ボディ剛性なんて信じない派なのに! トヨタ GR86は、驚くべき進化を遂げていた! シェイクダウン前編【TOYOTA GR86 長期レポート4_AE86~GR86への道】

納車日。エンドレスのクラッシックカー博物館&レーシングカーが展示されている「130コレクション」にて記念撮影。
2021年12月に納車になったGR86 RZ 加茂号。そのエンジンパワーとボディのしっかり感は、さすが新型と思える素晴らしいフィーリング。長期レポート第4回は「納車された! ファーストインプレッション」をお届けする。

TEXT&PHOTOS 加茂 新(KAMO Arata)

GR86を買ってみた。チョット面倒くさい印鑑証明と車庫証明取得方法を解説!【TOYOTA GR86 長期レポート3_AE86~GR86への道】

86後期からGR86への乗り換えを決意し、手続きを進める加茂。車両が来る目処が立ったら、車庫…

すんごいボディ剛性に、感動!

こちらの「130コレクション」、初代スカイラインや初代シビック、フィアットX1/9などレストア済みの名車の同乗走行(助手席)も可能。カフェも併設されていて自社製コーヒーや軽食を取ることもできるのだ。

GR86と初対面したのは、長野県佐久市のエンドレス・アドバンスガレージで、だった。ご存じ、ブレーキパーツのエンドレスが運営するカーショップである。
クルマを受け取り、緊張しながら佐久市内をウロウロしてみる。走り出した瞬間から感じたのは、そのシルキーなドライブフィール。
先代86(とくに前期型)は、ちょっと質感が安っぽいというか、やんちゃというか、ざっくりした感があったが、そのあたりが格段に向上している。驚き。
ステアリングの革は、すごくキメが細かい表皮である。それと同じようにエンジンのフィールも、クラッチがつながる感触も、ガサツさがなくスムーズでシームレスにクルマが動き出す。質感に統一感があるのである。

エンジンのトルクは明らかに違い、力強い。ほとんど回転を上げなくても、発進がスムーズにできる。エンジンの慣らしはとりあえず3000rpmくらいまでをめどにする。
でも大事なのは回転数だけではない。それ以上に負荷をいきなりかけないように、ふわっと加速していくことを心がけている。

ほぼ先代と同じレイアウトのエンジンルームだが、エアクリーナーからスロットルへのカーブがゆるくなった


最近は “慣らし走行が必要か否か” に、いろいろな意見があるようだが、これまでの自身の経験でいくとやはり500kmとか700kmとか走った頃に、徐々にエンジンが軽くなっていくことを体感している。なので、個人的には、ある程度は必要かな、と序盤は少し優しめにトルクをかけるようにしている。
だが、そのフワッとした加速感のなかにも、トルクの太さを感じられる。回転の上下する感触もじつにしなやか。

質感の高い純正サスペンション

ディスプレイ化されたメーター。トラックモードにすると水温と油温を数字で表示することができる。

GR86のサスペンションはこれでもか! というくらいに、動き出しが繊細。
街乗りのサスペンションはとにかく伸び縮みの5mmくらいのところがいかにスムーズか、が非常に重要となってくる。
クルマは、フリクション(抵抗)が多ければ、段差や路面の継ぎ目のようなショックを一瞬フリクションが受け止めてから後れてストロークする。受け止めるときにカラダは揺れ、そのあと後れて大きなストロークするときには、もっとカラダは揺さぶられる。

高級なアフターマーケットのサスペンションはこの領域が優れている。高額で高精度、高品質なダンパーとスプリングを使うことで、この微妙な領域をスムーズに動かす。微細な領域から減衰力を発生させ、ストロークスピードを制御している。だから、乗り心地は良いのに、ふわふわもしない。
そんな感触が、この純正サスペンションには確実にある。残念ながら先代86の純正サスには前期型も後期型も、このフィーリングはまったくない。軟らかくストローク量は多く、意外とドリフト走行も可能で振り回せる味つけにはなっているが、GR86のようなシルキーなきめ細やかなフィールはなかった。純正サスペンションの明確な進化を感じられた。

BRZはどっしり、GR86はドリフト向けなどという意見もあるが、そういう限界域の話の手前にある、サスペンションとしての質感の高さ、抵抗の少なさ、微細な減衰力の発生など、そういった基本性能の高さが驚異的。

そして、それを生み出しているのはこだわり抜いたというサスペンションのほかに、確実にボディが挙げられる。今回のGR86のボディも先代に比べて5割増の剛性だという話だが……クルマがモデルチェンジするたびに言われるこの「ボディ剛性●●●%アップ!」、じつはいかがなものかと思っている。
たしかに計算上はそうかもしれないが、じゃあ、20年前のクルマの何倍も剛性があるのかというと……そこは疑問で、じつはボディ剛性云々についてはあまり信じない派である。
でも! 乗ってビックリ!

体感的には明らかにボディがしっかりしている。硬いというよりも、ガッシリしているという感じ。ボディが揺れないから、そのぶんサスペンションに入力が集中して、サスペンションがよく動く。微細な動きも可能。だからこそ、全体にフィーリングがよく感じられる。なんだこの質感の高い純正サスペンション。

価格以上の高級な乗り味に、買って、走り出してすぐに満足だ。これはいい。で、来週の後半に続く。

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著者プロフィール

加茂 新 近影

加茂 新

1983年神奈川生まれ。カメラマンの父が初代ゴルフ、シトロエンBX、ZXなどを乗り継ぐ影響で16歳で中型バイ…