プリウスのフルモデルチェンジが話題を集めている。なんといっても目を引くのは、インパクトあふれるそのスタイリングだが、驚くべきはPHEVではない通常のHEV仕様のシステムで、おそらく先に登場しているモデル(ノア/ヴォクシー、カローラ)にすでに搭載されているものと基本的に同じシステムだという点。これまで常に燃費性能を進化させる象徴的な存在であったプリウスには、モデルチェンジのたびに新たな変更が盛り込まれたシステムが搭載されてきたわけだが、その流れが大きく変わったということは、プリウスというモデルの持つ役割が変化したことを意味する。
このことについては、2022年11月16日に行なわれた同車のワールドプレミアに登壇したサイモン・ハンフリーズ氏(デザイン領域・統括部長)も言及していたことではあるが、各部を構成する要素を見ていくと、さらに明確なかたちで浮かび上がってくる。もっともわかりやすいのが、リチウムイオンセルによって構成されるというバッテリーパックである。トヨタに留まらず、パワー密度が求められるハイブリッドシステムにおいて、おそらく現在最適と思われるバイポーラ型ニッケル水素セル(2021年のアクアに搭載)の採用が見送られている模様だ。
エネルギー効率を最優先とするのであれば当然と思われる選択を採らなかったのは、理由があってのこと。ひとつの要素として考えられるのは、バイポーラ型ニッケル水素セルが現状においてリチウムイオンセルよりも高コストである点。5代目となる新型プリウスはこれまでのような効率や燃費で“一番”を取りにいくクルマではなく、「みんなの手が届くエコカー」(ハンフリーズ氏)を目指すのだという。ハイブリッドが当たり前のように搭載されるようになったいま、幅広い人々の手に渡りCO2削減効果の裾野を広げていくという戦略である。
この点については、従来からのプリウスと同様ではあるが、これまでよりも重点を置くかたちになるということ。そしてプリウス史上初となる2種類の排気量がラインアップが用意されたのはこのためだ。ちなみに2.0LにはM20A-FXS型、1.8Lに2ZR-FXE型エンジンを採用。組み合わされる第五世代のハイブリッドトランスアクスルは、すでにノア/ヴォクシー、そしてマイナーチェンジ後のカローラに採用されている。M20A-FXS型を用いる第五世代ハイブリッドトランスアクスルの組み合わせは国内初出だが、後者の1.8L版については、少なくともパワートレーンのハードウェア的にはカローラに搭載されていたものがほぼそのままとなるようだ。
2.0L版はHEVに加えて大容量のリチウムイオンバッテリーを搭載したPHEVを用意。こちらは164kWものシステム最高出力を発揮するということで、これまでのプリウスになかったパフォーマンスを強調している。どちらかというと1.8LのHEV版(こちらは103kW)がこれまでの流れを汲んだものになるはずで、燃費で一番を狙わないといっても、プリウスだけにそれなりの燃費性能をみせてくれると思って良さそうだ。第二世代に進化したTNGAと相まってどんな走りを見せるのか、とても楽しみである。