JFEスチールは、CO2排出量削減や燃費向上を目的とした車体軽量化ニーズの高まりを踏まえ、1GPaを超える超高張力鋼板を顧客に提供してきた。一般的に鋼板のプレス成形時においては、スプリングバックとよばれる成形後に元の形に復元する現象への対処が必要になる。超高張力鋼板は車体軽量化に大きく貢献する素材であるものの、通常の鋼板に比べスプリングバックが大きくなるため、スプリングバック後に正しい部品形状となるよう金型形状をより精密に設計する必要があり、事前の金型製作には多大な時間やコストがかかっていた。
そのため、顧客においては超高張力鋼板であってもスプリングバックを抑制する成形工法に関する強いニーズがあり、それに応えるためJFEスチールは『ストレスリバース工法』を開発した。
一般的に、プレス成形時に材料に残る応力が小さいとスプリングバックは小さくなる。今回採用された『ストレスリバース工法』は、バウシンガー効果1)とよばれる変形の方向を逆にした直後の変形応力は小さくなるという鋼板特性を活かし、プレス成形時に材料に残る応力を低減させることを特徴とする技術である。『ストレスリバース工法』は、2021年度日本塑性加工学会論文賞を受賞しており、学術的にも高く評価されている。