「お前のクルマ、バネレート何キロ?」の会話はアテにならない【TOYOTA GR86 長期レポート11_AE86~GR86への道】

雑誌の〆切帰りによく寄った深夜営業のラーメン店。GR86はどこでも格好よく決まる。こうやって見ると、やっぱりクルマはちょっと下げてツラのホイールにするのが正義(個人の感想。詳しくは前回参照)。
純正サスの凄さは体感したが、やっぱり車高は落としたいし、サーキット走行を考えるともっと動きを抑えたい。そこで車高調の導入になる。今回はブレーキ&サスペンションメーカーのエンドレスに協力してもらい、さまざまなセットをテストさせてもらった。

TEXT&PHOTO:加茂 新(KAMO Arata)

レバー比を理解すれば、おのずとバネレートも決まってくる(はずだ)

サスペンションにはレバー比が関係してくる。
サスペンションにはレバー比というものがある。タイヤはサスペンションアームの先のナックル(アップライト)に取りつけられている。
このアームの途中にサスペンションが取り付けられるので、サスにはテコの原理が働いて荷重が伝わる。

レバー比があることで、サスペンションが動くストローク量は短くなり、代わりに大きな力がかかる。もし、レバー比が1で、サスペンションのバネレートが10kg/mmだったときと、レバー比が1.5で同じバネレートだったとしたら、レバー比1.5の方がたくさん沈み込む(結果、サスペンションとしては柔らかく感じられるようになるということ)。

傾向としてはストラット式はサスペンションがナックル付近につけられていることが多いのでレバー比はほぼ1のことが多い。マルチリンクやダブルウィッシュボーンはサスペンションがアームの真ん中あたりに取りつけられていることも珍しくないので、レバー比が1以上の数値であることがほとんど。

GR86のリアサスペンション。アームのかなり外側にサスペンションがマウントされている(前回もご覧ください。別ウインドウで開きますhttps://motor-fan.jp/mf/article/71386/ )。

しかもマルチリンクなどは、ストラット式と違ってサスペンションに横方向の負荷がかかりにくいので、サスペンションがスムーズにストロークしやすい。そのフリクションの少なさとレバー比がたくさんあることが相まって、バネレートが20kg/mmや30kg/mmでも普通にしなやかにストロークするのである。

レバー比が1あたりのストラット式サスだと、車重が1.5~1.7tクラスのクルマだと20kg/mmなどはかなりハードな乗り心地になってしまうことが多い。
ストラット式のS15シルビアのフロントの場合、レバー比があまりないのでスプリングは10kg/mmくらいが普通だが、マルチリンク式のフェアレディZ(Z33)ではレバー比が大きいので、20kg/mmで同じくらいの硬さ、といった具合だ。

クルマ好き同士だと「お前のクルマ、バネレート何キロ?」なんて会話になるが、車種が異なるとレバー比が変わるので、その数値はなんのアテにもならないのである。よってこの手の侠気を競う風な会話は、いますぐやめることをお勧めする。

エンドレスのサスペンション開発にお邪魔した

エンドレスは日本を代表するブレーキメーカー。WRCのトヨタワークスヤリスにもブレーキパッドが使われている。というか、WRCでは圧倒的なパッドのシェアを誇る。
キャリパーも各レースで広く使われ、フルードはF1でブラウンGPがシリーズチャンピオンを獲得しており、もちろんいまも使っているチームがある。
そんなブレーキイメージの強いメーカーだが、同じように注力して開発しているのがサスペンション。

度重なる開発テストを行ない仕様を決めていった。エンドレスは自社内にレーシングチームからサスペンション工場まであるので、仕様変更のレスポンスも速い

現在は「IMA」というシリーズが主流で、ストリートメインのSC、スポーツメインのPS、サーキットメインのTCという3つの用途別モデルを展開している。そのサーキットテストに参加させてもらった。

加茂のGR86にも、もっともサーキット向けのTCのテスト品を装着して、テスト走行を行なった。そこで見えてきたのは、リヤのバネレートが操縦性のカギになるということだった。

あ、次回に続く。

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著者プロフィール

加茂 新 近影

加茂 新

1983年神奈川生まれ。カメラマンの父が初代ゴルフ、シトロエンBX、ZXなどを乗り継ぐ影響で16歳で中型バイ…