OTAアップデートに対応する新OS「MB.OS」、第4世代「MBUX」を採用

右がSクラス開発責任者のフランク・ヴンドラック氏
右がSクラス開発責任者のフランク・ヴンドラック氏

2026年6月11日に発表され、予約注文も開始されたメルセデス・ベンツの新型「Sクラス」。今回の新型は、ビッグマイナーチェンジ版であり、新世代のインフォテイメントシステムやHMI(ヒューマンマシンインターフェース)が搭載されているのが見どころだ。

プレス発表会には、メルセデス・ベンツ日本のゲンティンガー剛社長兼CEO、メルセデス・ベンツ・グループのSクラス開発責任者のフランク・ヴンドラック氏が登壇した。

新OSの「MB.OS」で車両全体を統合

新型Sクラスの外観
新型Sクラスの外観

新型Sクラスのトピックスは、車両全体を統合する新アーキテクチャとして新OSの「MB.OS」が搭載された点だ。車両制御、先進安全装備である「ADAS」、HMI、クラウド連携まで統合する車載OSで、HMIやADASの強化、アプリの追加などを無線通信の「OTA(Over The Air)」で行える。

新型Sクラスのインテリア
新型Sクラスのインテリア

クラウド連携では、車車間・路車間通信である「V2X」にも対応する。Sクラスでは、クラウド連携により路面情報である「Car-to-X」を通じて「V2X」に対応することになる(日本仕様は後日提供される予定)。一般的に「V2X」とは、クルマが周囲のあらゆるモノ(X)と無線通信でつながり、リアルタイムに情報を共有する技術。新型Sクラスでは、クラウド連携によってナビデータやAIモデルの更新、車両学習データの反映なども盛り込まれる。

「MBUX」も第4世代に進化

センターディスプレイと助手席前ディスプレイ
センターディスプレイと助手席前ディスプレイ

「MB.OS」上で作動する第4世代「MBUX(メルセデス・ベンツユーザーエクスペリエンス)」は、さらに進化を遂げ、より自然な対話でナビやエアコン、車両設定、乗員ごとのパーソナライズ、予定管理や情報検索などを実現。AIの「ChatGPT」、「Microsoft Bing」、「Google Gemini」を統合することで、友人と会話するような自然な会話を可能になる。なお、ユーザーはどのAIを使うかは選択する必要はない。AIは、短期記憶まで備えるという。

「Google Maps」をベースとしたナビに

プレス発表会では「MBUX」のデモも披露された
プレス発表会では「MBUX」のデモも披露された

「Google Maps」をベースとしたナビゲーションも見どころだ。GoogleのPOI(Point of Interest/施設や地点)、交通情報、メルセデス・ベンツ独自のルート最適化が持ち込まれ、さらに先述したようにクラウド連携で常に最適化されるという。メルセデス・ベンツのナビといえば、いち早く拡張現実(ARナビ)を採用してきたが、新型Sクラスでは「MBUXサラウンドナビゲーション」を新たに採用。車両と周辺環境の3Dビューと運転支援機能をシームレスに統合し、車線や標識、ほかの車両、歩行者、ADASの作動状況、交差点の3Dモデルなどを表示する。

HMIも刷新

新型Sクラスのコクピットまわり
新型Sクラスのコクピットまわり

HMIの刷新も盛り込まれている。音声操作はもちろん、ステアリングにハードスイッチが用意され、操作性が向上。タッチスクリーンは、スワイプやピンチ、ドラッグなどスマホと同じ感覚で操作できる。音声、タッチ、ハードスイッチ、AIによる提案などマルチモーダル操作により、メルセデス最新のHMIとして提案されたことになる。なお、インパネには、最近のメルセデスでお馴染みの3つのディスプレイが並ぶ。14.4インチのセンターディスプレイ、運転席前の3D対応12.3インチメーター、助手席前の12.3インチディスプレイから構成されている。

新型Sクラスのリヤビュー
新型Sクラスのリヤビュー

新世代ADASである「MB.DRIVE」もすごいのひと言。10台の外部カメラ、5台のレーダー、12台の超音波センサーが搭載され、最先端の運転支援・駐車支援システムを実現する。さらに、膨大なデータを使って学習したAIアルゴリズムがセンサーデータを処理し、周囲の交通状況を高精度に把握するという。

センサーを満載する
センサーを満載する

こうしたセンサーとAI、新車載OSの「MB.OS」、そしてクラウドを統合した新世代ADASは、最新のACC(アダプティブクルーズコントロール)やステアリングアシストや自動車線変更を含むレーンチェンジアシストはもちろん、衝突被害軽減ブレーキの認識精度が向上。自動駐車機能や最大150mのリバース機能(車両が直前150mの走行軌跡を記憶)も搭載されている。

3.0Lディーゼルと4.0L V8ガソリンを設定

直列6気筒ディーゼル
直列6気筒ディーゼル

搭載されるパワートレーンは、「S 450 d 4MATIC(ISG)」向けの3.0L 直列6気筒ディーゼルターボ+ISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)、「S 580 4MATIC long」向けの4.0L V8ターボ+ISG。前者には、電気加熱式触媒コンバーターが量産車として初めて採用されたほか、EGR、冷却、クランクケース換気の堅牢性を向上している。後者には、フラットプレーンクランク、新しい点火順序、インジェクション、吸排気ポート、ターボの改良などが盛り込まれている。

4.0L V8ガソリンターボ

両パワートレーンともに、極めてスムーズな加速フィールが得られるそうだ。さらに、すべてのエンジンに搭載されるISGは、17kWを発生し、低回転域でインテリジェントな加速をサポートするという。

特許満載の「インテリジェントダンパーコントロール(AIRMATIC)」

最新のAIRMATICを採用
最新のAIRMATICを採用

そのほか、走りの面では、176もの特許を含めた「インテリジェントダンパーコントロール(AIRMATIC)」の採用も見どころだ。路面の凹凸をクラウドで共有する Car-to-X サスペンション制御、スピードバンプの事前検知、ダンパー減衰力の瞬時調整、カメラやレーダー、クラウド情報の統合などにより圧倒的にスムーズな乗り心地を実現するそうだ。世界で最も特許密度の高いサスペンションシステムといっていいだろう。

リヤシートの操作部
リヤシートの操作部

1886年の生誕からメルセデス・ベンツは、2026年で140周年を迎えるが、その目玉が新型Sクラスといえる。世界の高級サルーンのベンチマークであり続けてきたが、走るコンピュータにもなった!? ともいえそうな最新Sクラスは、マイナーチェンジなのかフルモデルチェンジなのかを議論するのは無意味といえそうだ。

メルセデス・ベンツSクラスのフロントシート

新型Sクラスの価格は「S 450 d 4MATIC(ISG)」が1598万円。「S 580 4MATIC long(ISG)」が2365万円(予定価格)。「メルセデス・マイバッハ S 580 4MATIC」の日本発売は2026年9月の予定となっている。

メルセデス・ベンツSクラスのリヤシート
メルセデス・ベンツSクラスのリヤシート

なお、メルセデス・ベンツは、今後3年間に50モデル以上導入する見込みだという。新型Sクラスは、50モデル以上の新型モデルを牽引する技術が盛り込まれたと考えていいだろう。