面がいい感じに荒れている区間がある三浦半島の某所)でも、問題なし。
e-SKYACTIV Xのエンジンフィールは、やはりちょっと独特だ。24V M Hybridのおかげでアイドルストップからの再始動はスムーズ。回転フィールはガソリンエンジンとディーゼルエンジンの中間。アクセルを踏み込むと気持ち良く噴け上がる。表現は難しいが、気持ち良く噴け上がるが、「軽く」回るわけでなく、燃焼室で混合気が燃えてピストンを押し下げてクランクシャフトを回す様子が「濃密に」伝わってくるのがe-SKYACTIV Xの魅力なのだ。これは他のエンジンではちょっと味わえない。
通常のドライブなら100%、SPCCI燃焼でいける。ただし、最大トルクは240Nmだから、大トルクが湧き上がってくるわけではない。
240Nmといえば、2.4ℓ自然吸気エンジン並みとも言えるが、いまどきなら1.5ℓターボエンジン並みというほうがわかりやすいかもしれない。ちなみにVWゴルフの1.5ℓ直4ターボエンジンは250Nmだ(価格は376万円)。ターボエンジンの方が、やはり魅力がわかりやすい。踏んだらターボチャージャーのおかげでトルクが湧き上がってくる。e-SKYACTIV Xの魅力は、通好みといえる。
マツダR&Dセンター横浜から西新宿の編集部まで空いた首都高を流すと燃費は、21.2km/ℓとモニターに出ていた。なかなか良い。5日間で334.5km走って、トータルの燃費は16.4km/ℓだった。
WLTCモード燃費:17.4km/ℓ
市街地モード 13.9km/ℓ
郊外モード 18.3km/ℓ
高速道路モード 18.9km/ℓ
がカタログの燃費値だから、カタログ値の94.3%。ほぼ実力通りだ。この走りでこの燃費なら、と思うが、燃料はプレミアム推奨(レギュラーガソリンにも対応するが、パワー感も回転フィールもだいぶ変わってしまう)だから、その分は少し割り引いて考えないといけない。
MAZDA3のベストバイは、これまでエントリーグレードの15Sだと思ってきたが、今回の試乗で、こう変わった。
MAZDA3のベストバイは15SとX SMART EDITIONである。
e-SKYACTIV XとMAZDA3の魅力をもっとも手軽な価格で味わえるのが、X SMART EDITIONだ。欲を言えば、6MTがほしい(X SMART EDITIONは6ATのみ)。
X SMART EDITIONでe-SKYACTIV Xがお手頃になった=パワートレーンのコストダウンが進んだ……わけではないようだ。同じFFの「Black Tone Edition」同士で比べると
20S Black Tone Edition(6AT/6MT FF)256万3000円
XD Black Tone Edition(6AT/6MT FF)283万8000円
X Black Tone Edition(6AT/6MT FF)324万5000円
e-SKYACTIV XとD1.8の価格差は40万7000円
e-SKYACTIV XとG2.0の価格差は68万2000円と価格差は縮まってはいない。つまり、相変わらずe-SKYACTIV Xは高いのだ。D1.8と24V M Hybrid分だけの価格差になれば、「ディーゼルにする? e-SKYACTIV Xにする?」となって選択の範囲に入っている。つまり、ディーゼルとの価格差が10~15万円になれば、だいぶ風向きも変わってくるはずだ。
そのためには、もっとe-SKYACTIV Xが売れなくては。実際にドライブしてその魅力を体感するユーザーを増やしていくことが重要だ。
その役目を担うX SMART EDITIONの任務は重いのである。
MAZDA3 FASTBACK X SMART EDITION(FF 6AT) 全長×全幅×全高:4460mm×1795mm×1440mm ホイールベース:2725mm 車重:1430kg サスペンション:Fマクファーソンストラット式 Rトーションビーム式 エンジン形式:直列4気筒DOHC エンジン型式:HF-VPH型 排気量:1997cc ボア×ストローク:83.5mm×91.2mm 圧縮比:15.0 最高出力:190ps(140kW)/6000rpm 最大トルク:240Nm/4500rpm 過給機:スーパーチャージャー 燃料供給:筒内燃料直接噴射(DI) 使用燃料:プレミアム 燃料タンク容量:51ℓ モーター:MK型交流同期モーター モーター最高出力:6.5ps(4.8kW)/1000rpm モーター最大トルク:61Nm/100rpm WLTCモード燃費:17.4km/ℓ 市街地モード 13.9km/ℓ 郊外モード 18.3km/ℓ 高速道路モード 18.9km/ℓ 車両価格○279万0741円 op込み価格289万5241円(特別色5万5000円、スーパーUVカットガラス(フロント)IRカットガラス(フロント)+CD/DVDプレーヤー、地上デジタルTVチューナー 4万9500円