四角いボディに丸いヘッドランプ、Aピラーが垂直近くに立ったエクステリアデザインはちょっとレトロで新しい。5スロットルグリル、クラムシェルフードなど歴代ジムニーのアイコンをちりばめながら、機能美に溢れるデザインは、今時珍しい2ドアのみのデザインが潔く、とても新鮮だ。オーバーハングをギリギリまで詰め、樹脂素材の質感を活かした前後バンパー、大径タイヤ(大径ホイールではない!)は80扁平で分厚く、どんな悪路でも走破できそうで頼もしい。
軽自動車としては異例にボンネットフードが厚く、長く、ボリューム感がある。そのため、乗っている人が小さく、小顔に見える。軽自動車で筆者がいつも気になるのは乗っている人の顔や体が必要以上に大きく見えてしまうことだが、新型ジムニーはこの存在感あるデザインと乗員とガラスからの距離があるため、普通乗用車となんら変わらないのが嬉しい。
乗った瞬間にドライビングポジションがピタリと決まり、シートベルトは取り出しやすく、素早く引いてもロックなどせず、スルリと伸びて、バックルに一発でカチッと入る。その位置関係の素晴らしさと使い勝手の良さに驚いた。「当たり前じゃないか」と思うかもしれないが、このあたりの開発がきちんと出来ていない車がいかに多いことか。毎回行う動作だけに重要なポイントだ。もちろん個人差はあると思うが筆者にとってはベストな設定だ。
直立したフロントウインドウは上下の幅が狭く、ワイパーがむき出しで見えている。水平基調でデザインされたインパネは奥行きが短くコンパクトで、どこか昭和の日本車のような懐かしさがある。「そうそう、この感じ!これくらいがいいよね。」と思わずそんな言葉が出てくる「ちょうどいい、心地よい空間」が新型ジムニーの魅力の一つだ。
早速エンジンをかけてみる。内燃機関の鼓動がしっかりと伝わってくる。空吹かししてみるとレスポンス良く、鋭く吹け上がる。特に吸気音のチューニングが上手い。走り出す前からかなりやる気にさせてくれる音がジムニーのキャラクターに合っている
エンジンルームを見るとラジエターファンとバッテリーはなるべく高い位置に設定。エアクリーナーもエンジン上部に置く設計として、多少水に浸かっても走破できるように配慮した設計を見て、本格オフローダーであることを再認識した。
走り出してまず感じたのは「元気の良さ」。エンジンは低速からトルクがあり、グイグイと車体を前に進め、健康的でアップテンポなリズム感が心地よく、楽しい。走り出した最初の感想は「遊園地のアトラクションみたい!」だ。それは音、振動、非日常的なジムニー独特の空間デザインからくるものだろう。普通の街乗りなのにどこか都会を冒険しているようなワクワク感がある。これなら街乗りの移動も楽しい時間に変わるだろう。
ラダーフレームと3リンクリジットアクスル式サスペンションによる乗り心地は意外にも上質で快適だ。大きな段差でも突き上げなどなく、こんな小さく軽く、ホイールベースが2250mmしかないとは思えないほど落ち着いてしなやかな乗り心地だ。80扁平タイヤもこれに寄与している。ボディ剛性の高さ、フレーム剛性の高さは軽自動車としてはかなりオーバークオリティ。そう、この「オーバークオリティ感」がジムニーの最大の魅力かもしれない。わざわざ段差や凹みを探して、この足で踏み超えてみたくなった。ジムニーはタイヤと路面の感触が手に取るように伝わってくるのが楽しい。
さらに視界は極めて良好だ。四角いボンネットを見下ろすようなドライビングポジションによって、狭い道での車のすれ違いは容易だ。
サイドウインドウはドアミラー付近が下に抉れているので、死角が少ない。助手席側サイドアンダーミラーによって、スレスレまで寄せることも容易にできる。80扁平のホイールなので万一の際にも縁石などでホイールにガリ傷を作ってしまう可能性も少ない。駐車場の輪止めにも前から停められる。気を使う必要がなく、ストレスが少ないクルマだ。
ジムニー XC 4ATは4速のトルコン式オートマチックだが、セッティングとギヤ比が絶妙だ。エンジン特性ともぴったり合っていて、軽快で楽しい。自分で思った瞬間にギヤが変えられる5MT車に魅力を感じ、契約したが、正直4ATでも良かったかなと思うほどバランスよく、楽しい走りに仕上がっている。
近年の乗用車で少なくなったリサーキュレーティングボール式ステアリングを採用しているため、少し早めにステアリングを切り始めるなど慣れが必要だが、所有してしまえばむしろ穏やかなステアリング特性は好ましく思えるものだ。縦置きエンジンのFRレイアウトを採用するため、FF車よりもステアリング切れ角が大きく取れるので、これだけの大径タイヤを履きながら、最小回転半径は4.8mと小さい。狭い道での切り返しやUターンが容易に出来るなど街中での取り回しがとてもしやすい。
ジムニー XC 4ATは街乗りからちょっと首都高速を走るくらいの移動まで難なくこなす、オールマイティなシティコミューターであることが確認できた。もちろんアウトドアライフ、オフロード走行などを楽しみに山に海にと出掛けられる。
新型ジムニーは普段の街乗りから、週末の遊びまでいつでもどこでも使い倒せる相棒なのだ。