ダイハツからの革新的提案、直列2気筒直噴ターボエンジン[内燃機関超基礎講座]

第41回東京モーターショーにダイハツが出展したコンセプトエンジン二種のうちの1機は、直列2気筒というフォーマットだった。大注目のエンジンだったが、その後の報せは聞こえてこない。
TEXT:世良耕太(SERA Kota)

 ダイハツは軽自動車用パワートレーンのロードマップについて、「コンベンショナルな技術を進化させCO2削減を極め、燃料電池でCO2排出ゼロを実現していく」と宣言。貴金属フリー液体燃料(ハイドラジン・ハイドレート)を使った燃料電池をロードマップの第3ステージに位置づけていた。

 第2ステージに位置づけていたのが、この「2気筒+直噴+ターボ+超大量EGR」エンジン。大きな質量のクルマを動かすのが目的ではなく、あくまでも軽自動車用。モーターとの組み合わせは現時点では考えていない。あくまでも、660ccという排気量中で究極を目指すとどうなるかを考えた末に導き出したのが、「2気筒〜」である。KF型エンジン比で30%の燃費向上を実現するのが具体的目標だった。

 単気筒あたりの容積が持つポテンシャルと冷却損失、機械損失を検討した結果、660ccの排気量でKF型比30%の燃費向上を達成するには2気筒が最適と判断。ボア×ストローク値は未公表だが、KF型(63.0×70.4mm、SB比1.1)と同等のロングストロークで開発していた。圧縮比はNA(10.8)相当以上を狙っている(従来ターボは9.0)。これを実現するため、EGR率は通常NAエンジン比で1.5〜2倍を目指している。

【畑村耕一博士のインプレッション】
モーターショーの会場に並べて置かれていた2つの新エンジン。筆者は、ターボ過給のこの二気筒エンジンの方にくぎ付けになった。この二気筒エンジンは、直噴ターボのダウンサイジングエンジンで、やっと燃費のためのターボ過給エンジンを日本メーカーが出してきた。吸気マニフォールドも短く設定され、さらに冷却EGRも設けて全域ストイキ運転を狙ったものだ。過給エンジンの本質がわかってきたと見える。公開はしていないがこれでボア×ストローク比を1.3程度のロングに設定していれば本物だ。660ccのこのエンジンを低回転で使えば、1000ccクラスの走りと従来エンジン比10%以上の燃費向上が期待できる。

 排気マニフォールドとタービンハウジングを一体化したターボユニットを装着。ターボは、「EGRを強引に入れてやる」(開発担当者)ためのデバイスでもある。その下にタービン直下型触媒。最新ガソリンターボエンジンのトレンドを網羅していた。

 2気筒なので、エンジンの全長方向は3気筒より短くなる。全高と吸排気方向のサイズは現行KF型と同等。使う材料やデバイスの関係で流動的だが、質量は現行以下が目標とされた。バルブは直打式だが、ローラーロッカーアーム式も検討していた。

 吸気側を見る。外部EGRを通す黒いパイプと水冷式EGRクーラーを抱く。EGRは、ポンプ損失の低減と排気ガス温度を低下して燃料のリッチ化をさけるために採用。「はっきり申し上げて、開発段階のすごく初期の方」とは当時の開発担当者の弁。

Specifications
型式:未発表
気筒数:2
気筒配列:直列
気筒当たりバルブ数:未発表
バルブ駆動:未発表
ボア×ストローク:未発表
排気量:660cc
圧縮比:未発表
燃料供給:シリンダー内直噴
最高出力:47kW/4500rpm
最大トルク:100Nm/1500-4000rpm

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著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…