STARPAS-DF42Nは、高飽和磁束密度*4材である DF42N(ニッケルを42%含有する同社製品)を厚み10μm~30μmに箔化した製品で、同社従来品の高透磁率*5材MEN®PC-2S対比2倍の飽和磁束密度(800A/m相当で1.4T)を有している。飽和しにくい材料を箔化することにより、交流における強磁界向けの磁気シールド材として提供することが可能になった。(図1、図2参照)
また、STARPASはフープ材でありシート形状のため様々な形に打ち抜き加工が可能。耐久性を兼ね備え、電磁波ノイズが発生するデバイスやノイズの影響を回避したい機器に容易に貼り付けることができる。さらに、高透磁率材であるSTARPAS-PC2Sなどを併用した積層シートとしても供給が可能。
製品名 | 材料の厚み(μm) | 100kHzの比透磁率 | 1MHzの比透磁率 |
---|---|---|---|
STARPAS-10DF42N | 10 | 1,400 | 1,300 |
STARPAS-20DF42N | 20 | 1,700 | 1,200 |
STARPAS-30DF42N | 30 | 1,500 | 800 |
製造可能寸法:板厚10μm、20μm、30μmの3種類、板幅100mm以下
なお、大同特殊鋼は2022年1月19日から21日にかけて東京ビッグサイトで開催されるネプコンジャパンに本製品を出展する。
これまで電力機器の分野で発展してきたパワーエレクトロニクスは、近年、車載や家電製品への適用が進んでいる。これらに使用される半導体はスイッチングの周波数が高くなっており、かつ、大電流を扱う傾向にある。また、制御用半導体*6においてもプロセスの微細化に伴い、トランジスタ数が増加することで電流が増える傾向にある。
このため、これらを使用した機器では、他の機器や自らの誤動作の原因となる高周波で大電流による電磁波ノイズが発生しやすいという課題があり、こうした環境でも機能するシールド材が求められている。
これに対して、従来品のSTARPAS-PC2Sを用いた高透磁率のシールド材は、約10A/m以下の小さい磁界では高いシールド効果を有するものの、それ以上の強磁界については材料が磁気飽和するためシールド材の体積を増やすことが必要だった。
一方、高い飽和磁束密度を有するSTARPAS-DF42Nは、50A/m程度の磁界で材料の比透磁率が最大となるため、100A/m程度までの磁界でそのシールド効果を期待できる(図3参照)。シミュレーションで比較した印加磁界による磁気シールド性では、STARPAS-DF42Nは強磁界においても性能を維持している。(図4参照)
また、従来品と同様に、厚みを 30μm 以下に箔化することで、交流で発生する渦電流*7を抑制し、高周波においても相対的に高い透磁率を維持することが可能。さらに、箔材にすることで磁気シールドの対象となる機器の軽量化にも貢献する。