BMW、燃料電池の触媒の化学反応を効率化させる量子系シミュレーションならびにハイブリッド量子古典ワークフローを共同開発

モビリティと量子技術の世界的リーダーであるエアバス社、BMWグループ、Quantinuum社は3社共同で、白金ベースの酸化還元反応を正確にモデル化したことを発表した。燃料電池の触媒の化学反応に焦点を当て、効率的な反応プロセスの確立を目指している。

プラチナベースの酸化還元反応を正確にモデル化

新しい技術論文の中で、3社のパートナーは、白金ベースの触媒表面における酸素還元反応(ORR)を正確にモデル化したことを報告している。ORRは、燃料電池で水素と酸素を水と電気に変換するプロセスの化学反応であり、効率的なプロセスを制限している。比較的時間がかかり、大量の白金触媒を必要とするため、この課題解決に多くの企業が注力している。共同研究チームは重要な化学反応の理解を深めるために、QuantinuumのHシリーズ量子コンピュータを使用して、産業ワークフローにおける量子コンピューティングの適用可能性を実証した。そのために、量子コンピュータを使用して量子系をシミュレートする将来の研究を加速することを目的としたハイブリッド量子古典ワークフローを開発した。

研究チームは、ORR反応を理解することで、燃料電池の性能を向上させ、製造コストを削減する可能性のある代替材料を特定するのに役立つ洞察が得られることを見込んでいる。ORRのような化学反応を正確にモデル化することは、化学的メカニズムの量子的性質のため、従来の古典的なコンピューターでは困難な作業となるだろう。

各社の役割

BMWグループは、世界的な自動車市場のパイオニアとして、量子コンピューティングが持つ変革の可能性と、新素材の研究を重要視している。最も基本的な電気化学プロセスの1つに、初めて量子コンピューティングを用いてアプローチしてシミュレートすることは、持続可能なエネルギー転換に向けた実質的な一歩であり、金属・空気電池や、効率を高めたその他の製品への大きな効果が見込まれている。

エアバスは、再生可能エネルギーから生成される水素がCO₂を排出しないことから、低炭素航空機の動力源として有望な候補であると認識している。同社は以前、ZEROe実証機に水素を燃料とする燃料電池推進システムの搭載試験を数年以内に開始する計画を発表している。同社は、2035年までに水素を動力源とする世界初の民間航空機を開発し、市場に投入するという意向を示している。

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