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EVなど次世代車に関して大規模なユーザー調査が実施されました。客観的データを知ることで、ユーザーのEVに対する思いと社会の現実がどうマッチしているかが一目瞭然です。ユーザーのEV感、じっくり覗いてみましょう。
データから読み解く、ユーザーのEV意識
日本自動車工業会(通称、自工会)という名前を聞いたことがあるでしょうか。自動車メーカー、トラックメーカー、二輪車メーカーが中心となる業界団体なのですが、単なるメーカーの社長たちの懇談の場ではなく、国や自治体、そして他の産業界と日本の未来について真剣に話し合う重要な存在です。
そんな自工会が定期的に行っているものに、乗用車と軽自動車の市場動向調査があります。なんだか堅苦しい感じに思われるかもしれませんが、実はこれが結構おもしろい内容なのです。
なぜならば、ただの市場動向ではなく、ユーザーが日頃、クルマとどう接して、どんな思いを持って所有して、利用して、そして買い替えを考えて、というようにユーザーの生活にかなり踏み込んでいるからです。
全般的な質問のほかに、その都度の世の中の動きを受けたトピック調査を実施していて、『新型コロナウィルス感染拡大の影響』と『次世代自動車への意識』を設定し、とくに『EV・プラグインハイブリッド保有層の深堀り』もしています。
その詳細を見ていく前に、まずは日本の自動車市場の全体像を確認しておきましょう。
直近2020年度の乗用車販売台数ですが、386万台と10年ぶりに400万台を割り込みました。理由は当然、新型コロナウィルス感染症の影響です。386万台のうち、普通乗用車が143万台、小型乗用車が106万台、そして軽四輪が136万台でした。2021年度は、自動車メーカー各社の決算を見ていると回復基調になっているのですが、2022年度は半導体不足に加えて、資材高騰や資材の納入遅れなどの影響で、国内販売は厳しさを増しそうです。
次に、乗用車保有台数の推移を見ますと、2020年度は6192万台で前年度より11万台増加しています。内訳としては、最も多いのが軽四輪で2274万台、次いで普通乗用車が1998万台、小型乗用車が1921万台となります。
これを、全世帯に占める乗用車保有率で見ますと、2020年度は77.9%。つまり、10軒のうち約8軒でクルマを持っているということになります。ただし、乗用車の複数所有率は34.5%です。さらに詳しいデータでは、東京23区での複数所有率はなんと3.6%と極めて少ないのに対して、地方圏の周辺部では45.8%と、ほぼ半数に及んでいることが分かります。
皆さんも日頃の肌感覚でお分かりのとおり、地方部ではクルマはまさに“日常の足”であり、運転免許を持っている家族それぞれが自分のクルマを持っていることも珍しくありません。
こうした人たちが、これから本格化するEVシフトに対して、どんな思いを持っているのかが、日本全体でのEVシフトに大きく関係してくることは間違いないでしょう。
そのほか、乗用車の保有世帯をライフステージで分類してみると、最も比率が高いのは子供がまだ小さい家庭です。これを「家族成長前期」と呼び、比率は87%。次いで「家族成長後期」、「家族成熟期」、「結晶期」、「高齢期」の順で比率が下がっていきます。
逆に「独身期」では43.3%に留まっていて、これはいわゆる若者のクルマ離れを象徴する数字かもしれません。ここから、結婚して子供ができる「家族形成期」では77.7%と比率が一気に上昇します。
では、本題である次世代自動車への意識ついては、どんなデータが出ていたのでしょうか?
概要としては、EVの購入意識層はアンケートの中で約3割に達しており、前回2019年調査に比べて増加していました。購入に対する懸念点については、まずは車両価格を気にして、さらに充電時間、航続距離、充電施設の場所や数、そしてバッテリーの耐用年数が主要項目として挙がってきました。
これはまさに、EVの技術的な特徴であり、自動車産業界全体でカイゼンに取り組んでいる領域です。
このほか、興味深いデータがいろいろありますので、それらは次回のコラムでご紹介します。
著者PROFILE●桃田健史
1962年8月、東京生まれ。日米を拠点に、世界自動車産業をメインに取材執筆活動を行う。インディカー、NASCARなどレーシングドライバーとしての経歴を活かし、レース番組の解説及び海外モーターショーなどのテレビ解説も務める。日本自動車ジャーナリスト協会会員。
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[スタイルワゴン・ドレスアップナビ編集部]