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ワンボックス派生ミニバンとして登場
1980年代に花開いた日本の自動車文化のひとつがワンボックスである。もちろんメインは配送などのビジネスバンだったが、80年代に入ると室内が広く使い勝手のいいファミリーカーやレジャーカーとして使用するユーザーが増えていた。
それに呼応し、豪華装備のモデルや、採光できる特殊なルーフをもつもの、あるいは高い4WD性能のモデルなど、さまざまなワンボックスが現れた。
ところが1990年代になると、ワンボックス界に暗雲が漂ってくる。それが安全性の問題だった。万が一の衝突時にどうやってキャビンを守るか。すでに欧米では公的機関による衝突試験が行われていたが、1990年代に入り、それが日本でも実施されることになった。
これがワンボックスカーを直撃する。そのフォルムが示すように、ワンボックスカーのキャビン前方は絶壁スタイルだ。ボンネットのようなものはなく、つまり、衝突時に衝撃を吸収しキャビンを守る「クラッシャブルゾーン」が圧倒的に足りないのだ。そこで1900年代に入ると、ワンボックスカーは前方に衝撃を吸収できる短いノーズをもつタイプへと進化していく。1991年にはいち早く日産がバネット・セレナを登場させ、他社もこれに追従していった。
トヨタのワンボックスでは、伝統のハイエースよりひとクラス下、比較的コンパクトなモデルとして人気だったのがタウンエース/ライトエースだ。1996年には衝撃吸収用の短いノーズを備えたタウンエースノア/ライトエースノアへと進化した。ワンボックスはフロントシート下にエンジンを搭載して後輪を駆動するキャブオーバー型が定番だったが、新生ノアは少しキャビンを後方に移動させることで、クラッシャブルゾーンを稼ぎ出していた。加えて3列シートを備え、片側ながらリアスライドドアを備える。
基本的にはフロントにエンジンを搭載し後輪を駆動するFRで、4WDも用意した。コラムシフトを採用することで後席へのウォークスルーも可能。いわば現在のミニバンと一見それほど変わらないモデルではあった。
ところが、1995年に登場し、ハイエースの後継モデルと目されたグランビアとともに、タウンエースノア/ライトエースノアは、トヨタでは珍しくライバルに惨敗したモデルとして記憶されることとなってしまう。この頃のトヨタは、ミニバン戦略を見誤っていたと言わざるを得ないだろう。
トヨタのミニバン本格参入モデル
衝突安全性を確保するため、短いノーズを備えるスタイルへと進化した新世代ワンボックス。メカニズムは従来のキャブオーバー型を進化させたもので、フロントにエンジンを縦置きして、後輪を駆動する(4WDも用意)。エンジンは2Lガソリンと2.2 Lディーゼルをラインアップ。3列シートで6/7/8人乗りが用意されたが、ワゴンのほか商用バンも設定されていた。通常モデルに加え、アウトドアユースを意識した「フィールドツアラー」も設定した。
トヨタの販売チャンネル
コンパクトだったタウンエースの歩み
トヨタワンボックスの歴史
STYLEWAGON(スタイルワゴン)2024年10月号
[スタイルワゴン・ドレスアップナビ編集部]