目次
1.背景
フェライト磁石モーターは、レアアースであるネオジムのほか、特に資源量が限られるジスプロシウムやテルビウムを使用しないため、拡大する xEV 需要に対し、資源リスクの軽減とコストの抑制が期待されている。そこで日立金属では、xEV 駆動用モーター用磁石として、ネオジム磁石に加えて高性能フェライト磁石の提案も開始された。
カーボンニュートラル、脱炭素社会実現のため、自動車生産台数に占める xEV の比率は今後ますます高まることが見込まれている。これに伴い xEV 用駆動モーターや発電機に使用されるネオジム磁石の生産量拡大が見込まれる。一方で、ネオジム磁石はレアアースのうち軽希土類に分類されるネオジムのほか、特に資源量が限られる重希土類のジスプロシウムやテルビウムなどが使用されることから、需要の拡大にともない資源リスクが高まることが懸念されている。
日立金属では、これまで xEV 用モーターの小型化、軽量化につながるネオジム磁石の特性向上に注力するとともに、省重希土類化やリサイクル技術の向上などでマテリアルフローの強化(レアアースの購入量、使用量の低減)が進められていた。こうした中、日立金属 グローバル技術革新センター(GRIT)では、資源リスク軽減に向けた新たなアプローチとして、xEV 用駆動モーターへのフェライト磁石適用が検討されていた。
2.概要
今回、日立金属はフェライト磁石としては世界最高レベルの磁気特性を持つ当社高性能フェライト磁石 NMF 15 材を、xEV 駆動モーターに適用することを想定して、シミュレーションにてモーターの最適化設計を実施した。その結果、磁石の搭載位置やサイズの最適化を図ることで、以下の設計例のとおり、一定の条件下ではネオジム磁石を使用したモーターと同等レベルの出力がフェライト磁石モーターでも得られることが確認された。
高性能フェライト磁石使用①:モーター重量は 30%増大するが、同等の出力レベル
高性能フェライト磁石使用②:回転数を 50%上げることで、重量、出力レベルが同等レベル
今回のシミュレーション結果により、xEV 駆動用のような大出力のモーターにおいてもフェライト磁石が
適用できる可能性が示された。そこで日立金属では、資源リスクの軽減やコストの抑制といった顧客の課題を解決するため、従来ネオジム磁石が採用されていた各種用途における選択肢の一つとして、高性能フェライト磁石の提案を開始した。
日立金属は、ネオジム磁石、フェライト磁石だけではなく、モーターの高性能、高効率化につながる材料
として、コア(鉄心)用アモルファス金属、エナメル線、磁性 楔(くさび)などを取りそろえるモーター材料の総合メーカーである。モーターに関する顧客の課題解決のため、ソリューションの提供を図りながらさまざまなモーター材料を供給することで、カーボンニュートラル、脱炭素社会実現に貢献を続けていく。