ホンダN-ONE RS 6MTで楽しさ抜群! S660譲りのパワートレーンで自動車趣味にも普段の足にも満足

ホンダN-ONE RS(6MT)
ホンダの軽自動車、Nシリーズと言えば、押しも押されもしない人気シリーズだ。そのなかで「N-ONE」は、もっともN360の血を色濃く受け継いだモデルだ。ターボエンジン+6MTのRSと1週間ほど生活を共にした。N-ONE RS、どんなクルマか?

N-ONEは売れている?

フロントフェイスのデザインはORIGINAL/Premium/RSでそれぞれ少しずつ違う。

Nシリーズのデビューは2011年。N-BOXが最初で第二弾がN-ONEだった(2012年)。2代目に切り替わったのが2020年。ほぼエクステリアは変更なし、というなかなか異例のフルモデルチェンジだった。それだけ初代のデザインが完成されていたということだろう。たしかにN-ONE、かわいくもあり、カッコよくもある。

軽自動車の人気がハイトワゴンやスーパーハイトワゴンと呼ばれるクルマに集中しているから、N-ONEの販売台数はけっして多くはない。とはいえ、それゆえ「スペシャル感」があるのがN-ONEの魅力だ。スペシャル感と言っても、S660やコペンのような「趣味100%で実用性は低い」わけではなく、趣味にも実用にも使えるのがいい。

販売台数を見てみよう。2022年1-4月の累計販売台数は
N-ONE 7728台
N-BOX 80168台 N-WGN 15428台 N-VAN 12695台

だから、Nシリーズのなかではもっとも台数が少ない。ちなみにS660は2333台である。

現行N-ONE

初代N-ONE

ハイトワゴンが人気といっても、誰もがそれを望んでいるわけではないだろう。筆者もそのひとり。普段なかなか軽自動車を試乗できない(興味がないわけではない)のは、その全高ゆえ。たとえばNシリーズでいえば、全高はこうなっている。
N-BOX 1790mm
N-WGN 1675mm
N-ONE 1545mm

N-VAN 1945mm

狭小住宅の1階ガレージには高さに制限があって、駐められるのはN-ONEだけなのだ。軽ハイトワゴンに乗ると、その広さに圧倒されて、「でも、広くて落ち着かない。頭上にこんなに余裕がなくてもいいな」と思う。その意味でもN-ONEはちょうどいいのだ。

全長×全幅×全高:3395mm×1475mm×1545mm ホイールベース:2520mm

S660譲りのパワートレーン

そんなわけで、N-ONEを借り出してみた。借りだしたのはRS 6MTモデルだ。初代のN-ONE RSは2017年12月に追加されたスポーティ・グレード。初代RSのトランスミッションはCVTのみだった。6MTは現行モデルからである(CVTも、もちろん設定されている)。おそらく、「N-ONEをMTで乗りたい!」というユーザーからの声が多かったのだろう。

ところが、N-BOXにもN-WGNにもMTは用意されていない。N-VANには6MTがあるが、商用バンゆえ自然吸気エンジンに組み合わせる燃費指向のギヤ比だからN-ONEには使いづらい。

そこでミッドシップスポーツのS660からの移植となったわけだ。

ホンダ青山本社の地下駐車場でプレミアムイエローパールⅡ/ブラックの2トーンのボディカラーのN-ONEに対面。安っぽさは皆無でカワイイながらも、大人の男性が乗っていてもおかしくない(似合う)デザインは、さすが。

インテリアの質感はとても高い。200万円のクルマとして考えれば当然だが。

乗り込んでインテリアを眺めても、その質感の高さに驚く。高級なわけではなく、すっきりクリーンな内装だ。シートに腰を下ろして、クラッチペダルを左足で踏み、右足でブレーキペダルを踏んだところで、エンジンの始動ボタンを押すとS07-B型660cc直3ターボエンジンが目を醒ます。

シフトノブはS2000のデザインをベースにしている。
1速:3.571 2速:2.227 3速:1.529 4速:1.150 5速:0.869 6速:0.686 後退:4.454 最終減速比:4.875
最終減速比もS660と同じ

走りだそうと6MTのシフトレバーを1速に入れる……おおっ、変なところから生えている! ハイトワゴンではないけれど、全高1545mmのN-ONEは、ドライバーをアップライトに座らせる。となると、シフトレバーも身体のすぐ横にあると窮屈。必然的にこの位置が最適というわけだ。実際、すぐに慣れる。クラッチも軽いし、ミートポイントもわかりやすい。「オートブレーキホールド」機能もついているから、急な上り坂での坂道発進も安心だ。

形式:直列3気筒DOHCターボ 排気量:658cc ボア×ストローク:60.0mm×77.6 mm 圧縮比:9.8 最高出力:64ps(47kW)/6000pm 最大トルク:104Nm/2600rpm 燃料供給:PFI 燃料:レギュラー 燃料タンク:27ℓ

64ps/104Nmだから、アクセルを踏み込んでも速くない。これがいい。6MTだからといって速く走れるわけではない。MTの魅力は、自分が走りたい速度、コーナーの曲率を考えて適切なギヤを選んで走れたときの快感だ。ピタッと決まった時の爽快さはMTならでは。N-ONE RSの6MTの操作感も気持ちいい。全高が低いわけではないので、重心はそれなりに高い。だから、ちょっと高い速度でコーナーに入っていくと(高速道路の退出の際のループを想像してください)、「おっとっと」となることもある。それを含めてギヤと速度を完全にマネージメントできると楽しい。

パーキングブレーキは電気式。そのレバーの下のボタンがオートブレーキホールドのON/OFF用。
ONにするとメーター内のインジケーターが点灯する。

S660譲りだから、ギヤ比も同じ。1-5速をクロスレシオ化。2速で30-60km/hをカバーする。6速は100km/h巡航で3000rpmプラスαである。80km/hだと2500rpmくらいだ。

1週間ほどN-ONEと付き合ってみて、市街地(渋滞もあり)、郊外、高速道路とさまざまなシチュエーションでドライブしてみた。(最新の軽に疎いので)驚いたが、6MTでもACCがつく。LKAS(車線維持支援システム)もついているから、高速巡航は楽々だ(ついていなくて全然不自由しないけれど)。ちなみに、速度に対するギヤ許容範囲を超えそうになった場合、シフトのUP/DOWNをタコメーター下に表示される。

もちろんHonda SENSING搭載。MT軽自動車で初めてACCがつく。LKAS(車線維持支援システム)も。

316km走って、トータルの燃費は19.8km/ℓ

316km走って、トータルの燃費は19.8km/ℓだった。WLTCモードが21.6km/ℓだから、達成率は91.7%と優秀だ。

N-ONE RS、とても気に入った。軽自動車を買うならN-ONE RS、それも6MTがいいと思った。普通乗用車から乗り換えても、「ああ、好きでN-ONEにしたんですね」ときっと思われるだろうし(実際そういうことだと思う)、何より楽しい。いざとなれば4人快適に乗れる。装備もフル装備だ。

問題は……やはり価格か。車両価格はほぼ200万円(試乗車は208万2300円。ディーラーオプションのナビゲーションが付いていたので、230万円くらいになる)。たとえば、スズキ・スイフトスポーツの6MTは201万7400円。トヨタ・ヤリス(ハイブリッドでないZ FF 6MT)なら188万8000円で買えるのだ。

それでも、N-ONEにはN-ONEにしかない魅力がある。自宅ガレージに鮮やかなイエローカラーのN-ONEが収まっているのを見るのは、なんだかうれしい。維持費が安い(軽自動車税は10800円/年、1.5ℓ以下の自動車税は30500円/年)というのもあるけれど、クルマ好きの琴線に触れるなにかがN-ONEにはある。

RSには大型のテールゲートスポイラーが付く。
ホンダN-ONE RS(6MT)
 全長×全幅×全高:3395mm×1475mm×1545mm
 ホイールベース:2520mm
 車重:840kg
 サスペンション:Fマクファーソンストラット式/Rトーションビーム式 
 駆動方式:FF
 エンジン
 形式:直列3気筒DOHCターボ
 型式:S07-B型
 排気量:658cc
 ボア×ストローク:60.0mm×77.6 mm
 圧縮比:9.8
 最高出力:64ps(47kW)/6000pm
 最大トルク:104Nm/2600rpm
 燃料供給:PFI
 燃料:レギュラー
 燃料タンク:27ℓ
 燃費:WLTCモード 21.6km/ℓ
  市街地モード17.5km/ℓ
  郊外モード:22.8km/ℓ
  高速道路:22.0km/ℓ
 トランスミッション:8速AT
 車両本体価格:199万9800円

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著者プロフィール

鈴木慎一 近影

鈴木慎一

Motor-Fan.jp 統括編集長神奈川県横須賀市出身 早稲田大学法学部卒業後、出版社に入社。…