史上最高のGT-Rかもしれない……これが完成形? 日産GT-R T-spec

日産GT-R Premium Edition T-Spec
2021年秋に発表されたGT-R2022年モデルには特別仕様車の「NISSAN GT-R Premium edition T-spec」が設定されていた。すでに完売しているので、もう新車で購入することができないのが残念だが、ひょんなことから試乗する機会を得た。

15年かけて辿り着いた完成形

R35型GT-Rがデビューしたのは2007年。つまり15年も前のことだ。デビュー直後からいままで、何度となくGT-Rを試乗させていただいてきた(ただし、サーキット走行や攻めた走りはしていないけれど)。いつも、「日常生活におけるGT-R」を想定して(つまり、サーキットやワインディングではなく、普通の走り)試乗してきた。

15年経っても一線級の走りを披露できるのは、クルマの基礎が驚くほどしっかり出来ているからだろう。着実に進化してきたその最新版(にして最終版??)がT-specだ。

全長×全幅×全高:4710mm×1895mm×1370mmホイールベース:2780mm
車重:1760kg 前軸軸重970kg 後軸軸重790kg
最小回転半径:5.7m

このGT-Rを350kmほどドライブする機会に恵まれた。というのも、4月24日に富士スピードウェイで開催されたモーターファン・フェスタ2022の大試乗会の試乗車としてT-specがラインアップされており、誰かが横浜の日産グローバル本社から富士スピードウェイへT-specを運ぶ必要があったからだ。幸運なことに、その”誰か”が私だった。

クルマに乗り込んで、日産グローバル本社から首都高速に乗るまでの短い間で、「これ、GT-R? なんだ、この乗り味は!」とたまげてしまった。

復習をしておくとT-specは
「専用カーボンセラミックブレーキ、カーボン製リヤスポイラー、専用エンジンカバー、専用バッヂ(フロント・リヤ)を特別装備。また、専用の内装コーディネーションを施したほか、専用レイズ製アルミ鍛造ホイール(ブロンズ)を採用することでばね下質量の軽量化を生かして、サスペンションを専用にセッティングした」モデルだ。
価格は1590万4900円
である。

T-specは専用のインテリアを持つ。質感も上々(15年前のクルマとは思えない)
後席は、実質荷物置き場。大人が乗るのは難しい。子ども用なら使えるかもしれない。
相変わらず素晴らしいシート。ステアリングはチルト&テレスコピックの調整ができるが、ロック用のレバーがとにかく硬い。

このT-spec、じつにいいクルマだった。GT-Rなんだからいいのは当然なのだが、とにかく乗り味が洗練されている。しなやかで乗り心地がいいのだ。以前のGT-Rなら「COMFORT」モードに切り替えて初めて体験できる乗り心地がT-specでは「NORMAL」のまま味わえる。これは、脚周りが柔らかくなったというのではなく、極めて高い剛性を持つボディとこれまで以上によく動く脚のおかげ、なのだろう。首都高の路面の継ぎ目でも不快な挙動は一切なし。何事もなくすっといなしてくれる。いまや絶滅危惧種である油圧式のパワーステアリングのフィールも素晴らしい(もっと素晴らしいのがGT-R NISMO)。

「いいなぁ、これ」と思わず口から言葉が漏れてしまった。いい。

踏み込まない、飛ばさないと燃費はどうなのか?

形式:3.8ℓV型6気筒DOHCターボ 型式:VR38DETT型 排気量:3799cc ボア×ストローク:95.5×88.4mm 圧縮比:9.0 最高出力:570ps(429kW)/6800pm 最大トルク:637Nm/3300-5800rpm 燃料:プレミアム 燃料タンク:74ℓ
専用のエンジンカバーをもつT-spec。エンジン本体のスペックは変わらない。エンジンを組んだ匠のサインが入る。

借りだした翌日、一路富士スピードウェイに向かう。

第三京浜に乗る直前までの76.3kmの燃費は6.3km/ℓ(平均時速20.5km/h)だった。WLTCの市街地モード燃費が5.2km/ℓだから、首都高速を走行した分、燃費が良かったということだろう。感覚的には市街地=6.6km/ℓくらいだった。

高速道路を制限速度で巡航する。100km/h6速巡航のエンジン回転数は2100rpmだ。GT-Rの美点は、どんな速度域でも手応えがあって楽しいこと。高速道路で150km/h出さないと気持ち良くない……となったら、何枚免許証があっても足りなくなってしまうが、GT-Rはそういうクルマではない(少なくとも私にとっては)。

富士スピードウェイに到着するまでの合計210kmの燃費は8.0km/ℓ(平均時速31.7km/h)だった。

4月24日日曜日の夕刻、今度は富士スピードウェイから東京に戻る。天候は雨。東名はいつもの日曜夕方の渋滞があった。帰路の御殿場ICから東京ICまでは下りが多い。当然、燃費も良くなる。T-specの場合は一部渋滞があったにもかかわらず

98.1km走って燃費は11.5km/ℓ(平均時速57.7km/h)だった。

GT-Rを買って燃費を気にするのか? と問われたら、答えに窮してしまうかもしれないけれど、日常の通勤や買い物では燃費は良いにこしたことはない。とくにガソリン価格の高騰の折には、燃費は良い方がいいに決まっている。GT-Rを350kmもドライブして一度もアクセルを深く踏み込まない人はごくまれだろう。ハンドリングや限界性能については、きっとたくさんの試乗記が世に出ているだろうから、そちらをご覧になっていただきたい。

とういわけで、4日間トータル343.7km走って、燃費は8.84km/ℓだった。WLTCモード燃費が7.8km/ℓだから、穏やかに走れば9km/ℓ前後までは燃費は伸ばせそうだ(以前試乗した50th Anniversary車は9.2km/ℓだった)。

モーターファン・フェスタの大試乗会でこのT-specに試乗できた幸運な方々が走行した際の燃費も、車載コンピュータで計測してみた。結果は

37.4km走って3.9km/ℓ(平均時速12.7km/h)だった。

富士スピードウェイの外周路を試乗コースとしたから、当然フル加速もできなかっただろうことは想像に難くない。そうなると、燃費も3km/ℓ台になる。

それでもきっとそっと走ってもT-specの良さは実感できたと思う。ただならぬポテンシャルも感じられたはずだ。

ホンダNSX Type Sと記念写真

T-specを返却するとき、名残惜しくなった。R35 GT-Rには何度も乗せていただいたが、このT-specが一番いい!(個人的な感想だが)初めて「GT-Rが欲しい!」と心から思った。15年かけて磨き続けた完成形がここにある。

問題は、「買うことができない」こと。T-specはすでに完売している(し、そもそも1500万円を用意できない)。R35 GT-Rのモデルライフもそろそろ終わりが見えてきている。勝手な想像だが、きっと「ファイナル・エディション」が最後に登場するはずだ。

GT-R、いいなぁと長い間、思ってきた皆さん、ファイナル・エディションが最後のチャンスになりますよ! これまたきっと「抽選」ってことになるだろうから(勝手な想像です)、とりあえずエントリーはした方が後悔しないと思います。

「NISSAN GT-R Premium edition T-spec」感服しました。

専用カーボンセラミックブレーキ(NCCB:Nissan Carbon Ceramic Brake)
ブレーキローターに軽量で耐熱性に優れたカーボンセラミックを採用し、圧倒的な制動力と優れたコントロール性を発揮。
タイヤはF 255/40ZRF20 R 285/35ZRF20 銘柄はダンロップSP SPORT MAXX GT600 DSST。ランフラットタイヤである。
リヤサスペンションはマルチリンク式
フロントサスペンションはダブルウィッシュボーン式
トランスミッションは6速DCT。変速時の「カチャカチャ」というノイズもほぼしなくなった。
GT-Rのアクセルペダルは吊り下げ式
日産GT-R Premium Edition T-Spec
 全長×全幅×全高:4710mm×1895mm×1370mm
 ホイールベース:2780mm
 車重:1770kg
 サスペンション:Fダブルウィッシュボーン式 Rマルチリンク式
 駆動方式:AWD
 エンジン
 形式:3.8ℓV型6気筒DOHCターボ
 型式:VR38DETT型
 排気量:3799cc
 ボア×ストローク:95.5×88.4mm
 圧縮比:9.0
 最高出力:570ps(429kW)/6800pm
 最大トルク:637Nm/3300-5800rpm
 燃料:プレミアム
 燃料タンク:74ℓ
 燃費:WLTCモード 7.8km/ℓ
  市街地モード:5.2km/ℓ
  郊外モード:8.4km/ℓ
  高速道路モード:9.3km/ℓ
 トランスミッション:6速DCT
 車両本体価格:1590万4900円

著者プロフィール

鈴木慎一 近影

鈴木慎一

Motor-Fan.jp 統括編集長神奈川県横須賀市出身 早稲田大学法学部卒業後、出版社に入社。…