パナソニック:低抵抗と高い透過性を兼ね備えた「透明導電フィルム」を商品化

パナソニックは、業界初のロール to ロール独自工法を用い、低抵抗と高い透過率の特長を併せ持つ、一括両面配線透明導電フィルムを業界で初めて※1商品化した。

目次

効果

昨今のタッチディスプレイの高画質化・大型化に対する透明導電フィルムのニーズを受け、メタルメッシュ[1]の開発が進められている。メタルメッシュの一般的なエッチング工法では、低抵抗による大型化は実現出来るもののメタルメッシュの配線見えなどが課題となっている。パナソニックは「ロール to ロール独自工法」により従来のエッチング工法では困難だった配線幅2 μmを実現しつつ高いアスペクト比[2]を達成し、低抵抗かつ高い透過率を併せ持つ透明導電フィルムを実現した。更に、フィルム両面への一括配線により高い座標精度と使用材料の削減を実現し、顧客の高画質化・大型化・環境負荷低減のニーズに応える。

特長

1.高いアスペクト比の実現によるディスプレイ高画質化・大型化への貢献
タッチディスプレイの高画質化・大型化のニーズが高まる中、ディスプレイ上に配置されるタッチセンサにはタッチ機能を維持しながらも画質を阻害しないことが求められる。
このような背景からタッチセンサの構成部材である透明導電フィルムは低抵抗と高い透過率の両立が求められている。しかし、メタルメッシュの一般的なエッチング工法では低抵抗と配線の細線化がトレードオフの関係にあり、低抵抗は実現できるものの配線幅が大きくなることで透過率が不十分だった。一方、パナソニックはロール to ロール独自工法の採用により従来工法では困難だった配線幅2 μmの高いアスペクト比の配線を形成し、低抵抗と高い透過率を両立した透明導電フィルムを実現した。
この技術により、ディスプレイの高画質化・大型化と共に、透明性を活かしたデザインフリーな透明アンテナの実現に貢献する。

図1.ロール to ロール独自工法
図2.独自工法で作成した配線の表面・断面電子顕微鏡写真

2.一括両面配線形成による高い座標制度の実現とフレキシブル化対応
従来の静電容量方式のタッチセンサは、送信電極と受信電極2枚のフィルムを貼り合わせ作製していたが、両電極の位置精度は貼付装置の機械精度や接着剤の粘性に依存する課題が存在した。パナソニックはロール to ロール独自工法を用いた一括両面配線により、1枚のフィルムの表裏に送信電極と受信電極を形成することで相対位置精度を大きく向上させることに成功した。また、デバイスの薄膜化により耐屈曲性が向上し、フレキシブル化にも対応する。

3.ディスプレイ消費電力および使用材料の削減による環境負荷低減への貢献

パナソニック製の透明導電フィルムは細線化が可能なことから高い開口率[3]を実現できる。それにより、ディスプレイから出射された光の透過率が高まり、一般的なエッチング工法で作製した従来の透明導電フィルムと比較して、同面積・同解像度のディスプレイにおいて約4%の消費電力を削減することが可能になる。更に、送信電極と受信電極を1枚のフィルムに一括両面配線形成することにより、従来は2枚使用していたフィルムを1枚に削減することで環境負荷低減に貢献する。

■用途
車載、民生用途のタッチセンサ、透明アンテナ、透明ディスプレイ用基板、透明ヒーターなど

■仕様
線幅:2.0μm
厚さ:1.5μm
透過率:94%
シート抵抗:2Ω/sq.
額縁配線L/S[4]:8/8μm
基材:PET・PC・COP
屈曲性:≧R2mm

[1]:メタルメッシュ:金属配線を格子状に形成した電極。
[2]:アスペクト比:配線 厚さ/幅の比。
[3]:開口率:面積当たりの開口部の割合。
[4]:L/S:配線の幅(Line)と隣り合う配線同士の間隔(Space)。

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