マツダMAZDA3 進化したe-SKYACTIV X搭載モデルは、満タンで何km走れるか? 走りは、燃費はどうか?

MAZDA3 FASTBACK X L Package(AWD) 車両価格○361万6963円 試乗車はOP(スーパーUVカットガラスフロントドア+IRカットガラス+ CD/DVDプレーヤー+地上デジタルTVチューナー4万9500円/360°ビューモニター+ドライバーモニタリング8万6880円)込みで375万3343円
マツダがSKYACTIV-Xのアップデートを行なったのが、2020年11月。「SPRIT 1.1」と称するバージョンに進化し、出力も180ps→190ps、トルクも225Nm→240Nmへアップしている。SPIRIT1.1のXを搭載するMAZDA3の燃費はどのくらいか? ロングドライブに連れ出した。満タンで何km走れるのだろうか?

e-SKYACTIV X SPRIT1.1で700km一気乗り

デザインの美しさは相変わらず。惚れ惚れする。かっこよさと引き換えに後席は薄暗い穴蔵チックだが、これだけかっこよければ文句はない。

SKYACTIV-Xは、SPCCIと呼ぶ革新的な火花点火制御圧縮着火という画期的な燃焼方法を実現した現代世界最先端のエンジンである。これにこれに24VのBSG(ベルトドリブン・スタータージェネレーター)を組み合わせたのがe-SKYACTIV Xである。ガソリンエンジンとディーゼルエンジンのいいとこ取りというe-SKYACTIV XはSPIRIT1.1版へ進化した。ハードウェアの変更ではなくソフトウェアのアップデートによって性能アップを果たしたことが話題になった。このアップデート版のSKYACTIV-Xを搭載したMAZDA3に試乗した。

MAZDA3は、2021年10月28日に商品改良を受けている。e-SKYACTIV X搭載モデルは、アクセルペダルの操作力の最適化などにより加速フィールとエンジンサウンドの造り込みを行なったという。また、燃費も改善されている。
WLTCモード 16.7km/ℓ
市街地モード 13.6km/ℓ
郊外モード 17.1km/ℓ
高速道路モード 18.2km/ℓ
となった。

販売状況を見てみよう。MAZDA3の国内発売は2019年5月だった。
日本国内では、
2019年1~12月:2万4108台
2020年1~12月:1万9215台
2021年1~11月:1万4737台
だ。

北米では、
2019年1~12月:5万741台
2020年1~12月:3万3608台
2021年1~11月:3万5634台
となっている。
面白いのは、北米のセールスデータではセダンとハッチバック(ファストバック)の販売台数が、それぞれ発表されるようになったことだ。
2021年の3万5634台の内訳は
セダン2万377台(57.2%):FB1万5257台(42.8%)
で、セダンの方が多い。欧州や日本と違う市場特性が窺える。



試乗車はMAZDA3 FASTBACK X L Package(AWD) 車両価格361万6963円である。赤レザーを使ったX Burgundy Selectionを除いて実質的にMAZDA3の最上級仕様だ。

e-SKYACTIV Xはカプセルエンジンだから、ボンネットフードを開けてもエンジン本体は見えない。
エンジン形式:直列4気筒DOHC エンジン型式:HF-VPH型 排気量:1997cc ボア×ストローク:83.5mm×91.2mm 圧縮比:15.0 最高出力:190ps(140kW)/6000rpm 最大トルク:240Nm/4500rpm 過給機:スーパーチャージャー 燃料供給:筒内燃料直接噴射(DI) 使用燃料:プレミアム 燃料タンク容量:48ℓ モーター:MK型交流同期モーター  最高出力:6.5ps(4.8kW)/1000rpm  最大トルク:61Nm/100rpm

試乗車のモード燃費は
WLTCモード燃費:16.2km/ℓ
 市街地モード 12.6km/ℓ
 郊外モード 16.7km/ℓ
 高速道路モード 18.1km/ℓ
である。

マツダR&Dセンター横浜で借りだして、数日間通勤、郊外への往復120km程度のドライブなどで406km走った燃費は12.8km/ℓ(高速道路は3割ほど)だった。

全長×全幅×全高:4460mm×1795mm×1440mm ホイールベース:2725mm
車重:1510kg トレッド:F1570mm/R1580mm 最小回転半径:5.3m 
車重:1510kg 前軸軸重960kg 後軸軸重550kg
ほとんどの領域でSPCCI燃焼をしていることがわかる。

自宅から東新宿の編集部まで都内の幹線道路(目黒通り~明治通り)を14kmほど走った燃費は、11km/ℓ台である。
正直、ちょっと物足りない気がする。e-SKYACTIV Xエンジンのフィールは、相変わらず独特だ。まさにディーゼルとよくできたガソリンNAのいいとこ取りの感じ。ディーゼルのように低速トルクが豊かで2000rpm以上のエンジンの伸び感はガソリンエンジンの長所を持っている。精度の高いパーツが精緻に組み上げられて、一回一回のシリンダー内の燃焼がきめ細かく制御されている……そんな(どんなだ?)独特のフィーリング。いつの深夜のように静まりかえった(でも21時くらい)都内をゆっくり走ると、少しカラカラとディーゼルエンジンのような音がする。これ、気になり出すと、ちょっと気になる。


タイヤはブリヂストンTURANZA サイズは215/45R18+7Jアルミホイール(ブラックメタリック塗装)
タイヤの指定空気圧は前輪が260kPa、後輪が250kPa

さて、ICE(内燃機関)を積んだクルマがEVに対して持つ大きなアドバンテージは1タンクで走れる距離、つまり「足の長さ」だ。e-SKYACTIV X搭載のMAZDA3の足の長さを確認するために、ロングドライブに連れ出してみた。

WLTCモードが16.2km/ℓでガソリンタンク容量が48ℓ(FFモデルは51ℓ)ということは計算上777.6km走れるということだ。

ちなみに、MAZDA3は21年4月に商品改良を受けてSKYACTIV-Xエンジン搭載モデルのモード燃費が次のようになった。

e-SKYACTIV X AWD(6MT):17.1km/ℓ(2021年10月の改良で17.7km/ℓになっている)
e-SKYACTIV X AWD(6AT):16.6km/ℓ(同16.7km/ℓ)
e-SKYACTIV X FF(6MT):17.9km/ℓ(同18.5km/ℓ)
e-SKYACTIV X FF(6AT):17.3km/ℓ(同17.4km/ℓ)

・AWDはFFより4%ほど燃費が悪化する。
・ATはMTより3%ほど燃費が悪化する
結果として、Xでもっとも燃費のよいFF(6MT)よりAT/AWDモデルは7%ほど燃費では不利になる。

という事前情報を頭にいれて、緊急事態宣言が発出される前の都内を早朝に出発した。目指すは日本海(新潟)である。片道350km程度だ。
まずは給油。e-SKYACTIV Xはレギュラーにも対応するが、ハイオクを入れた方がいい。まったくフィーリングが違うから。

e-SKYACTIV Xエンジンはハイオク推奨。欧州車と同じ、と思えばいい。

満タンにした時点でメーター内に示された航続可能距離は530kmだった。燃料タンクは48ℓだから直近の燃費が11.0km/ℓだったことになる。530kmでは日本海を見て都内に戻ってこられない!

さて、マツダのATは、SKYACTIV-Driveと呼ばれる6速である。変速タイミングもいいし、いたずらに多段化する必要はそうは感じない。ちなみにMAZDA3 e-SKYACTIV X AWD 6ATの各速度の巡航エンジン回転数はいずれもメーター読みで
100km/h巡航で2150rpm
110km/h巡航で2350rpm
120km/h巡航で2500rpmほど
である。

トランスミッションは6速AT。ギヤ比は1速:3.552 2速:2.022 3速:1.347 4速:1.000 5速:0.745 6速:0.599 後退:3.052 最終減速比:4.367

燃費的には7速、8速があればもっと有利かもしれないが、90km/hでアクセルを踏んで追い抜きをする、あるいは100km/hから加速する(120km/h制限の区間など)場合、SPIRT1.1にアップデートされたe-SKYACTIV Xは、じつに気持ちいい。2000〜5000rpmでトルクが大きくなっているからだ。2000-3500rpmあたりの常用域の回転フィールは、e-SKYACTIV Xの真骨頂である。


向こうに見えるのは日本海。鈍色の雲から雨が降り出した。AWDの安心感はやはりありがたい。
ボディカラーはポリメタルグレーメタリック。帰路、関越トンネルを抜けてから意識して90km/h程度で走行すると燃費は21km/ℓ前後まで向上した。

PAで休憩するたびに区間燃費を見てみた。流れに乗って100km/h巡航すると18.7km/ℓだった。
新潟で日本海を眺めたあと、東京へ戻る。関越自動車道の最高地点は関越トンネル内の海抜約697m。帰りはここから下っていくわけだ。意識して90km/hくらいで巡航すると燃費は21km/ℓ台になる。燃費を考えたら、90km/hくらいで走るのがもっともいいようだ。


677km走った時点で、残りの航続可能距離が70kmになった。ここで「燃料残量が低下しています」という警告がでる。
出発時と同じガソリンスタンドで給油。ぴったり700km走ったことになる。前日までの走行距離合わせると1106.1km走ってトータルの燃費は15.4km/ℓということになる。
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新潟往復の走行距離700kmで41.76ℓのガソリン(ハイオクだ)を給油した。満タン法で16.76km/ℓとなった(出発時と同じガソリンスタンドの同じ給油機を使った)。700km走ったところで、残ったガソリンで走れる距離は21kmとなっていた。つまり満タンで走れる距離は721kmだったということだ。
再び満タンにしたときの航続距離は「780km」となっていた(最後のセクションの燃費がよかったということだ)。
780km÷48ℓ=16.25km/ℓ
WLTCモード燃費が16.2km/ℓだから、まさにモード燃費通りだったわけだ。


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著者プロフィール

鈴木慎一 近影

鈴木慎一

Motor-Fan.jp 統括編集長神奈川県横須賀市出身 早稲田大学法学部卒業後、出版社に入社。…