ホンダ・シビックe:HEV やっぱり本命!(インサイトとは別物)BEV時代を前に、まだまだHEVモデルの生きる道と魅力は満載だ

手前が新型シビックe:HEV、奥がホンダ・インサイト
ホンダ・シビックに待望のハイブリッドモデル『e:HEV』がラインアップに加わった。試乗会場は1年前と同じ八ヶ岳周辺のワインディング路だ。一世代前のe:HEV(i-MMD)を搭載するインサイトで試乗会に乗り付けたジャーナリスト、瀨在仁志がシビックe:HEVを斬る!
TEXT:瀨在仁志(SEZAI Hitoshi) PHOTO:Motor-Fan.jp

新世代e:HEVがいい

ホンダ・シビック e:HEV 車両価格:397万8700円 ディーラーop ドライブレコーダー/フロアカーペット ボディカラーはプラチナホワイト・パール
左がインサイト、右が新型シビックe:HEV

注目すべきポイントはホンダならではの走りの良さと環境性能を両立させた、その心臓部にある。

新開発された2.0ℓ直噴・アトキンソンサイクルのパワーユニットは最大熱効率41%を実現したうえで、141ps(104kW)/182Nmのスペックをマーク。これにインサイト比で+53ps(39kW)+48Nmで184ps(135kW)/315Nmを生み出す2モーターユニットを組み合わせている。

インサイトのパワートレーン

エンジン
形式:直列4気筒DOHC
型式:LEB-H4型
排気量:1496cc
ボア×ストローク:73.0mm×89.4mm
圧縮比:13.5
最高出力:109ps(80kW)/6000rpm
最大トルク:134Nm/5000rpm
燃料供給:PFI
使用燃料:レギュラー
燃料タンク容量:40ℓ

モーター
モーター:H4型交流同期モーター
 最高出力:131ps(96kW)/4000-8000rpm
 最大トルク:267Nm/0-3000rpm

新型シビックe:HEVのパワートレーン

エンジン
形式:直列4気筒DOHC
型式:LFC
排気量:1993cc
ボア×ストローク:81.0mm×96.7mm
圧縮比:13.9
最高出力:141ps(104kW)/6000rpm
最大トルク:182Nm/4500rpm
燃料供給:DI
燃料:無鉛プレミアム
燃料タンク:40ℓ

モーター
H4型交流同期モーター
最高出力:184ps(141kW)/5000-6000rpm
最大トルク:315Nm/0-2000rpm

結果、低速域でのモーター駆動領域を時間にして+20%拡大し、高速レンジやワインディングなどではエンジンを発電モードに切り替えるポイントを高めることで、自然吸気ユニットのダイレクト感あるドライブフィールを向上。
実際に試乗してみると、走り始めのスムーズさに関してはインサイトやアコード同様にモーター駆動による滑らかさに好感が持てる。しかも、インサイトやアコードではモーター駆動時にもかかわらず発電のためにエンジンがほぼ同時にかかってしまっていたのに対し、シビックでは緩加速まではエンジンが始動することが少なく、モーター走行をより実感できる。

従来のe:HEVも市街地走行ではモーター駆動に変わりはなかったものの、あたかもガソリンユニットの加速と勘違いしやすかった点が、新型シビックe:HEVでは随分と解消されたのは良かった。

後ろのインサイトのものから一世代新しくなったパワートレーンを搭載する新型シビックe:HEV
「上り坂でも下り坂でも、このシビックe:HEV、ほぼモーターで走るんですが、加速時にはエンジンがグッとかかります。その力強さが、2.0ℓ新開発エンジンなだけありますね!」と、瀨在氏。

それでも試乗コースは前半が登坂路中心のために、アクセル開度は大きめとなる。さすがに法定速度まで一気に加速させようとするとエンジンはかかってしまうが、そのときのフィーリングは悪くない。ジワッと加速するかのように始動し、従来よりも振動が抑えられていることで、違和感無く受け入れられる。

エンジンがかかっても急激の回転の上昇はなく、あくまでもモーター駆動同様に滑らかな回転フィールを味合わせてくれるのはいい。充電領域にもかかわらず、加速状態を演出するかのように、ノイズやサウンドが同調してきてくれる。

さらに加速状態に入るとエンジンが主導となるのか、右足に対するレスポンスが路面を常に蹴り上げるような一体感があって、旋回中のコントロール性に違和感はない。

全長×全幅×全高:4550mm×1800mm×1415mm ホイールベース:2735mm
ターボ(CVT)とe:HEVの重量差は90kg(e:HEVの方が重い)
最小回転半径:5.7m 最低地上高:135mm

モーター駆動だと恐らくアクセルの戻しのレスポンスなどでエンブレ不足を感じやすかったり、再加速時のトルク不足を感じ易いシーンでも、パワーをダイレクトに伝えられ、姿勢も安定している。特に、従来のように旋回中にエンジンの回転だけが上がってしまい、出来の悪いCVTのようなフィールがなくなった。 

それでいながらEV特有のザラつき感を感じさせないパワーフィールも持ち合わせて居るのは、エンジン主体になっても必要に応じてモーターがサポートしているのかもしれない。エンジンの振動をモーターが吸収する効果もあるのだろう。

高速域はエンジンの良さが光る

室内長×幅×高:1915mm/1545mm/1145mm

高速域になるとエンジン主体であることがわかる。常にエンジンは回っている印象がある。しかし、回転の上下動は少なく、加速中の変速感もメリハリがある。力強さに加えて、スムーズさを手に入れたのは2.0ℓ化による大きなメリットだ。その上でワインディング同様にモーターのサポートもちょくちょくあるようで、アクセル開度と加速感はシンクロしているし、静粛性も高い。

ハンドリング面においては、旋回初期は路面に貼り付くような安定感を示すことは、従来同様に美点のひとつ。重量増にもかかわらず、終始安定方向であることはボディのしっかり感の表れ。Gが高くなっても馬脚を現さない路面追従性のよさは、基本性能が高さによるものだ。

先だってデビューしたステップワゴンも剛性感の高いボディに驚かされたが、最近のホンダ車はやはり基本骨格が大幅に向上。F1のエンジンばかりではなく、市販車のボディも基本をしっかりと進化させ走りの性能を高めている。

もっともフロント周りの重さは旋回後半でボディを揺らすことがあったり、重量の軽い従来のターボモデルでは、パッチが貼られたような補修路面や、ひび割れ路などでは突き上げ感があるなど、ボディの強さがダイレクトに伝わってきてしまう。どこかへ力を逃がしたり、吸収したりするような対処を、これからは期待したい。

短い時間にもかかわらず、複雑なエンジンとモーターの制御に翻弄されることなく、HEVならではのカドのない滑らかな加速感や、エンジンのダイレクト感を自然に味わえたのが、シビックe:HEV登場の大きなポイント。

発電機のようなエンジンフィールから開放され、自然吸気ユニットならではの軽快さとダイレクト感を生み出した味付けに、ようやくホンダらしさを実感し、HEVモデルの本命登場に違いない。

遅きに失したとは思うものの、BEV時代を前に、まだまだHEVモデルの生きる道と魅力は満載。その魅力を再認識することができ、これからも何とかガソリンエンジン存続に思いとどまって、HEV流走りの良さにこだわってほしい。

ホンダ・シビック e:HEV
全長×全幅×全高:4550mm×1800mm×1415mm
ホイールベース:2735mm
車重:1460kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式/R トーションバー式
駆動方式:FF
エンジン
形式:直列4気筒DOHC
型式:LFC
排気量:1993cc
ボア×ストローク:81.0mm×96.7mm
圧縮比:13.9
最高出力:141ps(104kW)/6000rpm
最大トルク:182Nm/4500rpm
燃料供給:DI
燃料:レギュラー
燃料タンク:40ℓ

モーター
H4型交流同期モーター
最高出力:184ps(141kW)/5000-6000rpm
最大トルク:315Nm/0-2000rpm

WLTCモード燃費:24.2km/ℓ
 市街地モード 21.7km/ℓ
 郊外モード 27.6km/ℓ
 高速道路モード 23.4km/ℓ

車両価格:397万8700円

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著者プロフィール

瀨在 仁志 近影

瀨在 仁志

子どものころからモータースポーツをこよなく愛し、学生時代にはカート、その後国内外のラリーやレースに…