~自動運航船の実現へ向けた取り組み~

川崎重工:AIを活用した機関プラント運転支援システムの共同開発を開始

川崎重工と川崎汽船は、将来の 自動運航船の実現に向けた要素技術となる AI(人工知能)を備えた機関プラント運転支援システムの開発について、共同開発契約を締結した。

 本システムは、AI を用いた機関プラント運転データ解析をベースに故障予知・診断、状態監視保全(Condition Based Maintenance:CBM)、最適運転支援などの機能を備える。

 近年、海上安全のさらなる向上、船上の労働環境改善、産業競争力の向上などの観点から、船舶の自動運航技術実用化に期待が高まっている。共同開発では、川崎汽船の有する K-IMS※1を用いて収集した豊富な船舶運航および機関プラントの運転データや経験に基づいた運用・整備ノウハウ、川崎重工の船舶建造および推進プラント製造に関する技術力、これらをAI に学習させ、本システムの完成を目指す。

 本システムは、特定の機器だけでなく、主機および発電機などの機関プラント全体を管理する。まず、ディーゼル推進プラントを搭載した船舶を対象として開発を進め、次に蒸気タービンや電気推進などの推進プラントを搭載したさまざまな船舶での運用を目指す。また、本システムは本船乗組員のみならず、陸上管理者に対しても故障予知・診断情報などの有用な情報を提供し、重大な機関トラブルを未然に防止する。さらに、効率的な整備計画のサポートや本船の機関状態から機関プラントの最適な運転調整を助言することで、燃料消費量の改善と温室効果ガスの削減に貢献する。

 なお、本システムのコアとなる故障予知や運転状態の診断を行う「舶用AI」は、深層学習・機械学習に関して最先端の技術を有するPreferred Networks※2 と共に開発を進める。

 舶用AI は、本船とクラウドの双方に搭載する。本船に搭載された舶用AI は、本船の運転データをリアルタイムに学習・診断する。クラウドに設備された舶用AI は、各船で蓄積された学習・診断データを定期的に取り込み、一元的に再学習することによりアップデートされ、あらゆる船舶の故障予知・診断や最適運転支援が可能となる。舶用AI の故障予知・診断に関するコア技術に関しては、既に概念実証(Proof of Concept)を完了しており、今後は K-IMSで収集されるさまざまな船舶からの豊富なデータに加え、現在検討中の多様な最新センシング技術から得られる今まで収集できていなかった新たなデータも活用することにより、あらゆる船舶に対応できる汎用性に優れた舶用AI の開発を進めていく予定である。

※1 K-IMS (Kawasaki – Integrated Maritime Solutions:統合船舶運航・性能管理システム)
船陸間通信システムを利用した、陸上から船舶の運航管理・機関プラントの状態監視・本船性能解析を行う機能を持つ船舶 ICT システム
※2 Preferred Networks
2014 年3 月の創業以来、機械学習・深層学習技術の産業応用を目的に、交通システム、製造業およびバイオヘルスケアを中核として多岐に亘る産業のリーディングカンパニーと協働して先進的な取組みを推進している。機械学習・深層学習技術の応用分野の一つとして、時系列データをもとにした異常検知による産業機器の故障予知や工場プラントの運転最適化に向けた開発を行っている。

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