いちばん下のピストンリングの重要な役割:オイルリングの機能と構造[内燃機関超基礎講座]

トップリング、セカンドリング、オイルリングががピストンに組みつけられた状態で、エキスパンダーリングとそれを挟み込むよう上下に薄いオイルリングが、ピストンの一番下側の溝に収められている。
自動車用エンジンのピストンリングは、上からトップリング、セカンドリング、そしてオイルリングの3本のリングがセットとなっている。それぞれに機能があるのだが、今回は3番目のオイルリングを中心に解説する。とくにエクスパンダーリングにも注目する。

【モーターファン・イラストレーテッド Vol.136より転載】

一般的なピストンリング一式(1気筒分)。上側の二本が圧縮を保持するトップリングとセカンドリング、下の波型リング(エキスパンダーリング)を含む3本はオイルリングセットで、3本一組となって初めてその機能を発揮する。

シリンダー壁に付着した余分なオイルを掻き落とすという役目を持つオイルリング。ピストンのピン上側面に刻まれた溝にはめ込まれる、上から三番目のリングだ。一番上のトップリングと、その下のセカンドリングが一本もののワンピース構造であるのに対し、オイルリングは3ピース構造とされるのが一般的。

写真中央に見える真鍮色の波型リングがエキスパンダーリング(写真は2セット)。

前述のオイルをかき落とす役目を担う本体ともいえるのは2本の薄いリングなのだが、薄手の鉄板から切り出したかのような頼りないもので、それらだけではピストンの溝の中で形状を維持することができない。エキスパンダーリングはそれらを正しい位置に保持しながらシリンダーに押しつけるという、リテーナーとスプリングとしての機能を併せ持つ、3ピース構造からなるオイルリングを構成する3ピース目の要素だ。ちなみに一般的なピストンリングの構成は右の写真の通りだが(特にガソリンエンジン用)、下に示すふたつの例のようなものも存在する。これらでは、オイルリングが自律的に形状を維持できる構造を持つため、エキスパンダーリングに求められる機能は、オイルリングを内側からシリンダー壁に向かって押しつけるスプリングとしての役目のみとなっている。なお、ピストンリングの組みつけは下側からが基本、最初に組みつけられるのがエキスパンダーリングだ。

これらのピストンリングセットは、薄手のオイルリングをひとつにまとめたかたちとなる厚手のオイルリングを持つタイプ二態。それぞれ形はまったく異なるものの、オイルリングの内側にあるのはどちらもエキスパンダーリングだ。

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